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「なにもない 1・2」
「なにもない」
枯れるのは木だけではなく
嗄れるのは声だけではなく
涸れるのは水だけではなく
溢れ出していたはずの言葉だった
美しかったはずの世界は見えない
聞こえたはずの音も音楽も
見えたはずの風の動きも
なにもない
絶望さえもないのが
いつしか光になるだろうか
「なにもない 2」
なにもないという
空虚な心でさえも
言葉にできなくなった
なにかはあると
根拠のない主張さえ
浮かびもしなくなった
まったく光らずに
まったく気づかれずに
いられたなら
自分が暗い中にいても平気なのに