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4-7

宿場町に到着してからも商人さんはしつこかった。


どの宿に泊まるのか、食事はどうするのかなどは軽いもの。


幾らなら教えてくれるのか、幾らなら譲ってくれるのか、専属契約を交わそうじゃないか、と商売気を隠そうともしなくなりました。


流石にここまでくるとジュリアナさんも黙ってられない、といいますか切れてしまったのです。


「いい加減しつこいんだよ! もう私たちに話し掛けるな! 次話しかけて来たら敵意ありと見なして剣を抜くぞ?」


いや、武器を抜いて襲ったら犯罪者じゃないのかな、ジュリアナさん。


一応商人さんは話しを、商談をしているだけですから捕まると思います。


ジュリアナさんもその辺りはちゃんと解っているのか脅しているだけだと思います、たぶん。


「おや、それは怖い。死にたくないですからね、ここまでにしておきましょう」


ニヤ、という擬音が付きそうな厭らしい笑みを浮かべて商人さんは去っていきました。


「あ、一応言っておきますが、本当に武器を抜かないでくださいよ。犯罪者になりそうですし」


「解ってるよ、それぐらい!」


「でも、今の発言は周りの人も聞いてますから何かあったらジュリアナさんの所為にされますからね、気を付けてください」


「え?」


「だって私には動機があります、と宣言したようなものじゃないですか。何かあった場合に犯人が目撃されたり捕まってなければ真っ先に疑われますよ」


「そ、そんなぁ」


さて、ジュリアナさん弄りもこれぐらいにして、宿を探さないとですね。


「さておきまして。ここにもギルドの窓口はありますか?」


「さておくなよ。ああ、一応小さいけどあるな。薬草でも売るのか?」


そう言う事です。


ちゃんと路銀を稼がないと私の所持金では心もとないですし、ジュリアナさんもお金を稼ぎませんとね。




私たちはギルド、といっても受付が1つしか無いような小さな建屋、あの城塞都市のギルドのように酒場などがないただの役所へと向かい、薬草を卸しました。


私の分はそれなりになったのですが、ジュリアナさんのは品質低下がみられたので据え置き価格。


ただしジュリアナさんが一緒に納品してますから分け前は半分にしておきました。


私は冒険者じゃないですからそれぐらいの融通は利きますよ、ちゃんと。


臨時収入が入ったジュリアナさんは早速酒場へ繰り出そうしてましたが引き留めて宿屋を探してチェックインしました。


本当にこの人はダメ人間臭が半端ないですね。


孤児院出身ならばもう少しそういう所、お金に関するものがシビアになりそうですが、彼女は享楽的といいますか、考えなしの行動が目に余ります。


だからこそ姉御肌なのでしょうが、これは今回の事がなくともいずれ借金奴隷になっていたでしょうね。


金遣いの粗さと騙されるという両方で。


今まで何とかなってきたのは奇跡だったと思います。


「サクラは人里に出たのが初めてって割にしっかりしてるよな。しっかりを超えて固いっていうか、融通が利かないというか」


「ジュリアナさんが考えなし過ぎるからそう感じるだけでは?」


「ひ、ひでぇ。あ、この煮込み結構美味いな」


ほら、こんな感じですぐに別の事に気が取られるあたりが考えなしだというのです。


目の前の煮込み料理は宿屋が経営する食堂で出された料理なのですが、他に固いパン、所謂黒パンが2つとザワークラフトぽい野菜の付け合わせで銅貨1枚でした。


煮込み料理はミネストローネぽいもので、味は濃い目ですがしっかりとトマトっぽい味が染みてますから美味しかったです。


城塞都市では肉類を食べませんでしたが、今日初めて口に入れてみました、ベーコンですが。


