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福島 1
ひらひらと
あちらこちらを飛び回るワタシとは違って
生まれてからずっと同じ場所にいる人がいる
自分の生きてきた年月の半分以上同じ場所にいる人がいる
いまさら動けないほど老いたのは体ではなく心
美しい思い出も
悲しい思い出も
辛い日々も
笑顔も背後の風景と共に固まっている
親も眠る場所に自由に行けない現実
人々は残るという選択を選ばせてもらえなかった
選択は一つ
離れること
見えていても行けない家
会いたくてもどこにいるかわからない友人
住むところがあって
医療があって
食料がある
ワタシなら生きていける
だが、老いたものはそれだけでは生きていけない
悲しすぎて
寂しすぎて
彼らは生きていけないのだ
ワタシにはなにができるというのか
誰かが問いかけている
あれからずっと問いかけている