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「冬の道 1」
冬の道
イヤホンをしたまま
たまに携帯見つめて
うつむいて歩いていく君は
冬なのに
揺れる鞄から聞こえる
水筒の氷の音を聞くことなく
つまらなさそうに歩いていく
冬なのに
まだ消えていないズボンの
折り線に気がつくこともなく
学生生活を過ごすのだろう
気づかなくていい母の愛は
気がつこうとしなければ
分からないほど膨大で
これは当たり前ではないと
気が付いたときには
もう老いているかもしれない
白い息を吐きながら
さくさく歩いていく君
転ばぬように願いながら
ふと振り返って
誰かが来るのを待っていられるような
そんな道を歩いてほしいと願う
いつまでも同じ道が続くことは
ないのだと春になったら
気が付くだろうか
それとも見ないまままた歩くだろうか