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本日の投稿は1話です。
「ある~ひ、もりのなかっ、あかめさまに、であった~。
げんわくのもりのみち~。
あかめさまに~であった~」
「赤眼様に遭遇とか死亡確定です。恐ろしい事言わんでくださいよ、サクラさん」
「あ、どうもこんにちは、お猿さん。今日も良い訓練日和ですね!」
「あ、いえ、それは結構でさぁ。あ、私はちょっと急いでますので」
「何かあったのですか?」
「ええ。メスを捕まえたものですからボスに報告を」
「あ、そうなのですね。場所はどこですか?」
「え? まあ、私らはどっちでも良いですし、お教えしますが」
その日は中層部へと出掛けるエフェメラルさんのお供と称して訓練、魔獣たちと戦いに来たのですが、猿系魔獣の方から妙な事を聞きました。
何でも外縁にほど近い中層部で粋の良いメスを発見したのでフルボッコにして捕らえたそうです。
普通ならそのまま食事となるのですが、ボス、ようはゴリラさんから言われている人のメスぽいので報告するつもりだったとか。
うん、それはちょっと気になるというか、ファンタジア世界に転生してから未だに人と出会った事がないですし、見に行くことにしたのです。
エフェメラルさんは人に見えますけど、妖精さんですから含まないのですよ、この世界では。
まあアース世界でも妖精さんがいたら人扱いはされないでしょうね。
なお、私が魔獣さんたちと戦っても殺さないようにしています。
どうやら私も森を維持する妖精という認識を持ってくれたようで、捕食対象ではなくなっているから危険感知も反応しないのですよね。
ただ凶暴といいますか基本的に戦うの大好きな魔獣さんたちですから、私が真っ向勝負を仕掛けると応じてくれている訳です。
さておき、そういう訳で初会合のためにレッツゴー!
早速お猿さんに聞いた場所付近にやってきましたので、飛行を解除して歩いて近寄る事にしました。
何故そうしたかといえば、羽妖精は100年以上この森には存在してなかったので目の前に現れたら大騒ぎになりそうですし、実際そうなりましたし中層部の魔獣さんたちが。
なので擬態でエルフに変身し、戦乙女シリーズは解除、この1年間で使えるようになった異空間に倉庫を作る空魔法ストレージに収め、酒場の給仕スタイルに。
このストレージは何故か生物は入れれないのですが、それ以外ならある程度まで入れて置ける便利な二次元ではよくあるなんちゃらポケット的な魔法です。
この魔法のお陰でとっても助かってます、赤眼様の無茶ぶりとかエフェメラルさんの我儘とか。
さておき、取りあえず私は偶々この森にいるエルフ的な立場で会おうとしているのです。
いきなり遭遇するのは危険な気がしますし、まずはリモートセンスで遠方より確認。
うつ伏せで倒れた茶髪の女性で、おそらく皮製と思われる装備を身に着けた、冒険者、という言葉がぴったりな人でした。
お猿さんたちにフルボッコの目に遭ったそうですし、ところどころ痣が出来て血が滲んでますが、鑑定の結果死んではいないようですね。
その鑑定ですがレベル4にまで成長しましたので、職業まで見れるようになってまして、彼女の情報は以下のようになってます。
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名前:ジュリアナ(女/23歳) 名称:― 種族:人間種成体(LV24) 状態:気絶/衰弱(空腹)/瀕死(全身打撲)
所属:コンテラクト王国/リザリアの孤児院/冒険者ギルドコンテラクト王国王都支部 職業:探索者LV18(経験職:王都民/スカリーメイド/冒険者)
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状態異常がかなり酷い事になってますが、どうやら人間の大人の女性でした。
所属とか職業に気になるワードが盛り沢山ですが、ちょっと急いだほうがよさそうですね。
それでは気絶してますのでスピードアップして目の前に移動。
すぐに死ぬ、とまではいきませんが、かなりやばそうです。
そして今までどうしていたかは知りませんが、かなり臭います。
水魔法で回復と洗浄をしちゃいましょうか、そ~れ。
うん、びっしょり濡れてますが、HPや打撲も回復して瀕死状態は解除されました。
さて、後はこの女性が目を覚ますのを待つだけですが、待つだけなのも暇ですし、食事の準備とかもしておきましょうか。
地面に寝たまま洗浄しちゃいましたので泥で汚れていまいましたから、彼女の下に草を生やして簡易ベッドに。
その後ピュリファイで純水に変えて風魔法で乾燥したらあら不思議、森の中で眠る美女の出来上がりです!
