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追放された俺のスキル【回収係】、 同じく追放された悪役令嬢や騎士を拾ったら最強国家ができていた  作者: ピラビタ


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4/10

回収係の仕事は静かに増えていく

 辺境領での生活は、想像以上に忙しかった。


 人が少ない分、やるべきことは山ほどある。

 畑の整備、倉庫の確認、村人との最低限の顔合わせ。


 俺――レオン=アルヴェインは、館の簡素な机で書類に目を通していた。


「……この数字、やっぱり変ね」


 向かいに座るセレナ=ヴァルディエが、指先で帳簿を叩く。


「収穫量と税額が噛み合ってない。

 “取れていない”んじゃなくて、“抜かれてる”」


「王都側、ですか」


「おそらく。辺境だから、誰も確認しなかったのね」


 彼女の口調は淡々としている。

 怒りも、恨みも、そこにはない。


 ただ“正しくないもの”を、正しているだけだ。


「直せそうですか」


「ええ。時間はかかるけど、不可能じゃない」


 そう言ってから、セレナはふっと視線を上げた。


「……普通、こういうことを任せると、

 “女に何が分かる”って言われるのだけど」


「ここでは、言いません」


「知ってるわ」


 短い会話。

 だが、この領地では、それで十分だった。


 そのとき。


 胸の奥が、かすかに引かれる感覚があった。


 ――【回収可能対象:感知】

 ――対象:人物

 ――状態:不要判定/未回収


「……またですか」


 俺は小さく息を吐いた。


「何かあった?」


「ええ。少し、外に出ます」


 館の外。

 村は相変わらず静かで、人影もまばらだ。


 だが、その外れ。

 壊れかけの柵のそばに、見慣れない影があった。


 男だ。

 年の頃は三十前後。

 剣を腰に下げているが、鞘は擦り切れている。


「……誰だ」


 警戒した声。


「通りすがりです」


「この辺りに用はないはずだ」


 正しい。

 この領地は、誰からも見向きされない。


「あなたは?」


 問い返すと、男は一瞬だけ黙った。


「……元、騎士だ」


 その瞬間、スキルが静かに答えを出す。


 ――【対象評価】

 ――元王国騎士団所属

 ――不要判定理由:派閥抗争による排除

 ――能力:戦闘・訓練指導


(なるほど)


 派手さはない。

 だが、“要る場所では要る人材”だ。


「仕事を探しているなら、提案があります」


「……何だ」


「ここで働きませんか」


 男は、目を細めた。


「冗談だろう。

 こんな辺境で、何ができる」


「領地の警備と、将来的には訓練教官を」


「将来的、だと?」


「ええ。すぐに人は増えませんから」


 正直に言う。

 嘘をつく必要はない。


 男は、しばらく俺を見つめていた。


「……名前は?」


「レオン=アルヴェインです」


「貴族か」


「追放済みの、です」


 沈黙。

 やがて、男は小さく笑った。


「……面白い」


 その一言で、十分だった。


 ――【回収完了:人材】

 ――効果:領地防衛補正(小)


 館に戻ると、セレナが待っていた。


「外、何かあった?」


「ええ。人を一人」


「……また?」


「仕事ですから」


 セレナは、呆れたように肩をすくめる。


「回収係って、本当に節操がないのね」


「褒め言葉として受け取ります」


 彼女は一瞬だけ笑い、

 すぐに真顔に戻った。


「でも……悪くないわ」


 その言葉に、俺は何も返さなかった。


 この領地には、まだ何もない。

 だが。


 捨てられた人材が、少しずつ集まり始めている。


 ――次に回収されるのは、

 “土地”か、“組織”か。


 静かに。

 確実に。


 俺の仕事は、増えていく。

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