妖精だけに口に合わないかと思ってましたがそんな事はなく、ちゃんと美味しく感じたのは朗報です。


イメージ優先で食べてこなかった事がちょっと悔やまれますね。


でもエフェメラルさんも食べてませんでしたから、私だけが特別な感覚なのかもしれませんね。


前世人間ですし、ユニークですし。


「よし、久しぶりに飲むか。おーい、ミードを1つ頼む」


「大丈夫なんですか?」


「ん? 割と飲める方だぞ、私は」


などと食事で盛り上がっていたのですが、私のあの時の話がフラグだったのか、事件が向こうからやってきました。


食堂に兵士と思われる人たちが入ってくるという。




「ふむ、特徴が一致するな。おい、お前たちちょっと来い」


兵士と思われる恰好の二人の男性が私たちの席まで近寄って来たかと思うと、そんな事を言い出しました。


いきなり呼び出しとかどう言う事でしょうね?


「何で行かないといけないんだ? そもそもあんたらは?」


そう思ったのはジュリアナさんも同じで、ちょっと噛付き気味で聞き返してました。


ちなみに食堂内は騒然としておりまして、宿屋の従業員は私たちに批難の視線を向けてます


気持ちは解りますが、とばっちりというものです。


あ、私も呼ばれてるみたいだからとばっちりではないですね。


「我々はこの町に駐屯している兵士で治安維持を担っている。君たちに聞きたい事があるから詰所まで来てもらいたいのだ」


最初に話し掛けてきた人は乱暴で横柄な若者でしたが、もう一人は中々に紳士な中年男性でした。


やっぱり男性はこういう方じゃないとね。


しかしジュリアナさんはどっちにしても気に入らないようですね。


「そんなの此処で聞けばいいじゃないか。私たちは食事中だし、協力するにしても後にしてくれ」


その意見はごもっともで、私ももうちょっとこの久しぶりの人間らしい料理を味わいたいです。


これ香草を入れて味を調えたらもうちょっと美味しくなりますね、あとベーコンをちょっと洗うとか。


「いいからこい!」


「まあ、待て。そうだな現在は協力者だな、確かに。ではこの場で聞くが、今日の夕方に到着した馬車に乗っていたのは間違いないか?」


「ああ。で、それが?」


「その馬車に同乗していた商人が君たちに暴力を振るわれたと訴えてきてな。一応調べたが君たちは口論になっていたそうじゃないか」


ほら、やっぱり仕掛けてきましたよ。


まあ、これ以上ジュリアナさんに話をさせたら墓穴を掘りそうですからバトンタッチですね、ごちそうさまでした。


「私らはやって」


「ええ、確かに口論にはなりましたね」


「おい、サクラ!」


「口論になったのはあの商人さんが断ってもしつこかったからで、私たちに非はありませんよ。それも調べがついているのでは?」


「まあ、一応な。だが事情がそうでも暴力を振るっては」


「私たちがやったという証拠は? 目撃者は? あと私たちの足取りは確認したのですか?」


「そこまではまだ調べていないが」


まあ、馬車を降りてからまだ2時間程度しか経ってませんし、調べられませんよね。


「犯罪の疑いがある時点でまず拘留するのが普通だ! いいから大人しくついてこい!」


「遠慮させていただきます。そのような法が存在しているのなら別ですが、そうでないなら任意同行でしょう? でしたら私たちは行きませんよ」


「こ、この!」


「ふむ。確かにそのような法はない。あくまで我々へ協力してもらうだけだな。しかし疑いがある以上自由にはさせれないのだが」


「では商人さんをここに連れて来てください。ここで白黒付けましょう」


まさか異世界に来てまで裁判ごっこといいますか、二時間ドラマみたいな事をするとは思ってもみませんでした。


さあ、見せてあげましょう、私の華麗なる弁護術と探偵力を!


