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"素直になる薬"を渡されたので好きな幼馴染に告白したら何故か泣かれたんだが。

作者: 夜亜
掲載日:2026/01/28

幼馴染の夏河 詩乃(なつかわ しの)と一緒に帰ろうと、校門の前で待っていた時だった。

スマホに視線を落としていると、「日坂くんー」とのんびりとした声で呼ばれたので、俺は顔を上げた。


やや日に焼けた元気ガールこと、詩乃の親友である小石原がこっちに手を振っていた。

背中にはテニスラケットの入ったバッグを背負っている。


小石原がこっちに近づいて来たので、俺も軽く挨拶を返した。


「ああやっほ、小石原」

「日坂くん、詩乃待ってるん?」

「そうそう」

「おーおー、おふたりさん、相変わらず仲が良いこってぇ。羨ましいなぁ、このこのー!」


ぐへへ、と小石原はちょっとお節介なおじさんぽく手をワキワキされたが、俺は笑って肩を落とすのにとどめておいた。

………まだ付き合っては、ないけどな。

こうやって小石原に詩乃との仲を揶揄われるのは、会った時のお約束みたいなものだ。


ちなみに小石原は、高校入学して以来既に4…5?人の男と付き合って別れた恋多き女なので、彼女が俺を羨ましがる要素はなく、羨ましい云々はただのお約束の一環だとだけ述べておく。


「ねぇねぇ、日坂くん。ウチ、すっ〜ごく面白いこと思いついたの!聞いてよぅ」

「あんまり良い予感しないけどな。今度は何やらかしたんだ?」

「うわひどーい!ウチ、恋人の手前で止まってる日坂くんと詩乃のために一肌脱ごうとしてるのに〜」


けらけら、と笑う小石原。ひどい、と言いつつ、まったく気にしてもいない快活な素振りだ。

こういうさっぱりしたとこは、女友達として付き合いやすい。


……それにしても、俺と詩乃のために、ってどういうことだ?


小石原はニシシッと悪巧みをしてそうな笑みを浮かべて、口に手を当てた。

俺は自然と耳を集中させた。


「……実はさぁ、今日の昼休み〜、ウチ、詩乃にとある薬渡したんよ。特別なお薬……」

「……薬?」


俺の脳内に、いたいけでちょっとおバカなうちの幼馴染を、手練手管に長けた小石原が騙し、カラフルな薬の入った袋を渡している姿が浮かんだ。


しかしその薬の正体に気付かずに、親友を疑わないであろう、俺の可愛い幼馴染は、危ない片棒を担がされーーーー!


「……はっ、小石原!おま、実は危険人物…か…!ええい、俺の幼馴染には、手は出させ、」

「はいは〜い、違います違いますー!はあ、日坂くんって頭いいのにたまにアフォォだよねー」

「アフォォじゃない。冗談す」


冗談で黒い団体の一員にしてしまったのは、悪かったけど。


俺は首を傾げた。俺に、昼休みに同級生に渡すような薬の候補は思いつかない。


「で、薬ってなに?」

「へいへい、よくぞ訊いてくださいやした旦那〜!聞いて驚くなよ、その名もーーーーー」

「その名も……?」


ごくり、と喉を鳴らす。

もったいぶるように、しっかりと間をおく小石原。

しかし、ニヤっと真面目なのかニヒルを目指しているのか分からない顔で、小石原はしれっと言い放った。


「"素直になる薬"」


俺は腹を抱えて笑った。

やばい、まさか漫画みたいなこと言い出すとは思わなかった。


「ひー……くく、ふ、ぶふ、こ、小石原、そ、そっか、す、素直になるくす、薬………」

「あははーそうそう、またの名を自白剤。ゲロらせるために、拷問に使うヤツねー」

「……………」


俺は一瞬で無言になった。


〜〜悲報〜〜

素直になる薬って、ラブコメとかお色気ではなく、サイコホラーの方だったってよ野郎ども!