本当に美女かどうかは美的感覚の差があるので控えておきますよ。
まあ、姉貴とか姉御と呼ばれてそうとだけは言っておきます。
そんな事をしながら待つ事数分、私も立ったままは嫌なので蔓で作った簡易椅子に座って料理、といっても果実類を取り出して葉の皿に乗せたりしてました。
「うっ・・・わ、私は」
「あ、気が付きましたか?」
「え? 誰? エルフ?」
「はい、エルフです」
どうやら赤眼様の言う通り、私の擬態姿はエルフに見えるようですね。
さて、気が付いた女性、ジュリアナさんに果実を差し出しつつ現状の説明、偶々通りがかったら倒れていたので治療しておいた、とかを話し、お互いに自己紹介をしました。
彼女の情報は鑑定でほとんど、名前だけじゃなく王国出身者や冒険者などなどを聞いたのですが、まあ、やっぱり突っ込みが入りました。
「えっと、サクラって呼ばせてもらう」
「ええ、どうぞ」
「エルフだから魔法が得意で治療したのは理解出来るが、この物騒な幻惑の森で何故普通にしていられる? それに服が一切汚れていないのは何故だ?」
まあ、疑問に思いますよね。
ですから事前に考えていた、あと、ばらしても問題なさそうな範囲で答えました。
まず普通にしていられるのはそれなりに腕に自信があり、この森の魔獣相手でもそれなりに戦える事。
服が汚れていないのは魔法で常に綺麗にしている綺麗好きだから、と本当の事しか言わなかったですね。
「俄に信じられないが・・・もしかして私の服とかも?」
「はい。水浴びすらしばらくされてなかったのでは?」
「うっ、に、臭ったか、やっぱり?」
私はその質問には沈黙の笑顔で答えておきました、乙女の情けです。
「ところでジュリアナさんはどうしてこの森に?」
「そ、それなのだが・・・どうしてもエンシェントトレントの実が必要なんだ」
「なるほど、霊薬の素材が必要と。どなたか難病に罹っているのですか?」
「ああ、そうだよ。流石にエルフ、知っているんだな」
どうもジュリアナさんの弟、血は繋がっていない孤児院時代の弟分が謎の奇病に侵されて生死の境を彷徨っているそうです。
王都の治療院でも治療できず、神殿の神官が使う回復魔法でも効果があまりなかったらしいです。
だからもう伝説の霊薬エリクサーしかない、とその素材である幻惑の森の主様の果実を取りに来て、お猿さんにフルボッコの目に遭った、というのが此処までの経緯です。
なお、冒険者っていう組織の事が気になりますが、話しぶり的に常識ぽいですから聞いてません、すごく聞きたいですが。
あと探索者っていう職業は探索活動をメインとしたもので、戦闘よりも物探し、秘境探索などの行動に補正が入り、それなりに隠密性が付くそうですよ。
「正直私なら何とか隠れていけると思っていたんだ。だけどこの森の魔獣たちは気配探知が凄過ぎる」
あー、それって私の所為でしょうね。
何せメイドスキルである隠密の所為で、私の気配が薄いですからそれを感じるように訓練されているようですしね。
「うーん。この森に来た理由は解りました。ですが主様の果実は諦めた方がよいですよ」
「な、なぜだい? それに主に様って、どういう事」
あ、ちょっと失敗しちゃいましたね。
上位妖精樹エンシェントトレントである主様を様付けとかおかしいですよね、普通は。
でも、私からするとナチュラルに様付けする存在の1人ですし、仕方がありません。
アース世界の神様と赤眼様も含め、一生様付けし続けると思います。
まあ、ここは前世オタク少女の灰色、腐では決してない脳細胞を駆使してストーリーを。
「まずこれから私が言う事はご内密に願いますね」
「お、おう。命の恩人の言う事は聞くさ」
「私はとあるエルフの一族の出でして、この幻惑の森へ修行の為に訪れていたのです」
「とある一族? まさか伝説の妖精女王を祖に持つ」
「ですから内密に、ですよ? いいですか?」
「あ、ああ、すまん。ついうっかり」
ちょっと気になる事を耳にしましたが、ここまで来たら仕方がないですね。
