第一回棚見高校校内ラジオ
「みなさん、こんたなみ〜」
「えっ、何その挨拶」
「さあいよいよ始まりました第一回棚見高校校内ラジオ、実況解説は私、色田あかりと」
「衣良戸ひかりでお送りしますって、何を実況解説するのよ」
ハハハハハ
「効果音鳴らしてるんじゃないわよ」
「さあ場も盛り上がってきたところで、いつものやつ行ってみましょう!」
「いつももなにも、今日が初回じゃない」
「ああそっか。ひかりちゃんは幻の第零回には出ていなかったんでしたっけ。失敬失敬」
「本当に知らない回があった⁈」
「いやあ、幽ちゃんの面白トークが炸裂でしたね」
「誰よその女⁈」
「いや、違うんです。幽ちゃんとは、そう、ただのあそびの関係です。本命はもちろん、ひかりちゃんですよ」
「なんで浮気バレしたやつみたいなこと言っているのよ。別にアンタのことなんかなんとも思っていないんだから。勘違いしないでよね。アタシはただ本当に『幽ちゃん』って娘を知らなかったから聞いただけよ」
「ああ、知らないのも無理ないですよ。だって幽ちゃんは幽霊部員ですもん」
「いやいや、幽霊部員だからって、部員名簿には載っているはずでしょう? 部長の私が知らないはずないじゃない」
「いや、だから幽ちゃんは幽霊部員なんですって」
「?」
「幽霊の、部員です」
「えっ、じゃあその幽ちゃんは……」
「あっ、幽ちゃんも来てくれたんですね。この前はありがとう」
「いやーーーー‼︎」
「ぐわーーーー‼︎」
「ってそのネタはラジオじゃ伝わらないでしょ」
「それもそうですね」
ハハハハハ
「ってまた効果音で誤魔化してるんじゃないわよ」
「さあ冗談はさておき、まずはいつものお便りのコーナー」
「初回なんだから来てるわけないじゃない」
「ペンネーム『ひかりちゃんマジ天使』さんからのお便りです」
「なんで来ているのよ……」
「『棚見高校校内ラジオの皆さん、こんたなみ〜』、はい、こんたなみ〜」
「なんで既にその挨拶浸透しているのよ」
「『幻の第零回放送、面白かったです』、はい、ありがとうございます」
「いやだからなんで私の知らない第零回があるのよ」
「『特にひかりちゃんの秘蔵写真集のコーナーが最高でした』、いや〜、あれは良いものでしたね〜」
「ラジオじゃ何も見えないでしょ、っていうかなんてものを使っているのよ!」
「私も秘蔵写真を放出した甲斐がありましたね」
「あかり、アンタ何やっているのよ!」
「ひかりちゃんのお母さんにわざわざ頼み込んで用意しましたからね〜」
「身内に敵がいた⁈」
「ああ、安心してください。出しちゃいけないひかりちゃんのアラレもない姿は、私しか見ていませんから」
「なんてものを見てるのよ!」
「可愛かったですよ、子供の頃のお風呂写真」
「ああ、まあ、ううん、それなら……」
「まあ今一緒にお風呂に入っているのは私なんですけどね」
「あ〜か〜り〜〜!」
「おおっと、雲行きが怪しくなってきましたし、続きを読みましょう。ええっと、『最近僕は、あることに気付いてしまいました』、おお、一体何に気付いたんでしょうねえ」
「もう、話を逸らして」
「『それは大天使ひかりちゃんの素晴らしさです。ああ、貴女の素晴らしさを広めるにはどうしたら良いのでしょうか?』だってさ。よかったね、ひかりちゃん」
「いやこわいこわいこわい」
「なんでですか? ひかりちゃんのファンですよ、ファンサしないと」
「いやいやいや、これはなんかもうファンとかじゃなくて狂信者とかの類じゃない、そのうち怪しげな儀式の生贄とかにされちゃいそうじゃない」
