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ガラスの靴、灰の姫 (1)

「れっちゃん! 食べ物はこれで全部だよ!」

「わかりました、後ろに詰め込んどいてください。……んー、なんで動かないのでしょうか」


どうしても動きませんでした。

私が弄っているこの車両の動力がどうしても動かないのです。少なくとも人工核や有機エンジンではない小型の動力機関のようなのですが、原理がわからないのでどうにもできません。

これは私たちが今いるシェルターの中を探索して発見した車両です。戦前からあるのか、それとも戦後に作られたのか、名前もわかりません。

でも、これが動けば旅がとても楽になります。荷物をたくさん持ち運べますし、足元が悪い道もらくらく。なにより速さが違うでしょう。


「ねぇ、アリス。あなたこの車両本当に見たことないんですか?」


荷物を積み込んでいるもう一人の少女――アリスにさっきから何度目かの同じ質問をします。


「ないよー」

「どうしてですか。どう見ても軍用の車両でしょう」

「ないもんはないんだよー。れっちゃんこそ知らないの?」

「……私が知るはずないでしょう」

「だよねー、予備個体だもんねー」


彼女は私と違って、戦中生まれで戦闘に参加していたので知っているはずなのです。

はぁ、困ったなぁ。せっかくの掘り出し物だと思ったのに。楽をしようとしてはいけないのでしょうか。


「れっちゃん、なんか食べようよ」

「昨日食べたばっかりじゃないですか。節約してください」

「だって疲れたんだもん。ボクは肉体労働したんだよー」

「そんなに燃費悪くないでしょう。……スープだけにしてください」

「わーい!」


アリスはこの車両が動いた時に乾杯するように出しておいた食糧に飛びつきました。チューブのチキンスープです。

ああ、駄目、美味しそう。


「……休憩にしますか」

「そうだよー、それがいいよー」


スープをすすりながら、私は辺りを見渡します。現状を打破しないといけません。

動力が動かないのではどうしようもないのですから、もしかしたら、他の乗り物を探したほうがいいのかも。

ここは避難用シェルター、他にも乗り物が残ってる、でしょうか。それにしても規模の大きいシェルター。今いる空間でも、天井まで百メートルはありそうに見えます。地面には線が引かれていて、この車両よりもっと大きい物がここを出入りしていたことは明白でした。


「ねぇ、ここってただのシェルター?」

「さー。もっと地下に行ける扉もさっきあったよね」

「通れませんでしたけどね」

「うん」


灯りも生きているので、きっとどこかに大型のエネルギー供給源があるはず。そしてここはシェルターであることは確認していますので、圧縮資源もあるはず。この二つがあれば食糧や道具が大量に作れるはずなのです。

あ、データさえあれば人工核もいけるかも。この車両にくっつければいいんですよね。いいアイデア。


「もう少し、ここを探索してみませんか?」

「えー、まだするの?」

「はい決定。行きますよ」

「ぶー」

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