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本日の投稿です。

初遭遇人間第1号であるジュリアナさんを別荘に招待した妖精少女サクラです、こんばんは。


うっかり気質な困った姉御であるところの彼女を助けた事が後悔の真っ最中だったりしております。


かといって、前世人間である私には敵意もない相手を不利益になりそうだからと亡き者にする勇気もないでのす。


そう言う事でして大変困った状況に陥っているのですが、当の本人はそんな事を思われていると微塵も感じている様子もなく、妖精さんのツリーハウスを興味津々で物色しておりました。


「うわぁ、何このランプ! ランプ? あれ、火種がない? まさか、魔法道具!? うわぁ、それにこの椅子やテーブルなんかも全部一体型の木で出来てるし、すごっ!」


まあ、そうでしょうね、普通に考えたらありえないでしょう、人が全くいないはずの森の奥でこんな家とか。


何せオール家電ならぬオール魔力な水場に照明、冷蔵庫と火を使うもの以外は全て魔法道具で出来ていたりします。


ですからすごく快適だったりするのですが火を使いたいとか言われても、火は森の天敵ですから使わせませんよ、もちろん。


勝手に火打石ぽいものを取り出して台所を使おうとしたジュリアナさんを慌てて止めたりもしました。


他人の家で何をしだすんだ、この人。


うん、うっかりさんとかのレベルではなく問題ありありでしょう、もう。


「えっと、取りあえず果実や木の実でしたら備蓄は豊富ですからそちらをどうぞ」


「いやぁ、命だけじゃなく食事までは悪いよ。何なら狩りでもしてくるが? これでも小動物を狩るのは得意なんだ」


「この辺りは魔獣だけしかいませんよ。狩る側じゃなく狩られる側になるのでは?」


「え? これだけの森なのにウサギすらいないのか?」


「魔獣がひしめく場所で動物が生きていられませんよ。なので食料をお持ちでなければ果実で我慢してください」


「あ、そうさせてもらいます」


などというやり取りもしまして、夕食も終わり、寛いでいる時でした。


突然の来訪者がこの仮家の別荘に現れたのです。


「やっほー、サクラちゃん。今日は一緒に寝よーねー。って、あら、珍しい。人間がいるわ」


「いらっしゃいエフェメラルさん。こちら森で行き倒れていたジュリアナさんです」


「行き倒れはないんじゃないか? ちょっと待って。今、エフェメラルとか言わなかったか?」


「ええ、そうですが」


「ま、まさか、あの薔薇姫かっ!?」


「ええ、その通りです。やっぱりエフェメラルさんは有名なのですね」


「この森を出た事がないのに不思議よね、何故かしら?」


「幻惑の森で出遭ってはいけない存在、そのうちの1体。鮮血の茨を操る、無常なる妖精、薔薇姫! ひぃ!?」


「「あ」」


どういう意味で有名なのですかね、エフェメラルさんは。


白目向いて気絶しちゃいましたよ。





「なるほど、そっかー。メイヴ様もローズさんもプリムさんも自然に帰ったんだね」


気絶してしまったジュリアナさんをベッドに寝かせ、何故ここに連れてきたのかと妖精女王たちがどうなったかを伝えました。


口調こそはいつもの軽い感じですが、表情は暗く、涙を流すエフェメラルさん。


やっぱり嘗ての旧友、しかも名付け親の死は辛くて悲しかったようです。


ローズやプラムという名前の方はフェアリープリンセスの羽妖精で、エフェメラルさんの憧れの存在だったらしいです。


女騎士という雰囲気がぴったりだったローズさんの所作を真似し、天真爛漫を絵に描いたようなプラムさんの性格がとても大好きで友達だった、と私に教えてくれました。


