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第9話 移民資格を得ました! +3000pt

 コーラルベアーの、気になる貢献ポイントは……?


「う、う、ウワーッ!! 甲殻部分が完品のコーラルベアーを、移民希望者が狩猟した!? 前代未聞過ぎる!! ちょっとまっててくれ!」


 検品担当の男が、仲間を引き連れてやってきた。

 全員で、コーラルベアーをチェックしている。


「凄い。心臓を一突きだ」


「このネチョッとしたものはマイナスだな」


「あ、いや、これ剥がれるぞ。いきなり粘度が無くなった」


 トリモチ、時間制限付きだったか。

 お陰で毛皮も高く買い取ってもらえそうだ。


 やがて、最終算定結果が出たようだ。


「ポイント、高く稼げているといいですね」


「ほんとにね! 苦労したからね、主に運ぶのを」


 マキナとお喋りしていたら、検品担当の人がやってきて咳払いした。


「えー、二人の素晴らしい狩猟により、我が国は美品のコーラルベアーを手に入れた。知っての通り、コーラルベアーの甲殻は美品であるほど、高値で取引される。ちょうど先日、国内のザーマルスキー伯爵からコーラルベアーの美品甲殻の依頼が出ていたところだ。君たちの狩猟はザーマルスキー伯爵の依頼も達成したものとして、貢献ポイントに加算され……」


 なんか言っているが、つまり結論は。


「2000ポイントの貢献ポイント相当とする! 二人ともおめでとう! 君たちは移民資格を得た!」


 つまり!

 たまたま、コーラルベアーの甲殻のレートが跳ね上がっていた瞬間に俺達は狩猟を成功させ、クライアントがピンポイントで欲しかったものを最高品質で用意できてしまったらしい。


「な、なんだってーっ!! まだ二日目なのに!」


「やった! やりましたよーミアン! 私達、ケスタイン王国に入れます!」


「むぎゅう」


 興奮したマキナに抱きしめられて、ぐるぐる振り回されてしまった。

 む、胸に顔が埋まって呼吸が~!!

 いやあ、こう言う形で走馬灯が見えてくるのは、なかなかいいもんですねえ……。


「きゃっ! ミアンがぐったりしてしまいました!」


「お、おい! 移民資格を得て早々死ぬのはやめてくれよ!?」


 こうして、俺とマキナは晴れて国内へ!

 いやあ、入国するだけで本当に大変だあ。


◎現在のポイント:4206pt

 貢献ポイント :255ポイント(1000ポイントは入国のために使用)


 さらにさらに……。


『ウグワーッ! 移民資格を得ました! 実績・新たな世界へを解除! 3000pt獲得!』


 3000!?

 いきなり数字おかしくない!?

 い、いや。

 これはつまり、今までで最大級の一歩だったということになるのだろう。


 それくらい、移民資格を得たことは俺の人生を変えるというわけだ。

 ポイ活、人生を切り開く!


「ここは貢献ポイントを大いに使って祝勝会をしようと思うんだ」


「祝勝会……? それはなんですか?」


 きょとんとするマキナ。


「ええと……例えば凄い狩りが成功したお祝いみたいな……」


「ああ、それならば分かります! 我が一族で亜竜のアンキロドノスを狩った時、お祭りになりましたから。私もあの鎧竜の首に一撃喰らわせたんですよ!」


 祝勝会が克明にイメージできたようで、マキナの鼻息が荒くなった。

 いいなあー、お祭りの思い出!

 俺は幼少期に親に連れて行かれた以降は全く無いぞ!


 い、いや、これから思い出を作っていくのだ。

 ポイ活によって、俺の人生は切り開かれる!


「そういうことで、料理と飲物を取り寄せて、二人でお祝いしよう。明日には国内に入れるんだし」


「いいですね! そうしましょう! お料理は……ミアンがいつもの不思議な力で取り寄せるのですか?」


「力と言うか、アプリと言うか……。チャットボット、パーティ用のメニューを出してくれ」


『そうおっしゃると思ってピックアップ済みです! バスケットにミッチミチに詰まったフライドチキンとフライドポテト! ハチミツソースとバターたっぷりのパンケーキ! そしてバケツコーラです!』


「やけに思想を感じるパーティセットだな……!! まあいいや。それを取り出してくれ! あとは今日は他の移民希望者にもご馳走するんで、たくさん出して!」


『具体的には?』


「300pt分くらい」


『かしこまりました。ただいま、フードデリバリーサービスが出発致しました!』


 早い!

