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「花火の端っこ」
「花火の端っこ」
出ていく町の窓から見える夏
山の向こうに花火の端っこが見える
半分もないけれど
いつか山の木が伸びて
端っこさえも見えぬ日がくるだろうか
それよりも先に
花火が消えるだろうか
伝統が消えるか
技術が伸びるか
山が崩されるか
木が伸びるか
人がいなくなって
花火も消えて
木はぽつりとつぶやく
火の華が見えなくなった
音もなく
何もなかった子供のころを思い出す
ああ 遠くに花火の端が見える
いつの日か
せめて半分見えるまで
今日も枝をゆるりと伸ばす
我らを削る者はもういない