その話を聞いて私も悲しく、共感ではなく、同じように赤眼様も悲しむのかな、と思うと胸が痛んだのです。


「ふぅ、ごめんねサクラちゃん」


「いえ。この話は赤眼様にも」


「教えてあげないとね。運んでもらってもよいかな?」


私は彼女の依頼を断るはずもなく、いわゆるお姫様だっこの状態で飛び立ちました。


夜の帳が下りた森の中は真っ暗闇ですが私には光魔法で暗視モドキが可能。


高速飛行でも安全に移動できますから1時間ほどで主様の根元、赤眼様の寝床へとやってきたのです。


「どうかしたのか、二人とも。今日は中層部で過ごすのではなかったのか?」


「・・・赤眼くん。あ、サクラちゃんありがとうね」


「いえ。赤眼様、こんばんは」


「うむ、本当にどうしたのだ?」


「それがその、外の人間が迷い込んで来ていてサクラちゃんが保護したんだけど」


「その辺りの采配は別にサクラに任せるが」


「それでね、赤眼くん」


「エフェメラルさん。私からお話しします」


「・・・そう。お願いね」


「ふむ、では聞こうか」


「はい、実は」


私はジュリアナさんが行き倒れてになっている情報を得た経緯から全て赤眼様に報告しました。


出来るだけ私の感情が漏れないよう、淡々とただ淡々と報告しました。


私の話を聞く赤眼様は暗い森の中、その表情が見えない。


いつもなら光魔法で明るくするか、暗視状態にして顔を合わせるのですが、今回だけは赤眼様の顔を見るのが辛くて出来ませんでした。


だから私は淡々とあった事、聞いた事をそのまま聞いていただいたのです。


「と、いう状況です」


「そうか」


聞き終えた赤眼様は短く頷き、ただ佇むのみ。


報告する私の隣で泣くエフェメラルさんの声だけが響きます。


しばらくその状況が続いたのですが、気が付くと私の頬に赤眼様の大きな手が添えられていました。


「サクラ。お前が何故泣くのだ?」


私は感情を出さずに押し殺していたはずが、いつの間にか涙を流していました。


「私は後悔しています」


「何をだ? いや、何にだ?」


「あの人間を助けた事です。そして赤眼様やエフェメラルさんに妖精女王たちの事を聞かせてしまった事にです」


「サクラよ、我は感謝しているぞ」


「でも」


「我は、そしてエフェメラルも女王たちの最後が知れてうれしく思っておる。ずっとどうなったか気になっておったからな。だから感謝こそすれ、サクラが気に病む事はない」


「そうよ、サクラちゃん! ありがとう、ありがとうね」


「お前は優しい娘だ、サクラ。お前はお前の好きなように考え、動き、生きて良いのだ。それが羽妖精の本分というものだ」


優しいのは赤眼様やエフェメラルさんの方だと思います。


私が後悔の念で辛そうにしてるからって慰めてくれてるんだもの。


その大きな手で、その温かい抱擁で私を包んでくれてるのは、二人なんだよ。


――――――お父さん、私ね、こっちでも優しくしてもらえてるよ


届くはずはないと思いつつもアース世界のお父さんへ今の気持ちを届けるのでした。


私が感じているこのぬくもりがお父さんへ届きますように、と願いを込めて。


ただ届いてほしくないのは、興奮した所為で棘が突き刺さるこの痛さなんだけど、そこは省いてくれますよね、神様。




さて、しばらくシリアスな雰囲気を醸し出したほのぼのお花畑である妖精の花園ですが、私が痛みに耐えれなくなってきゅぃーと叫んだ辺りで何時もの調子に戻りました。


私もね、この雰囲気をブレイクしたくないから頑張ったんですよ?