えっちぃやつじゃなかったってばよ、苦しみの方だった……。


黙り込んでしまった俺を、小石原は笑い飛ばした。

バシバシと背中を叩く。


「ははっ、冗談だよーん!そんな顔すんなって、日坂くん〜」

「あはは…だ、だよな!…ビビった…ぁ…」


おいおい、やられた。揶揄われたな。


「でも、素直になる薬は、詩乃にほんとに渡してあるの」

「マジか!……って、いや現実にそんなのあるの」


冷静な頭で考えて、いやないだろと俺は頭の中でその考えを打ち消した。

聞いたことないし、高校生の小石原がそんな代物手に入れられるわけがない。


「だねだねー。つまり、私が詩乃に渡したのはただのサプリメント!ただし、詩乃にはよくよ〜く、"素直になる薬"の効果を説明してある。あと、日坂くんに飲ませたらいいよって言ってある」

「…………あっ(察し)」

「なはは!もう分かるダロ〜、日坂くんー?」


俺の大すk……こほん、いや何でもない。さすがに我ながら幼馴染バカすぎて、恥ずかしいので控えておく。


俺の幼馴染にして、俺の想い人である夏河詩乃は、ぽわぽわしていて大変可愛らしい、癒し系のおっとり女子なのだが、ちょっとばかし抜けているのである。

天然というか、おバカというか……


胡散臭い薬を親友から渡されても、彼女は、絶対疑ってもないだろう。

素直に「コレは"素直になる薬"だ」と信じ込んでいるのに違いない。

そしてソレを俺に飲ませる意味。


つまり、これから俺の取るべき行動は………


「日坂くんよ。キミが何をすべきかよぅーやく分かったようだね?」


ニヤニヤニヤのエンドレス。かつてなく、お節介おじさんみたいな女子高生らしからぬグフフン顔をさらしながら、小石原はサムズアップ。


……まったくコイツは、なかなかお節介なのだから。


俺は親指を立てて、任せとけと頷いた。


「丈くーん」


俺は、日坂丈一郎である。

遠くから俺を呼ぶ声がしたので目線をやると、待ち人の登場だった。


詩乃だ。

栗色のふわふわとした髪を靡かせた彼女は、重そうな楽器ケースを携えて、こちらにブンブンと手を振っていた。わあ、かわい。


俺と小石原は、最後の作戦会議をひそひそ交わした。

「じゃ、上手くやるんでせ旦那」

「もちろんだ。可愛い彼女連れてきて、小石原に自慢する」

「それ、ウチの親友なんだけどね?」


そうともいう。


小石原は俺と詩乃にまたねと手を振り、どこかへ立ち去った。2人きりにしようと気を回したのだろう。


俺と詩乃は揃って2人で校門を出て、歩き出した。

詩乃の持っていた楽器ケースを俺が預かると、ありがとうと詩乃はうふふと笑った。


「ごめんねぇ、丈くん。思ったより部活の終礼が長引いてね」

「全然。その間にゲームの周回捗ったよ」

「うふふ。ヨット育てるやつだよね」

「ヨットは俺育ててたらかわいすぎる。艦隊ね」


艦隊編成ゲームが、急にほのぼのしてしまった。

俺が育てあげた立派な艦隊が帆船になってた件。


ぽん、と両手を合わせた詩乃は、まるで名案が思いついたように隣の俺を見上げた。


「………あっ。そうだ。丈くん、今日お暇?」

「お暇だ」

「私のお部屋来ませんか?」

「行きます」


して、実に俺の幼馴染は、最高にして天然の小悪魔なのである。

高校生の男女にもかかわらず、未だに俺をらくらく家に上げるあたり、たまに俺は間違えそうになるがもちろん耐えている。俺の良識を誰か褒めて欲しい。俺じゃなかったら、この天然幼馴染はやられてる確実に。

それは確実に!


自然淘汰されるんじゃないかと心配になるぽわぽわ女子だが、俺以外にはきちんとしてるみたいなのでまあいいかと思う。



2人であれこれと話しながら、詩乃の家へと向かう。

ドアを開けると静かで、詩乃の両親は仕事で不在だった。

「2人っきりだね」と詩乃がこしょこしょと囁いてきたが、俺は煩悩を彼方へ飛ばすことに成功した。

恐ろしいことに、狙ってるとかではないのだこの発言。ただ事実を述べただけで深い意味のない発言なのだ。詩乃さん恐ろしい………


リビング希望だったのだが、無事に部屋へと案内され、アロマディフューザーのいい香りのする空間で2人きり。

詩乃にベッドに座ることを勧められ、俺は毎度のごとくやはりドギマギしながら、腰をそっと下ろした。落ちないギリギリの縁に腰掛けて、ベッドと接する表面積をミニマムにした。……なんか、がっつり座れないんだよ彼氏ではないしなまだ……


「ちょっと待っててね、丈くん」


準備がある、と詩乃は退室して、一階に降りていく足音がした。


小石原の話を総合するに、準備というのは恐らく、"素直になる薬(本当はただのサプリ)"を俺に飲ませるため……だと思うが。


どう来るのか、まったく予想がつかない。

粉状なら飲み物にでも何でも入れてしまえば相手に分からなくていいが、錠剤なら溶かすのは危険だし、直接飲ませるしかない。

どう来るんだ、詩乃は?


