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「あぶら」
「あぶら」
ウシの油は白いけれど
人のはどうだろう
熱い太陽とは
別のあつさ
溶けそうな
汗が落ちて
水分が減って
血が濃くなって
命さえも怪しくなるというのに
おかしい
摘まめるほどの油は
何色かはっきりしないけれど
流れ落ちることもなく
減ることもなく
そこで揺れている
焼けば溶けるけれど
熱いから嫌
皮膚がんも痛くなる日焼けも嫌
シミもそばかすも嫌
そんなわがままを並べて
なんで溶けないんだろう
そのまま溶けてなくなればいいのに
水分をとりながら
パーセントの増える湿気を睨み
唸っている