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「ふの詩」「墓」
ふの詩
自殺者がさくさく
増加の文字だけで数字さえ残らない
電車がどこかでカタカタとまる
客からはため息一つ
暴動が起こっても
カメラの向こう側
川の氾濫が起こっても
陸の向こう
いつだって側にあるはずのふの詩
出会わないとわからないふの詩
それでも
誰もが会わなければいいと願うふの詩
「墓」
自分が大きくなる
自分が年をとる
自分が老いる
と同時に
親もさらに老いることに
人が気がつかされるのは
だいぶ残りの時間が少なくなってからだ
いるのに会わないのと
いないから会えないのとでは
まったく違うのだということに
相手が骨になって気がつく
遅いというだろうか
それとも気がついただけマシと言うだろうか
誰もが
基本的には同じ道を行くはずだ
この国では行くはずなのだ