虚空の光、残されたモノ (2)
「やはりシェルターだったな」
早歩きで通路を歩くサンドリヨンさんを私は追いかけます。
アリスさんには車に残り、見張りをしてもらっています。
なんだか壁に弾痕が目立つのは何故でしょうか。内部に侵攻されたシェルターなのか、それとも。
「急いで、対抗できる武器を見つけましょう」
「ああ。水晶体を生成できるクリエイターを見つけられれば……」
戦中、人類最後の主力兵装として使われたZM――ゾンメザマレック水晶体兵器には、その水晶体の取り扱いにトラペゾヘドロン機関からもたらされる人工エネルギー、トラペジウムエネルギーが必要です。
装甲車に機関はありますから、あとは水晶体があればいいわけです。
この間のシェルターのクリエイターは壊れていて使えませんでしたので、補給無しなのです。
「おや、この端末は生きているぞ。マップを読み込もう」
通路の壁に備え付けてあったものがまだ使えたようです。つまりこのシェルターはまだ使えます。
「……どうですか?」
「このまままっすぐ進むとクリエイター室だ。途中で左に曲がると格納庫と倉庫だな。まずはクリエイターだ」
サンドリヨンさんはさらに早足になりました。
「私も読み込みを……」
「急げ、アリスが待ってるぞ。心配するな、私はやられない」
クリエイターは残念ながら動きませんでした。
人の手によって壊された痕跡、さっきから壁の弾痕。ここでは何が起きていたのか。位置情報システムも無いので前線のシェルターだったのかどうかもわかりません。
「残念だったな。あとはさっきのとこで曲がった先だ」
「……ええ」
「大丈夫だ、きっと見つかるさ」
サンドリヨンさんが私の肩を撫でます。優しい手。
その瞬間、天井の照明が消えました。
「どうした?」
「エネルギーが落ちたのでは?」
私たちの目は暗視機能があるので見えますが、真っ暗なのはわかります。
「……さっきの端末まで戻ろう。嫌な予感がする」
「格納庫は?」
「二手に分かれて……ああ、レッドフードはマップを読み込んでいなかったな、すまない」
だから言ったのに。仕方ないので二人で来た道を引き返します。
そして判明した事実は、サンドリヨンさんの予想がまた当たったようです。
「照明が壊れていて他の色が出なかったんだ。これは警報だ!」
「まさか」
「もう追いついてきた! アリスが危ない!」
先ほどの南方製アンドロイドが侵入してきたことを示していました。
「君はここに残ってマップを読み込んだ後、格納庫で武器を探せ! 私はアリスのとこまで戻って時間稼ぎをする」
「そんな、素手で……」
「私とアリスは実践を経験した、君よりかは戦える。でも早く持ってきてくれ。帰りはこの道ではなく、反対側の出口から通路に出た方が入り口に近いはずだ」
「わかりました」
「頼んだぞ!」
サンドリヨンさんは走っていきました。私は端末にアクセス。
早く、早く、早く――。