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「書く」
「書く」
かつて筆を滑らせていた手は
高貴だったのだろう
砂に書かなくても残せるように
石に刻まなくても残せるように
音にのせて歌い継がなくていいように
万年筆を持ち
ペンを持ち
高貴など辞書の片隅になろうとも
ボールペンになり
それでも書いている
鉛筆は
シャーペンに
手にタコが出来ようとも
それでも書いている
そして
指一本になろうとも
電子の世界になっても
目玉だけで文字を打ち
いつか
いつか脳だけで文字を書くだろう
そのころに
私はいないだろうけれど
誰にもでも
書く自由がある世界だろうか
誰にでも
批判は書けるだろうか
未来は
書き続けている世界だろうか