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「暗いスーツ」
「暗いスーツ」
寒いうちに現れる黒いスーツの
学生たち
同じような色と形で
個性なんか死んでしまえ
間違い探しができるくらい
靴からコートまで違いはちょっぴり
個性なんか死んでしまえ
似た化粧に
同じ髪型で
あたしは落ちて
あの子は未来を得た
何がいけないのか
何が違うのか
いまだけじゃ未来はわからないけれど
レールにも乗れないような
人生を送ってきたわけじゃないのに
切符さえ貰えない
同じカバンに色のない爪と
みんな同じじゃない
私は落ちて
あの子は切符が増える
レールにも乗れない未来のために
生きてきたわけじゃないのに
じゃあなんのために
生きてきたのだろう
たまに心に花が咲いても
会社から送られてくる紙切れで真っ暗になる
黒いスーツは今日もたくさん
私のは暗いスーツ
今日も暗いスーツ
明日も明後日も