もちろんマンガやアニメを見ただけの知識ですけどね。




さて、突然食堂が裁判所へと変貌を遂げた訳ですが、ここで一応宿屋の従業員にお話しをしておきました。


不可抗力とはいえ騒ぎをおこしますからね、私たち。


なので謝罪をして、お金儲けの種を提供しておきました。


あくまでも任意で善意の場所提供なのですから見物人を追い出す必要はないのがこの裁判の特徴です。


この事は治安維持の兵士の方にも確認して了承してもらいました。


若い方がうるさかったですが、そこは法があるので私たちは動く必要がないので黙らせました、ナイスミドルさんが。


そしてこの状況。


リアルタイムでまず見ることのできない裁判風景を、お酒を飲みながらアリーナで。


そんな美味しい状況を捨て置くのは勿体ない、さあ、どんどんお客さんを呼び込んじゃえ、と従業員、といいますか宿屋の主人に話し、了承してもらいました。


そりゃあ、すごい儲けになりますからね、喜んでOKをくれましたよ。


実際に私とジュリアナさん対商人さん、そして裁判官役に兵士さんたちという構図を囲うようにお客さんたちが座ってお酒を飲んでますからね、沢山。


テレビやゲームがないようなハイファンタジーだと、こういうのは劇とかと同じような娯楽として受けると思ったのですよ。


この状況に若い兵士は怒りで顔を真っ赤にしてますし、商人さんもちょっと引き気味ですが、そんなのは知った事じゃありません。


ジュリアナさんも目立っているので興奮してますが、あなたは落ち着きましょう。


といいますか、黙っていましょうね、役に立たないでしょうし、逆に足を引っ張りますから。


「ふぅ。まさか暴力を振るっておいてこのような目に遭わされるとは」


「何を!」


「あ、ジュリアナさんは私の後ろでどーんと控えておいてください。そう、そう、そんな感じで、私を見守るように」


「お、おう。そうだな、私がサクラを守る」


ちょ、ちょろい人だなぁ、ジュリアナさん。


「一応お互いの言い分が正しいのか判断するための場だ。聴衆者は口を挟まないように」


ナイスミドルさんが酒場全体に通る中々渋い声で言い渡しまして、勝負開始となりました、カーン!


「さて、私たちが暴力を振るったというお話ですが、証拠はあるのですか?」


「逆にお聞きしますが振るっていないという証拠はおありですか?」


「逆説問答は墓穴の元ですから、次回からしない方がいいですよ。自身で私は二流です、と言っているようなものですから」


「くっ、まあいいでしょう。証拠なぞ必要ありません。このように傷痕と被害者の証言がありますから事実ですよ」


確かに手に包帯を巻いてますね。


この世界にも包帯があったのかー、と割とどうでもよい事を考えちゃいました、反省です。


「それだけでは立証出来ませんよ。私から言わせれば、包帯を巻いてただ訴えただけの嘘吐き、にしか見えませんし。さあ、そこからどうやって私たちがやったと証明するのです?」


