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「ふと上を見て」
「ふと上を見て」
綺麗な空ね
面白い雲ね
遠くまでよく見えるわ
あそこにあったはずのビルは吹っ飛んだ
見たことの無い山が遠くに見えた
写真を撮りましょう
誰に見せるわけでもなく
文句もかき消される
火薬の音に悲鳴に怒号に
聞いたことの無い爆音が聞こえる
普段は足下のがれきを見つめながら
手を取る子供の未来に溜息をついて
大人同士で顔をしかめているけれど
たまに上を見るわ
綺麗な空ね
面白い雲ね
朝焼けなのか夕焼けなのか
火事なのか
赤い空が見える
今日もビルが吹っ飛んで
あそこにあったのはなんだったのかしら
そう思う暇も無く
足下に気をつけて歩いて行く
たまに上を見るわ
星は綺麗だけど
それが何になるというのだろう
空は青いけれど
それがなんだというのだろう
それでもたまに空を見る