「失礼な、ひかりちゃんファンクラブのメンバーはそんなことはしませんよ」
「知らない間に知らない組織ができてる⁈」
「みんなお行儀が良いですよ。初代名誉会長のあかりちゃんが断言します」
「敵がここにも⁈」
「まあともかく、彼らが直接手を出してくることはないから安心してください。イエスひかりちゃん、ノータッチです!」
「明日からアタシはどんな顔して過ごしたらいいの……」
「笑えばいいと思いますよ。ニコーって」
「それが出来たら苦労しないわよ」
「まあペンネーム『ひかりちゃんマジ天使』さんにはこれからもひかりちゃんファンクラブの一員としてひかりちゃんの可愛らしさを広めてもらいましょう」
「広めなくてもいいわよそんなもの……」
「さてそれではリクエスト曲、ひかりちゃんファンクラブ『らぶりーぷりちーひかりちゃん』です、どうぞ」
*
「いやあ、みなさんの熱い思いが伝わる良い曲でしたね。あれ? どうしました、ひかりちゃん?」
「もう外歩けない……」
「そんな⁈ ひかりちゃんを泣かせるなんて、誰がこんなことを⁈」
「お前じゃい‼︎」
「大丈夫ですよ、ひかりちゃん。私がいつでもついていますからね」
「いやだからお前が原因じゃい‼︎」
「とまあひかりちゃんも元気を取り戻したところで、続いてのコーナー行ってみましょう!」
どんどんぱふぱふ〜
「さて続いてのコーナーは、『突撃、棚見の名物教師!』ということで、毎回我が校の誇る先生方をお呼びしてインタビューしちゃおう、というコーナーです」
「本日のゲストは尾谷先生だったわね」
「ええ、そう、我らが担任、鬼の尾谷先生です! それでは先生、どうぞ!」
「アンタよく鬼とか言えるわね」
「まあ本人も認めてますから。ってあれ、入ってきませんね?」
「あら、何かあったのかしら?」
「ああ、只今情報が入ってきました。ええと、何々。『昼休みに学校を脱走してコンビニに行った生徒がいたため、尾谷先生は現在生徒指導中』らしいです」
「尾谷先生も大変ね」
「尾谷先生は手が離せないようですので、インタビューは延期ですね。では代わりに一曲、To Saw Chu『逃げ出せ、世界から!』です、どうぞ」
*
「ロックでしたね〜。束縛からの解放って感じの」
「お前の頭がロックじゃい!」
「え?」
「え? じゃないのよ。どんな頭してたら『飛び出せ、学校から』とかいう歌詞の曲をこのタイミングで流せるのよ」
「ええ、まさにぴったりかと」
「んなわけないでしょ! どうすんのよ、生徒指導室に流れていたら」
「届いているといいですね」
「火に油を注ぐじゃない」
「ええ、ですから尾谷先生へのエールです」
「そんな応援あるか!」
「とまあ、そんな感じでそろそろ良い時間ですね」
「なんか短い時間のはずなのに疲れた気がするわ」
「そんなんじゃこの先が思いやられますね」
「誰のせいだと思っているのよ」
「ええ、みなさん、棚見高校校内ラジオ、お楽しみいただけましたでしょうか」
「これ本当にお昼時に流して大丈夫だったのかしら」
「実況解説は私、色田あかりと」
「衣良戸ひかりでお送りしましたって、だから実況解説じゃないっての」
「またなみ〜」
「ま、またなみ〜、ってこれ本当に採用するの?」
「いやあ、うまく行きましたね、ひかりちゃん!」
「暴走しすぎよ、あかり」
「ええ〜、でも突っ込んでくれるひかりちゃん、とっても可愛かったですよ!」
「か、かわっ、ってあんたねえ」
「大好きなひかりちゃんと一緒にラジオできて嬉しいです」
「それはアタシだって……。駄目よこんなとこで、ってあかり、まだマイク入って」
ブツン




