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追放された俺のスキル【回収係】、 同じく追放された悪役令嬢や騎士を拾ったら最強国家ができていた  作者: ピラビタ


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5/10

拾われた者は静かに根をおろす

 男の名は、ガルドと名乗った。


 元王国騎士団所属。

 階級は中位。

 だが、派閥争いに巻き込まれ、切り捨てられたらしい。


 それ以上のことは、自分から語らなかった。


 館の前庭で、ガルドは黙々と柵の補修をしていた。

 古くなった木材を確かめ、使えるものと使えないものを無言で分けていく。その手つきには、長年の経験が滲んでいる。


 俺――レオン=アルヴェインは、少し離れた場所からその様子を見ていた。


 必要以上に指示を出すつもりはない。

 彼は、何をすべきかを理解している。


「……静かな人ね」


 背後から、セレナの声がした。


「ええ」


「でも、無駄がない」


 それだけ言って、彼女も作業に戻る。

 この領地では、それが自然だった。


 昼過ぎ。

 ガルドは村の外れまで見回りに出た。


 人の気配が少ない辺境では、音の違和感がよく分かる。

 草を踏む音、風向き、獣の足跡。

 彼は一つ一つを確認しながら、黙って歩いていく。


 戻ってきた彼は、簡潔に報告した。


「……異常なし」


「分かりました」


 それで会話は終わる。

 だが、その一言があるだけで、領地の空気は変わる。


 守られている、という実感。

 それは数字や制度では代替できない。


 館の中では、セレナが帳簿と向き合っていた。

 午後の光が差し込み、紙の上の文字を浮かび上がらせる。


「この領地、やっぱりおかしいわ」


「税の件ですか」


「ええ。それだけじゃない」


 彼女は帳簿を閉じ、静かに続ける。


「人が減った理由も、はっきりしてる。

 働いても、守られない。

 奪われるだけの土地だった」


 視線が、窓の外に向かう。

 ちょうど、ガルドが村人と短く言葉を交わしているところだった。


 必要なことだけを伝え、余計なことは言わない。

 だが、その態度に、村人は安心しているように見えた。


「……変わり始めてるわね」


「少しずつ、ですが」


 俺がそう答えると、セレナは小さく頷いた。


 夕方近く、ガルドが再び報告に来た。


「森の外で、人を見た」


「数は」


「二、三。遠い」


 短い言葉。

 だが、十分だった。


「様子見でしょうか」


「……多分」


 それ以上は言わない。

 俺も、深くは聞かなかった。


 不要と判断された土地に、誰かが目を向け始めた。

 それだけで、状況は理解できる。


 夜。

 館の外は静まり返り、空には星が浮かんでいた。


 焚き火のそばで、ガルドは剣の手入れをしている。

 無言のまま、刃の欠けを確かめ、布で拭う。


 そこには、誇示も未練もない。

 ただ、役目を果たすための道具があるだけだ。


 その様子を見ながら、俺は思う。


 捨てられた者は、声高に何かを主張しない。

 ただ、必要な場所があれば、そこに留まる。


 胸の奥で、スキルが静かに反応した。


 領地評価が、わずかに上がる。

 理由は明確だった。


 人が定着し始めている。


 この辺境は、まだ何者でもない。

 だが、確かに変わりつつある。


 ガルドは何も言わない。

 それでも、その背中が、この領地の一部になっていることは分かった。


 回収とは、拾うことではない。

 居場所を、失わないようにすることだ。


 その意味を、俺は少しずつ理解し始めていた。

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