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「歩く君」
「歩く君」
つまらないじゃない
そう言って彼女は仕事変える
つまらないじゃない
そう言って彼女は毎日違う道を歩く
たくさんの人と会って
たくさんの道を見て
知識をたくさん詰め込んで
いつになったら詰まるんだと問われながら
つまらないじゃない
そう言って彼女は笑いながらまた歩き出す
誰かが見つけ出した
たくさんのアルファベットと数式と
記号と名前のなかで
なにも変わらないものなどないと
キミが正面で笑う
つまらないじゃない
そう言って友人を変えながら
洋服を変えながら
音楽を変えながら
化粧を変えながら
歩いていく
彼女にとっての詰まるものを
追い求めて歩き続けていく
それにはついていけないけれど
いつかみつかるといいなと
願い続けて帰ってくるのを待つ
彼女を後姿に羨望を見ながら
自分にはできないと首を振りながら