「そういう経緯からこの森の御神木であるエンシェントトレント、主様とは多少関わりがあるのです。そしてその主様は休眠期に入っておられます」
「休眠期! だったら問題なく取れるじゃないか。この事をギルドに報告」
「内密の意味を知ってますか?」
「あ、そうだったな、うっかり。でも、それだけの情報を報告すれば報奨金が」
「これ以上話しませんし、このまま捨てておきますよ?」
「す、すまない。ギルドには報告しないし、誰にも話さない」
すっごく信じられないですが、まあ、よいでしょう。
そういう訳でストーリーを話していったのですが、そこは勇者クリスの伝説となっているであろう逸話を盛り込んだのです。
主様の果実は、主様の試練を乗り越えた者だけが手にする事が出来る。
でも今は休眠期で試練を受けれないから、手にしようとしたら森の魔獣たちや最強の守護者赤眼様を倒す必要がある、と。
「なっ、そんな・・・」
まあ、そりゃ無理ゲーと諦める展開ですよね、このストーリー。
やっぱり勇者の試練の話は人間たちにも伝わっており、勇者伝説の一つとして語られ劇なども行われているそうですよ。
そして悲しいお知らせがこの時の会話で届きました。
100年前に起きた魔王討伐は勇者クリスによって成功したのですが、魔王が死の間際にため込んだ瘴気をばら撒き、それを祓う為に妖精女王が命を落としたそうです。
そして眷属である羽妖精も魔王討伐戦でほとんど死亡し、生き残っていた者も妖精女王と共に命を落とした、と。
勇者と幸せに暮らしていたのではなく、死を迎えていたという悲しいものでした。
赤眼様に何と言えば良いのでしょうか、この結末。
私はジュリアナさんが勇者と妖精女王の恋愛話として話すその姿を、たぶん表情のない顔で見ていたことでしょう。
救いは、勇者クリスと妖精女王メイヴは最後まで愛し合っていた事だけですね。
「それで勇者クリスの物語は別名妖精女王メイヴの恋物語としても有名で、国中の女性は誰もが一度は憧れる・・・どうかしたか、サクラ?」
「・・・いえ、何でもありません。それで果実を得ることが無理なのは理解されましたか?」
「ああ、そうだな。しかし、それだったらどうすればよいんだ・・・」
「うーん。鑑定で状態を確認はしたのですか?」
「いやいやいや。鑑定とか宰相様に伝手もないのに無理に決まってるじゃないか」
「え?」
「いや、そりゃあ神国アルカディアの太陽神殿にある真実の瞳とかで鑑定は有名なスキルだが、所持者なんて極稀だぞ?」
「そうなのですか? まあ私の周りもいませんが」
私以外って意味ですが。
「だろう? コンテラクト王国で状態異常の確認ができるレベル2の鑑定持ちは宰相様だけだ。あとは王族専属紋章官様がレベル1だったはず。それ以外はいない」
「そうですか。じゃあ、難しいですね」
「くそっ。どうすりゃいいんだ、本当に」
「まあ、取りあえずですね、私の仮住まいに来ませんか?」
「え? いや、私は急いでるんだが・・・」
「ほら、もうすぐ日が暮れますよ」
「あ」
まあ、これだけ長時間話してれば日も暮れますよね。
こうして私はジュリアナさんを連れて仮住まい、中層部に作ってもらったツリーハウスへとやってきました。
このツリーハウスはエフェメラルさんが作ってくれたもので、私が内装などを用意した自身作だったりします。
なぜこの様な仮家を作ったかといえば、樹妖精さんたちが森の維持の為遠征することが多いからです。
なので似たような仮家のツリーハウスは中層部にそれなりにあり、女性専用の魔獣侵入禁止となっております。
「なっ!? こんな所に家が。ここを拠点にして活動すればこの森だって。これはギルドに報告すれば」
「ですから内密と言ってますが、ジュリアナさんは記憶力がないのですか?」
ジュリアナさんを助けたのは失敗だったかなぁ、と思い始めた私です。
ま、まあ何とかなりますよね、きゅぃー!
お読みくださってありがとうございました。
妖精生初の人間とはラストダンジョンに挑む非戦闘職勇者さまでした!