「ふふ、そのように煙に巻こうとしても無駄ですよ。ちゃんと私が襲われたところを見た人がいますので。では証言してください」


うん、先ほどから私たちを厭らしい眼で見てくる男性が居ましたので何かあるかと思っていたら、そう言う事ですか。


「ああ、俺が証言するぜ。この商人が剣で斬られるところをな。そしてその場から逃げるあんたら二人をな」


「さて、これで実証されましたね。もう茶番は終わりにしませんか? そして大人しく捕まりなさい」


いや、そんなこと言っても商人さん、どっこも怪我してないでしょ。


鑑定で見ても状態は異常なしですし。


「そうですか。じゃあ、その包帯を取ってください」


「ああ、傷痕がないか見たいのですね。でも残念ですね、ポーションで傷は塞ぎましたから痕なんて残ってませんよ。ポーション代も請求させてもらいますからね」


「いえいえ、そんなはずないでしょう。どれだけ高級なポーションだったのですか、痕まで消すって。普通はうっすらとでも残るはずですが」


ええ、私が作るポーションでも薄いやつは痕がのこりますよ、レアものですら、ね。


「あと、傷痕がないならそんな包帯いらないじゃないですか。その辺りはどう説明するので?」


うん、そこまで考えてなかったのか、汗をかくほど焦りだしましたね。


「こ、これは私がその時転倒して手を捻ったからで」


「それだったらポーションで一緒に治りますよ」


「それほど高いポーションではなかったから」


「だったら傷痕が残りますよ?」


もうこの時点で決まったような気がするのですが、なんだか周りの人たちが興奮してて終わりそうにないですね。


ジュリアナさんも後ろで鼻息が荒いし、若い兵士さんもなぜか興奮して私をキラキラした目で見てるし。


唯一普通なのはナイスミドルさんだけという状況だと、止めを刺す必要がありそうですね。


「あ、そこの目撃者さん」


「な、なんだ?」


「剣で斬ったとおっしゃいましたが、どんな剣でした?」


「そ、そりゃ、あれだ。そっちの女の持ってるような剣だ」


いやぁ、今ジュリアナさんは寛ぎモードですから剣や鎧は身に着けてないのですが。


そんな気持ちを込めた視線がジュリアナさんに集まり、彼女は注目されてうれしいのか鼻高々です。


「ふ、普通の剣だ。よくあるロングソードだよ、普通の」


「なるほど、1m以上の刀身の剣だったと。ジュリアナさん、あなたの剣の長さは?」


「私のは50cmくらいだぜ。ショートソードって呼ばれるものだな。間違う訳がないよな、どんな目してるんだ、あんた?」


このジュリアナさんの発言で、商人たちの嘘、偽証や詐欺が判明し、二人は兵士に捕まり連れていかれましたとさ。


一応確認したのですが、このような場合に私たちは特にお金をもらえたりする事はなく、無実の証明というだけに止まります。


兵士さんからは謝罪はちゃんとされましたけどね、両方から。


そして捕まった商人さんたちがどうなるか、ですが。


今回は私たちが捕まっていない、未遂の状態なので罰金だけで済むそうです。


一度でも私たちが拘束されていれば罰金だけではなく犯罪者として奴隷落ち、1週間だけの期間奴隷になっていたらしいですが。


まあ、なので明日も商人さんと顔を合わせる事になるんですよね。


結果としては明朝顔を合わせませんでしたが。





「あれ? あのむかつく商人がいないな。せめて文句言おうと思ってたんだが」


「私たちと顔を合わせ辛くて逃げたか馬車を違うのにしたのでは?」


「まあ、普通の神経じゃあそうするよな。ま、これで王都までは気分良くいけるから問題ないな」


「ええ、そうですね。あ、ちょっと私は眠りますね、寝不足なものですから」


「おう、良く寝て育てよ」


「わ、私は小さくなきゅぃー!」





なぜ私が寝不足なのかといいますと、それは昨夜の事。


私たちの宿に襲撃を掛けようとした馬鹿な人たちがいたのです。


その馬鹿の中に商人さんぽい人とか証言者としてあの場にいた男性ぽい人が混じってましてね、取りあえず成敗しておきました。


偶々寝ずにリモートセンスを使って宿の周囲を警戒していたら、襲撃しにやって来たものですから逆に襲撃してあげました。


夜間に使うシャドウハイド込みの隠密の素晴らしい事といったら一言では語れないものでしたよ。


音もなく背後から近寄ってショックで気絶させては隠密になってショック、を繰り返して全滅させ、武装解除して蔦を作って縛り上げて路上に放置。


巡回中の兵士さんに発見されたのを確認してから眠ったのでその後どうなったかまでは解りません。


まあ、そんな物騒な事件が起きる宿場町ですからぶるぶる震えて外に出ないんじゃないですかねぇ、商人さんも。


出たくても出れない、の間違いかもしれませんが。


あ、あくまでもぽい人ですからね。


商人さんではなかった、のですよ。


そういう事にしてきましょう。


世の中知らない方が良い事だってあるんですきゅぃー。

お読みくださってありがとうございました。

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