でも流石にHPが半分以下になるまで血が流れちゃったらもう続けられないです。


何とかエフェメラルさんを振り払い、自分にヒーリングをかけて回復しました。


そこからは保護者を交えての相談会です。


まあ、ジュリアナさんをどうするか、って事なんですけどね。


「ごめんねー、サクラちゃん」


「いえ、割と何時もの事ですから」


ええ、本当に何時もの事です。


そのうち私に苦痛耐性とか痛みに強くなるスキルが生えてくるんじゃないかと思うくらい。


「ふむ、まあ、エフェメラルのそれは性だ。どうしようもあるまい。それよりもその人間のメスをどうするかだが」


「性ですか。まあ、問題ありますが、ありませんとしておきます。一応彼女には果実は与えない方向で話は進めてますが」


「でもそうするとあの人間はこの森の事を色々話しちゃうんじゃない? いっぱい仲間を引き連れてここを目指すために」


「うむ、そうであろうな。人間どもは強欲だ。主殿が休眠期と知れば何時ぞやのように有象無象が集まることだろう」


「大軍が攻めてきた事があるのですか?」


「うむ。あれは」


何でも今から90年ほど前、主様が休眠期ではない頃ですが、数千の規模の人間たちが幻惑の森へ入ってきたそうです。


勿論目的は主様の果実であり、エフェメラルさんが捕まえた人間から得た情報によれば、勇者クリスの話から果実の有用性を再認識したからどこぞやの大貴族が欲したから、だとか。


その時は主様こそ参戦しなかったものの、中層部まで侵攻してきた人間たちを赤眼様を筆頭に森中の魔獣たちで撃退したそうです。


この出来事が過去の騒乱を鎮める結果になったそうですから、自然と治まった訳ではなかったようです、閑話程度にお伝えしますが。


幻惑の森の魔獣たちは普段こそ争いが絶えない仲の悪さですが、こういう場合は一致団結して森を守るために戦うそうですよ。


それは主様の魔力によってそういう思考に染められているだとか、ちょっと怖い事まで聞いちゃいました。


「まあ、サクラは大丈夫だろう。異様なほど精神が強いからな、羽妖精にしては」


「そうねー。たぶんプリンセスの二人くらいはあるんじゃないかしら?」


はい、神経図太くてごめんなさい。


「今この森の魔獣で真の意味で正気なのは我とエフェメラルにサクラ。後はハヤテだけであろう」


おや、赤眼様はハヤテさんの名前を知ってるんですね、ちょっとした驚きです。


今度教えてあげましょう。


たぶん嫌がるセリフを言いますが尻尾は正直だな、を見せてくれると思います、楽しみです。


「そうよねー、ある意味赤毛くんも精神的に強いけど、あの子はアレだから」


「あ、はい、そうですね」


ゴリラさんは主様の魔力に侵食されてませんが、別の精神汚染を受けてますから。


「話を戻すがその人間のメスの問題を解決するしかあるまい」


「排除は考えないのですか?」


「一時的にはそれで良いかもしれないが、な。だがどうせ別の者が来るだけではないか? 何やら組織に所属しておるのだろう?」


「詳しくは聞いていませんが、冒険者という組織です。私が持つ知識通りならば厄介な情報共有組織かと思います」


「どこでそんな知識を得たのー?」


「きゅ、きゅぃー」


し、失言しました、すみません。


謝るポイントが違いましたが、思わずうっかりさんで、ジュリアナさんを笑えない事言っちゃいましたね。


まあ、聞いてきたエフェメラルさんもどうしても知りたい訳ではないようで、私が脂汗を流して目をそらしたら引き下がってくれました、ふぅ。


「まあ、そこは良いだろう。厄介なのであれば尚更だな。よし、サクラ。お前が解決してくるのだ」


「え? 私ですか?」


「うむ。その者を助けたのもサクラだ。そして何時かは人里に出てみたかったのであろう?」


そうですね、確かに私が蒔いた種ですし、収穫は自分でやらないと、とは思います。


それに赤眼様が言うように、人里には行ってみたかったのですよね。


こういう機会でもないと、この温かい場所を離れられませんからちょうど良かったのかもしれないです。


「解りました」


「ではサクラよ、頼んだぞ」


「はい、お任せください、赤眼様」


こうして私がこの森を初めて離れる日がやってきたのです。


不安と期待で胸躍るのを感じる、そんな夜更けなのでした。




なお、その日は結局主様の根元、妖精の花園で眠る事になりました。


こちらにもエフェメラルさんと私で作ったツリーハウスが存在しているのですが、中層部の別荘とは違い、すごく本格的な作りにしてあります。


そりゃあ本宅には力を入れますとも!


当然ですよねー。

お読みくださってありがとうございました。


次回の投稿は明日の予定です。

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