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「ひび」
「ひび」
あなたが美しいといった
世界を見に行ったけれど
私には見えなかった
ひび
お前には資格がないのだと
私は道をそれた
あなたが素晴らしいといった世界を
聴きに行ったけれど
私には雑音にしかならなかった
小さなひび
私にはわからない世界だと
言われた気がして道をそれた
君が歩きたいといった道を
私はたぶん歩けない
資格がないから
才能がないから
それでもしがみつきたい力がないから
ああ見えるほどのひびがある
あなたにさようならさえ
言うだけの力さえもない
もう崩れるしかないひび
私にはあなたを支えられない
自分さえ支えられないから
ゆらゆらしているまま
今日も漂う