「お待たせ丈くん」


お盆を持って部屋に帰ってきた詩乃。

そのお盆には、コーヒーとココアのマグカップ、美味しそうなクッキーの大皿、それと……


小皿に盛られた白い錠剤。


………さてもう一度言おう。

小皿に白い錠剤がお菓子みたいに盛られてるぞ!


どうやって俺に飲ませるのかと思ったら、めちゃくちゃ直球で来たわ!


カタン、とテーブルの上にマグカップ2つと、クッキーの大皿、錠剤の小皿を置く詩乃。


「あのねぇ、丈くん。こちらは、お友達におすすめされたサプリなんだけど、是非丈くんに食べて欲しいと思って…!」

「お、おん」


お菓子でしか聞いたことのない説明の仕方だ!

お友達におすすめされたサプリをまさか皿に盛り付けておすすめされるとは、思わなんだ!


「一粒でいいの!一粒、食べて欲しい!」


詩乃は小皿を左右の手で持って、俺に迫った。常にぽわぽわしているこの幼馴染には珍しく、かなり熱がこもっていた。


詩乃は、コレを"素直になる薬"だと誤認している。それを熱心に俺に飲ませようとするなんて、詩乃はそんなにも俺に素直になって欲しいらしい。

お、おう。俺、そんな言われちゃあ、照れてしまうんだが。


しかし……そうだな、やはり俺が素直になって、この関係をきちんと明確にした上で進めるべきだろう。

いい加減、俺もカッコつけてないで素直になるべきなのだろう。そう、素直に。


"素直になる薬"のせいにしてしまえば、どれだけ変なことをうっかり口走ってしまっても、大丈夫だ!

正直それが怖くて、詩乃にドン引かれそうだったから、ずっと自分の気持ちを素直に口にしていなかった。

いや、イケる!薬のもと、素直になろう!


そして俺はこの幼馴染に俺の彼女になってもらいたい!

腹の底から付き合いたいんだ!


「じゃ、じゃあ、もらう……な」

「うんっ」


俺は"素直になる薬(普通のサプリ)"を一粒つまんで、口に運んだ。ごくっと喉を鳴らす。

詩乃はじぃ〜っと俺を見つめていた。俺の反応が気になって仕方ないようで、熱心に見つめてくる。


さあ、こっから俺素直になるの頑張るぞ!


「……どうかな、丈くん?何か変化とか……」

「………詩乃……」


俺が思いっきり熱を込めて呼ぶと、詩乃はぽわっと白皙の頬を赤く染めた。……イケる!


俺はサプリの小皿をテーブルに置かせて、代わりに詩乃の手を取った。細くてちっこい手が、俺の手のひらに乗る。それをやんわりと優しく握ると、詩乃はさらに顔を真っ赤にした。

びっくりしたように、ちょぼちょぼと彼女の口が動く。しかし、また閉口して、ことんと俯きがちになった。


ちらちらちら、と俺を見上げてくる詩乃。


可愛いな!イケるぞ、これ!


「………詩乃、好きだ」

「はう……ぅ……?」


詩乃の目がパチパチと動いた。言葉にされてないだけで俺の気持ちなど知っていただろうに、意外にも詩乃は驚いた反応をしていた。

俺は首を若干捻りつつ、特に気にせずに告白を続けた。素直になる薬を飲んだ身、好き放題俺は素直になるぞー!


