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追放された俺のスキル【回収係】、 同じく追放された悪役令嬢や騎士を拾ったら最強国家ができていた  作者: ピラビタ


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7/10

森に残る影

 辺境領に、重たい雲が垂れ込めていた。


 夕方になると、山から湿った風が吹き下ろし、草原をざわつかせる。

 古い館の二階、窓辺に立つレオン=アルヴェインは、同じ場所を見続けていた。


 森の縁。


 何も見えない。

 だが、数日前からずっと、そこに「誰か」がいる。


「……今日も、ですね」


 背後で、セレナが小さく息を吐いた。


「ええ」


 レオンは頷く。


「獣にしては静かすぎます。

 人にしては、慎重すぎる」


 部屋の壁にもたれていたガルドが、短く言った。


「訓練を受けてる動きだ」


 ガルドはそれ以上言わなかった。


 そのとき、レオンの視界に淡い文字が浮かぶ。


 回収可能対象:未確定

 距離:近

 状態:警戒


「……やっぱり来てる」


 レオンは外套を羽織った。


「一人で行くよ」


「危険よ」


「刺激したくないからね」


 ガルドが一歩前に出る。


「俺は距離を取ってつく」


「お願いします」


 セレナは、少しだけ不安そうにレオンを見た。


「無理はしないで」


「はい」



 森の縁は、昼間よりもずっと暗かった。


 木々が光を遮り、地面は湿っている。

 足音を立てれば、すぐに分かる場所だ。


 それでも、誰かが歩いた痕跡はある。


(……慣れてる)


 レオンは剣に手を伸ばさず、声を出した。


「出てきてください」


 返事はない。


「追い出しません」


 間を置いて、続ける。


「捕まえもしない」


 空気が、わずかに動いた。


 藪の奥。

 枝の影が揺れ、人影が現れる。


 少女だった。


 年の頃は、十四、五くらい。

 痩せてはいるが、子供というより、まだ成長しきっていない少女だ。

 外套は古く、靴も擦り切れている。


 だが、立ち方はしっかりしていた。


「……ここから、離れない」


 低く、警戒を隠さない声。


「理由を、聞いても?」


「言わない」


 即答だった。


 レオンは一歩も近づかず、その場に立つ。


「ここは、もう捨てられた土地です」


 少女の目が、わずかに細くなる。


「だから、誰のものでもない」


「……違う」


「?」


「ここは、私が生き残った場所」


 言葉は短いが、重かった。


 レオンは膝をつき、目線を合わせた。


「名前は?」


「……聞かないで」


「分かりました」


 少女は、少しだけ目を見開く。


「……普通、聞く」


「無理に知る必要はないから」


 沈黙。


 少女は、視線を逸らしながら言った。


「……あんた、変」


「よく言われます」


 一瞬、口元が動いた。

 笑いかけたのか、それとも癖か。


 分からない。


 レオンは、静かに続けた。


「ここにいていい。

 ただし、危険がある時は知らせてほしい」


「……命令?」


「お願い、ですよ」


 少女は、しばらく考えてから言った。


「……考える」


 その瞬間、レオンの視界に文字が浮かぶ。


 回収可能対象:仮認識

 年齢:推定十四

 条件:信頼

 未達成


(……やっぱり)


「今日は、これで終わりにします」


 少女は、数歩後ずさる。


「……また来る?」


「ええ」


「……なら」


 一瞬、言葉に詰まってから、少女は言った。


「……夜は、来ないで」


「分かりました」


 彼女は、それだけ言い残し、森の闇に消えた。



 館に戻ると、セレナがすぐに聞いてきた。


「どうだった?」


「まだ幼さの残る少女です」


「……一人で?」


「ええ」


 ガルドが低く唸る。


「生き方を知ってる目だった」


「はい」


 レオンは、窓の外を見る。


 森は静かだ。


「焦る必要はありません」


 彼は、静かに言った。


「信頼は、時間をかけて回収します」


 捨てられた土地に、

 居場所を失った少女がいる。

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