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追放された俺のスキル【回収係】、 同じく追放された悪役令嬢や騎士を拾ったら最強国家ができていた  作者: ピラビタ


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2/10

最初の回収対象は、悪役令嬢だった

 辺境の領地に着いて三日目。

 俺――レオン=アルヴェインは、まだ何一つ始められていなかった。


 理由は単純だ。


「……何も、ないな」


 本当に、何もない。


 荒れた草地。

 使われなくなった倉庫。

 人の気配がほとんどしない寒村。


 護衛として付いてきた老兵のハインツが、申し訳なさそうに言う。


「ここは“不要地”として、長年放置されておりまして……」


「不要、ですか」


「はい。税も取れず、魔物も多く……誰も欲しがらなかった土地です」


 ――なるほど。

 確かに【回収係】向きだ。


「でも、静かでいい」


「……お優しいのですね」


 そう言われて、俺は首を傾げた。


「優しい、ですか?」


「追放されて、怒りも嘆きも見せず……」


「怒っても、何も変わりませんから」


 それに、と心の中で付け加える。


(もう、俺の仕事は始まってる)


 その瞬間だった。


 視界の端に、淡い光が走る。


 ――【回収可能対象:確認】

 ――対象:人物

 ――評価:不要判定

 ――場所:王都・第三貴族学院


「……来たな」


 俺は、思わず声に出していた。


「レオン様?」


「王都に戻ります。今すぐ」


「え!? い、今ですか!?」


 ハインツの慌てた声を背に、俺は馬を走らせた。



 王都、第三貴族学院。

 ちょうどその日は、公開裁定の日だった。


 学院の中庭には、人だかりができている。

 その中心で、ひとりの少女が立たされていた。


 金色の巻き髪。

 高価なドレス――だが、どこか古い。


「――悪役令嬢、セレナ=ヴァルディエ。

 あなたは度重なる悪行により、婚約破棄、そして追放とする」


 宣告の声が響く。


 セレナは、微動だにしなかった。


 唇を噛みしめ、拳を握りしめながらも、

 ただ、真っ直ぐ前を見据えている。


(……強いな)


 周囲の囁きが、容赦なく飛び交う。


「ざまぁみろだ」

「所詮、性格の悪さが顔に出てた」

「平民落ちだな」


 俺は、群衆をかき分けて前に出た。


「――少し、よろしいですか」


 その声に、視線が一斉に集まる。


「誰だ?」


「貴族か?」


 裁定官が眉をひそめる。


「この場は私的介入を――」


「セレナ=ヴァルディエ令嬢を、

 私が引き取ります」


 一瞬、空気が止まった。


「……は?」


 セレナが、初めて俺を見た。


「……あなた、誰?」


「レオン=アルヴェインです。元伯爵家三男」


「“元”……?」


「はい。追放済みです」


 ざわ、と笑いが起きる。


「同類かよ」

「負け組同士ってわけだ」


 だが、俺は続けた。


「彼女は“不要”と判断された。

 ならば、【回収係】の仕事です」


「回収係……?」


 裁定官が怪訝な顔をする。


「前例がありませんが……」


「問題が?」


 しばしの沈黙。

 やがて、裁定官は肩をすくめた。


「……構わん。

 どうせ、彼女の行き先はなかった」


 そう言われた瞬間、

 セレナの表情が、ほんのわずかに歪んだ。


「……どうして?」


 低い声で、彼女が言った。


「あなたに、何の得があるの?」


「得?」


 俺は少し考えた。


「まだ、分かりません」


「……正気?」


「たぶん」


 それでも、と俺は言葉を重ねる。


「捨てられたからといって、

 価値がないとは思えなかった」


 セレナは、俺を睨んだまま黙り込む。


 やがて、ふっと力を抜いた。


「……後悔するわよ」


「かもしれません」


「私、悪役令嬢なんだから」


「知ってます」


「それでも?」


「それでもです」


 沈黙の後、

 彼女は小さく笑った。


「……変な人」


「よく言われます」


 こうして、俺は最初の回収を終えた。


 ――悪役令嬢、セレナ=ヴァルディエ。


 まだ誰も知らない。

 この少女が、

 後に“国家の柱”と呼ばれることになるなんて。

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