「好きだ、うん好き。好きで、好きです。可愛い。駄目だ可愛すぎる。死にそう。世界で初めて幼馴染が愛おしすぎて死んだ人になりそうなレベルで好きなんだ!ちょっと天然で穏やかなところも一緒に居て楽しいし落ち着くし、周りのこと和ませたりできる癒し系なとこ、と、かーーーーーーー、………え?」


俺は言葉を止めた。


何故かというと、うちの幼馴染……泣いていた。

俺は目ん玉が飛び出しそうなほど、仰天した。


「ど、どうした?!」

「ひく……ひくっ、……うわーん、丈くーん、何でそんなこと言うの……ぉ」

「えっ!?」

「嬉しいけど、嬉しいのに、とっても嬉しいのに、素直に喜べないよー。今言っちゃ駄目だよぉ……」

「えええ!?ど、ど?どういうこと…!?」


俺が慌てていると、詩乃はうわーんうわーんとさらに泣く。詩乃はぽわぽわしているがその実軸がブレないので、メンタルが弱いタイプではない。だから、泣くのは珍しい。


俺が近くに置いてあったボックスティッシュから抜き取って顔を拭くが、詩乃はえーんえーんと涙が止まらない。嬉し泣きのほうではない。


ここまでされると、俺も心が痛んだ。


「………詩乃。悪かった。そんな泣くほど、俺の告白が嫌だなんて知らなかったんだ。むしろ詩乃は待ってくれてるとばかり……」


俺は、唇を噛んだ。

両想いだと思ってたのは……俺の勘違いだった、んだな。


詩乃はちーんと鼻をかんだ。

ふるふると首を振った。


「ふぇぇ、違うよぅ、私待ってたもん。丈くんからの告白、待ってた……丈くんの彼女になりたかった……」


ん?


「でも、丈くんは私のこと好きじゃなかったんだと思ったら、涙が止まらなく……」


んんん????


俺は目頭を押さえた。ふぇぇんと泣いてる幼馴染の背中をさすりながら、俺はショートしそうな思考回路を何とか回す。


「なあ、詩乃。何か致命的なすれ違いが起こってる気がするんだが……」

「ごめんね、丈くん……元はといえば、変な薬を飲ませて丈くんの気持ちを確かめようとした私のせい…丈くんの気持ちを試すようなことしてごめんなさい…こんな私が好かれないのは、必然だったよわーん」

「おーけい、詩乃さん。やっぱり何か致命的にすれ違ってる気がするな?」


ふえぇ?と涙目で首を傾げる詩乃。大変可愛く、写真におさめるかベッドに押し倒すかのどちらかやりたかったがなんとかこらえ、俺はまず話を整理しようとした。


「………詩乃、あの薬……確認だが、"素直になる薬"だよな?」

「ええっ」


詩乃は信じられないというように、目を丸くした。

ぶんぶんぶんと細い首がもげないか心配になるほど、左右に首を振る。


「違うよ!"惚れ薬"だよ!薬を飲んだ後、最初に見た相手を好きになるの!」

「え?」


ほ、惚れ薬?


「私、丈くんと両想いだと思ってたから……だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、私のこと元から好きだってことになるでしょ?でも、丈くんすごく態度が変わって私に告白してきたから、だから、全部惚れ薬のせいでっ、しかも私のこと本当は好きじゃなかったってことに〜!」

「はあ!?」


俺は目をひん剥いた。

何で泣かれたのかと思ってたら、前提から違ったのかよ!?


素直になる薬じゃなくて、惚れ薬だと思ってた!?


「ふぇーん、丈くん好きだよぉ。惚れ薬の効果が切れたら、私のこと好きじゃなくなっちゃうの……?やだぁ」

「いやいやいや、好きだから!ずっと好きですから!」

「うう。惚れ薬の効果がすごすぎて、にくたらしいです」

「惚れ薬じゃないって!アレはただのサプリだって!なんの変哲もないサプリだから!」

「へ?でも、芽衣ちゃんが惚れ薬だって……」

「小石原が変なこと吹き込んでただけだから!俺には"素直になる薬"って言って来た。だから、あたかも薬の効果で、俺は素直になってただけなんだ」

「…へ?」


詩乃は、不安そうに俺を見上げた。

本当に…?と疑いの残る眼差し。


ああ、くそ。

変な提案に乗っかって、薬のせいにして告白しようとしてたから、こんなややこしいことになってしまった。


薬のせいにはしない。

ちゃんと、自分の気持ちを、何の理由づけもしたりしないで、きちんと詩乃に伝えよう。


「詩乃。惚れ薬も、素直になる薬も、関係ないし必要ない。今から言うのは、俺の本心だけの純度百パーの想いだから、よく聞いてくれ」


俺は、もう一度詩乃の手を取った。両手で包みこむように握って、縋るようにそっと力を強めた。今度は届きますように。


もう詩乃の気持ちは聞いたようなものだけど、だからって自分を受け入れてもらえるか……その緊張から解放されそうにはなかった。


「………詩乃がほわほわ笑った顔見てると、いつも癒されるんだ。自然と、居るだけで周りを和ませてくれる素敵な存在。だからその分抜けてて心配になるけど、たまに発揮する謎のバイタリティが、見てておもしろい」

