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「フィクションと甘さ」
「フィクションと甘さ」
永遠の愛なんて
とぼやきながら読むハッピーエンド
いいところのない
落ちこぼれの主人公のことが
好きな豊満な身体の幼なじみ
たくさんの異性に囲まれて
想われる生活
滅多にあり得ないと知っているし
絶対にないとは言いきれないから
期待と諦めを重ねて
フィクションの世界に載せる
キミだけが宝物
と離婚を繰り返すバラード歌手
種も仕掛けもないと
マジシャンが投げるカードのように
くるくる回る
フィクションと甘さが
振ってこない隕石のように
転がっていないダイヤのように
舞ってこない札束のように
そこには見えているフィクションと
ない現実が回るけれど
絶対にないとは言い切れないから
今日もその中にある幸せに手を伸ばす
たとえそれがフィクションと知っていても