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「傷」
「傷」
男の傷は放置すれば悪化する
それでもいずれ直る
残ったとしてもそれは顔の一部だ
女の傷は目に見えない
放置しようとしても
薬を与えようと口を出すのも
傷口に塩を擦り込むのも
ニヤリとあざ笑うのも
女がする
細い糸の上で
薬と塩を持って微笑む
天使でもなく悪魔でもなく
同時に進行する
そして傷はいつまでも完治しない
治りそうになっても
誰かが塩を振りかける
悪化しても
にこやかな笑顔で大丈夫
傷を見せびらかす人
傷はもうないと言い切る人
傷に気が付かない人
全ての女が
透明な糸の上でゆらゆらゆら
幸せそうな人の足元をみつめて
崖で一人になる人を待っている
それが普通だ
傷を持たない女はいない
それが顔に表れていなくとも