回収係(レオン)は捨てられる
――レオン=アルヴェイン。
それが俺の名前だ。
アルヴェイン伯爵家三男。
長男は剣の天才、次男は魔法の申し子。
そして俺は――何の期待もされていない、余り物。
その事実が、今日ではっきり形になった。
「レオン。結果を見た。……話にならん」
父、アルヴェイン伯爵は、鑑定書から目を離さずに言った。
その声には怒りすらなく、ただ“処理”の響きだけがある。
「スキル名は――【回収係】?」
母は困惑したように俺を見る。
兄たちは、興味なさそうに視線を逸らした。
「……はい。神殿の神官からも、そう説明されました」
俺がそう答えると、父は鼻で笑った。
「回収係だと?
不要と判断された人材や物を引き取る……要はゴミ拾いだな」
「ち、父上……」
「貴族のスキルではない」
ぴしゃり、と空気が切り替わる音がした。
「本日をもって、お前を廃嫡とする。
名も、財も、後ろ盾も与えん。明日には屋敷を出ろ」
その言葉を聞いた瞬間、
胸に来るはずの衝撃は――なぜか、なかった。
(……ああ、やっぱり)
納得の方が先に来たのだ。
「異議はあるか?」
父が形式的にそう聞く。
母は何か言いたそうだったが、結局口を閉ざした。
俺は少し考えてから、口を開いた。
「一つだけ、確認してもいいですか?」
「何だ」
「【回収係】は、“不要と判断されたもの”を引き取れる。
それだけで、間違いありませんね?」
「そうだが、それがどうした」
俺は、思わず笑ってしまった。
「いえ。十分です」
「……何?」
「不要だと切り捨てられた人も、土地も、物も。
全部、俺のところに来るってことでしょう?」
兄の一人が、呆れたように言った。
「現実が見えてないな。
そんなもの、誰も欲しがらない」
「そうかもしれません」
でも、と俺は続ける。
「“今の価値観で”いらないだけですよね」
その言葉に、誰も返さなかった。
翌日。
俺は小さな荷物だけを持って、屋敷を出た。
行き先は、辺境。
地図の端にある、誰も欲しがらなかった土地。
護衛の兵が、気まずそうに言う。
「……本当に、よろしいのですか?」
「ええ。むしろ、楽しみです」
「楽しみ?」
「はい」
馬車に揺られながら、俺は空を見上げた。
(捨てられた悪役令嬢。
失敗作と呼ばれた英雄。
価値ゼロ判定の土地……)
それ全部、俺が“回収”できる。
「悪くないスタートだ」
そう呟いた俺のスキルが、静かに反応した。
――【回収可能対象:未確定】
――最初の候補が、すでに存在します。
その表示を見て、俺は確信した。
この追放は、終わりじゃない。
始まりだ。
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