「丈くん……」

「でもやっぱり一番は可愛い。詩乃の隣に居たら、一生飽きないで楽しいなって思うんだ俺は」

「………っ、」


詩乃の顔が真っ赤に染まる。耳まで熟したりんごみたいだ。

彼女の瞳が潤む。


「詩乃のことが好きだ。俺の彼女になって欲しい」


静かに息を呑む音。

俺も全意識が、彼女へと向いていた。

微かな呼吸音とともに、彼女の桜色の唇は開く。


でも彼女が微笑んだから。

それで緊張は、解けたように思う。


彼女は、言う。


「……はい。私も丈くんのことが好きです。私を彼女にしてください」


そう言った彼女の顔が最上級に可愛すぎて。


やっぱり嬉しすぎて俺は恋で死んでしまうのではないかと、思った。



******


翌日。

小石原に付き合い始めた報告をしに行くと、小石原はパチパチパチパチ!!と拍手した。

ニヤニヤと笑顔を浮かべていた。


「おめでとう2人とも!ウチのおかげーーーー」

「「酷い目に遭った!!」」


詩乃は泣いてしまったし。

俺も一度はガチの失恋経験味わったし。


これなら最初からどちらにも同じ薬の説明をしとくべきだったと思うのですが?


「まあまあまあ。ウチの見立てだとどちらにも"素直になる薬"だって伝えたら、日坂くんが逃げに走るんじゃないかなーと思ったワケですよ!」

「……俺?」


まさか俺とは思わず、自分で指さして首を傾げる。

小石原は頷いた。


「そうそう。日坂くんって地味に重そうだからさ、その辺気にして、詩乃には隠しそうだったから。それならいっそすれ違い起こさせて、強制的に本心全部ぶちまけさせた方がいいと思って〜」

「間違ってなくはないけど」


多分、まあまあ重いという自覚はある。

詩乃に告白するのも、それで及び腰になってた部分はある。


「まあ、あとは単純に……おもしろそうだと思って!どうせ上手く行くだろうから、ちょっと途中を修羅場せてもいいかな〜って!恋って燃えさせた分だけ燃えるからさ!」

「「個人的動機じゃねぇか(じゃないの)!!」」

「まあまあまあまあ」


けらけら笑う小石原。

果たしてコイツをキューピットと位置付けるべきか、悪魔と呼ぶべきか。………後者かもな。


「………芽衣ちゃん」

「ん?」


ぽわぽわ〜とした笑みを浮かべている詩乃は、鞄からとある箱を取り出すと、それを小石原に差し出した。


「あのねっ、芽衣ちゃん。私美容に良い特別なチョコを最近見つけてね?丈くんとくっつけてくれたお礼にこれあげる!」

「え、いいん?嬉しい〜!」

「うんうん」


悪魔呼ばわりしようとした俺と違って、小石原にお礼のチョコまで買ってくるなんて詩乃は疑うことを知らないいい子だった。

俺が急に申し訳なくなってきた。やっぱり小石原は俺たちをくっつけてくれたキューピットと位置付けるべきなのだろうか。


「今食べていい〜?」

「うん、気をつけて食べてね」


小石原は箱の中に入ったトリュフチョコのようなものを一粒摘み上げた。それをあーんと口に放る。


「……あのね、丈くん。実はアレ罰ゲームで使われる超最強激辛キャロライナ死神チョコレートなの」

「ぶふっ!」


俺に耳打ちしてきた詩乃の言葉に、俺は思わず吹き出した。笑いそうな口元を押さえる。


「私ね、嘘つかれて泣かされちゃったからね?」


彼女は相変わらずほわほわした笑顔だったけど、さすが俺の好きな人なだけはあると思った。



そのわずか数秒後、小石原が悶え苦しんだ。






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