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なんで我々を召喚した!?

作者: 的菜何華

舞加様の黒目黒髪企画参加作品です。よろしくお願いたします

「……えーと、つまりこの中の誰かが世界救済の鍵を握る神子だと」

「……はあ」

「で、その神子は黒目黒髪だと」

「……はあ、そのはずなんですけどねえ」


ええ、まあ、あれですよ。

お約束の異世界召喚って奴ですよ。

……にしたってこれは呼びすぎじゃないですか!?

三百人ですよ!! 三百人!!

せめて一クラス単位でしょうよ!!

しかも、その全員が黒目黒髪じゃないというミラクル!!


……もう帰してくれませんかね?


 * * * 


申し遅れました。私成田まりあと申します。

ピッチピチの十七歳の女子高生でございます。


事の発端は夏休みのある日――こんな広告を見たことから始まります。


「ギネス世界記録に挑戦!! 無料で髪色変えるチャンス!!」


とある大手染髪料メーカーのものでして。

つまりは「染髪同時世界一を目指そうぜ!!」っていう企画ですね。

世界一とか興味ない私でも無料には興味津々ですよ!!

だって無料ですよ!! ただなんですよ!!


……ええ、まあ、御察しの通り。

記録が認定され記念撮影といったところで。

その会場に集った三百人丸ごと召喚されてしまった訳ですよ。


つまり――全員染髪済み。

金銀茶に始まり赤青緑ピンク紫黄と実にカラフル。

染めたてだからプリンにもなってません。

元の髪色なんてもう分かりません。

……もう、帰って良いですよね? 


 * * *


「――自己申告では万が一ということもありますし、髪が生え替わるまでこちらに御滞在いただきたいんですけど……」

「三百人ですよ? 生え替わるまでって最低でも十日はかかりますよ?」

「……………どうしましょう?」


召喚した方も頭抱えてますよ。

白い服着た神官さんたちも悪いことしてそうな大臣も凛々しい騎士様も赤いマントの王様も頭抱えてナンデコウナッタですよ。


なにせ一番召喚しちゃいけない集団を三百人召喚ですからね。

その召喚陣絶対どっか間違ってますよ。


「食事は三食お願いします!」

「えーあたし朝はシリアルしか食べられなーい」

「はあ!? 日本人なら和食だろ!?」

「つーか、スイーツもよろ」

「いやいや!! 風呂の方が重要でしょ!!」

「いや、俺シャワー派だし」

「トイレは洋式水洗じゃないとイヤです!!」

「……すいません。私、持病の薬飲まないと死ぬかもしれないんですが」

「俺、明日人工透析受けないと……」


…………うん。まあ。あれですよ。

三百人も呼んじゃえばもうカオスですよ。

一人ならともかく仲間が三百人もいればみんな強気ですよ。

てか、人工透析さんと持病さん。あなたは帰った方が良いですよ。


「で、この場合世界記録ってどうなるわけ?」

「……本部に後で問い合わせます!!」


おや、審査員さんも巻き込まれましたか。

いえ、記録に罪はないですからね。

無事に記録が認められることを願うのみです。


「というか、部長ってヅ……」

「しっ!!」


……ああ、あのいかにも不自然な髪型の方部長なんですか。

運営の方も巻き込まれてしまったようですね。

この場合お給料ってどうなるのでしょう?


「ちぇー。電波入ってねえし」

「動画アップ出来ないんだけどー?」


無茶言うなですよ。

異世界がWi-Fi対応してたらおかしいでしょう。


「ねーこの後暇? ランチ奢るよ」

 

そこ、神官のお姉さんをナンパしない。


「ハーレムキタコレ!!」


とりあえずモゲろ。


「てーかタバコないっすか。タバコ」


これを機会に禁煙してはいかがでしょう?


「俺カラコンなんだけど、外した方が良い系?」


あ、そう言う人もいますよね。今時の若者として。


「デカ目カラコンはどうしたらいい?」


そう言う人もいますよね。つけまと並んで女子必須アイテムですし。


「スイマセン。ワタシ、地毛金髪ナンデスガ」


そう言う人もいますよね。国籍不問のイベントでしたし。


「元が黒髪だったけど白髪になった場合はどうなりますか?」


そう言う人もいますよね。年齢不問のイベントでしたし。


「髪って言ってもそんなにないんだけど……」


……そう言う人もいますよね。いや、人の価値は髪の量で決まらないです。


「円形脱毛症なんですけど、その場合は……」


そう言う人もいるんですか。ストレス社会ですしね。


「縮毛矯正はどういう扱い?」


そういう人もいるんですか。ストレート憧れますしね。


「え、じゃあストパーは?」


そういう人もいるんですか。正直違いは分からないですが。


「ごめん。イベント終わった記念にバリカンで剃っちゃった」


そう言う人もいるんですか!? 流石にそれは想定外です。


「「「「「で」」」」」


ぐるりと。

三百対の瞳が国王を見ます。



「「「「「「どうすんの」」」」」」


「………………すいません。お帰りください」


そういうわけで。

三百人無事に帰還しました。


たぶんあの国はもう召喚に頼らない方が良いでしょう。


あ。そうそう。

後日談ですが。

記録の方無事に登録されたらしいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法陣に絶対問題あり(笑) 持病と人工透析はマジでとどまっちゃダメですね! テンポがよくて面白かったです。
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