128/219
「僕が振り返らないわけ」
「僕が振り返らないわけ」
僕よりも先にキミは去っていく
にっこり笑って別れを言われて
僕は寂しくなる
いまはまだ
永遠に会えなくなるわけではないけれど
明日も会える
そんな毎日が続くことはない
それがわかるくらいには
僕だって歳を重ねた
君が帰るとき
君からのさようならを
聞きたくないだけの理由
笑って去る姿にさみしくなる
それだけの理由で
僕は振り返らない
パソコンを睨んで
君の声に振り向かないように
集中しながら
君の気配が消えるまで待つ
寂しいけれど
君にさようならを言われると
もっと寂しくなるから
明日も会えることを願いながら
仕事に戻る
今日の明日も
君が帰るころには背を向けるだろう
僕は振り返らない
それ以外の時は君を見ているから