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「アンパン」

「アンパン」


遠くで陽炎が揺れる暑い日差し

駅のホームで風に揺られながら


彼女は

セーラー服の彼女は


あんぱんを食べていた


来ない電車を思いながら

遠くを見つめながら


彼女は

ポニーテールを揺らしながら


あんぱんに噛みついている


しょうがないな、と見つめる人もなく

みっともないと目を細める人もなく

なに食べてるのよとからかう人もなく

頂戴とねだる人もなく


彼女は一人


ホームで暑い風を受けながら

袋をはいでいく

黙々口に運ばれていく

そしてそれは確実に減っていく


彼女が振り向いた

音とともに電車がやってくる


あんぱんは鞄の中に消えた


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