 そして一呼吸入れた直後に、背後に膨大な熱量が出現した。

 揚げたてのフライドチキンとフライドポテト、焼き立てのパンケーキが放つ熱である!!


「あああ~っ! ミアン! とっても……とっても美味しそうな匂いがします! わた、私、お腹が鳴ってしまいます……」


 ぐぅ~っと音を立てるマキナのお腹なのだった。


「よし、食べよう食べよう! おーい、みんなにも振る舞うから食べてくれ!」


 そろそろ、採集を行っている移民希望者たちが戻って来る頃合いだ。

 彼らにも、フライドチキンとフライドポテトを振る舞った。


「美味しい! 美味しい~!! 油で鳥を揚げているのですね? でも、鳥がとっても美味しい……。今朝も食べましたが、この細切りの芋を揚げたものも本当に美味しいです! いくらでも食べられてしまいそう! こ、この飲み物は……!? エールのように泡立っているのですか? きゃっ! エールよりも刺激的て……あまーい!!」


 マキナの感想が楽しい。

 移民希望者たちもワイワイ集まってきて、料理を口にしては目を丸くしている。


「うっま!!」


「なんだこの料理!? 揚げ物がこんなに美味いのか!?」


「なんでこんな凄い料理を俺達に振る舞うんだ!?」


 彼らに、「俺達は貢献ポイントを貯め終わったから、明日から移民として国に入るんだ。その祝いのお裾分けなんだ」と説明する。


『ウグワーッ! 上手に説明できました! 実績・コミュニケーションの第二歩目解除! 500ptゲットです!』


 料理を振る舞ったらポイントが増えてしまったぞ!

 フライドチキンもポテトもパンケーキもコーラも、さほどポイントが高くはないのだ。


「な、なんだよこれ……!」


「俺等も食っていいってのか!?」


 おや?

 彼らは朝、俺とマキナに絡んできた移民希望者たちだ。

 一人減ってる。

 色々察してしまうな。


「食べてくれ。とりあえずお腹いっぱいになるのは悪いことじゃないからさ」


「お、おう……」


「なんか悪いな……」


 しおらしくなってる。

 何も言わんとこう。


「ミアン。あなたはケスタイン王国で、何をやりたいのですか?」


「あ、俺? 俺は、そうだなあ……。特にこれがやりたいっていうのは無いんだけど、街中の方がたくさんの人と関わりそうだし、色々起こりそうだからポイントが稼げそうだし……」


 振り返ってみたら、ポイ活以外にやりたいことが何もない!!


「マキナはどうなんだ?」


「私は、人の街を見てみたいのです。人竜族の中で何不自由無い暮らしをしてきましたが、この狭い世界の中で生きて、そして死ぬだけでいいのか……分からなくなったんです。私達の土地に人間の難民がやって来て、教えてくれたんです。人間社会がいかに複雑か、楽しいこと、苦しいこと、怖いこと。そして世界はとてもとても広いと聞きました」


「なるほどー。偉いなあ」


「いいえいいえ! 私なんてあまりにも物知らずでした! ミアンに助けてもらわなければ、死んでいましたから! だからミアン。お願いがあるのです」


「あっはい、なんでしょう!」


 真剣な眼差しのマキナに、思わず敬語になってしまう!


「これからも私と一緒に、旅をしてくれませんか? 私、ミアンなしではあっという間にダメになってしまう気がするんです!」


 おおーっ!!

 それって、俺が頼られているってことだろうか!?

 こ、これは嬉しい……。

 ポイントが増えるくらい嬉しい!


「ダメ……でしょうか」


 俺より大柄なマキナが、俺の手を握って上目遣いで!


「ダメじゃないので、一緒に旅をします」


「……! 本当ですか!? や、やったー! ありがとう! ありがとうございますミアン!」


 料理を飛び越えて抱きついてきそうだったので、俺は「ウワーッ!」と後転して逃げた。

 柔らかくていい匂いで気持ちいいが、窒息死してしまう~!


 そんな俺達の様子を見て、周囲の人々がドッと笑うのだった。


『ウグワーッ! 料理をふるまいました! 実績・パーティのホスト経験解除! 1000pt獲得!』


『ウグワーッ! 誰かの心の支えになりました! 実績・人という字は支え合って(以下略)解除! 2500pt獲得!』


◎現在のポイント:7906pt

 貢献ポイント :255ポイント

お読みいただきありがとうございます。

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マキナさん、ドラゴンに一撃入れるとか実は滅茶苦茶ツワモノな予感(今更)
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