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第8話 初めての狩猟をしました! +1000pt

 さっき絡んできていた移民希望者たち、マキナがショット薙刀を振り回した瞬間にみんな腰が引けている。

 機械仕掛けの重い武器を、軽々と扱うのを見たら怖いもんなあ。


 俺も今の今まで、人竜族はツノと尻尾が生えたちょっと体の大きな女の子というイメージだったんだけど……。

 ショット薙刀を持たせてもらったら、


「うっわ! 重!!」


「よほど鍛えていないと、人間には扱いきれませんねこれは。私にはちょうどいいくらいです。重い割に刃の部分が少ないですし、仕掛けのせいで取り回しづらくなっていますが……森の中で使うと考えれば、これくらいで十分でしょう。さあ行きましょう、ミアン!」


「よし、行こう行こう」


 俺は後ろからついていくことになる。

 うーん、ウキウキとした様子で、尻尾をぶんぶん振っているマキナ。

 頼もしいし可愛くもある。


「よし、The・探索の新しい機能を解放だ。狩猟対象探索!」


『新機能のダウンロードを開始します。ちなみにこれは狩猟という行動をサポートする機能です。討伐などは別のダウンロードコンテンツをご利用下さい』


 なるほどなるほど。


 というわけで、500pt使ってしまった。

 ポイントの貯めどころも多いが、使い所はそれこそ無限にあるな……!

 貪欲にポイントを狙っていかねば。


『インストールを終了しました』


「よーし! では起動! マキナ、狩猟の対象になる動物はこっちで探せるから」


「本当ですか!? 頼りになります、ミアン! 狩猟の大半は、標的を探すことに費やされるんですよ。それが簡単になるだけで、成果は大いに上がりますよ!」


「そうなんだ……。おっ! そこの木の影! 鹿がいる……。バイオレットディアー……?」


「この辺りでは一般的な鹿ですね。毛並みが綺麗なバイオレットなんです。さて……」


 そろり、そろりと目標である木の周りを歩くマキナ。

 あ、バイオレットディアーの顔が見えた。


 距離を取ってこちらを伺っている。

 相対距離は15mくらいかな?


「早速試してみましょう。ショット薙刀、射出……!」


 マキナが武器を突き出した。

 すると、その切っ先が猛烈な勢いで飛び出す!

 空気を切り裂く音が響き、鹿が驚いて逃げようとするその背中に……刃が深々と突き刺さった!


 鹿が動こうとしても、刃と薙刀を結ぶワイヤーが木に引っかかり、自由にはさせない。


「せいっ!!」


 力を込めて薙刀を引っ張るマキナ。

 鹿が転倒した。

 マキナは駆け寄ると、薙刀の刃を巻き戻し……。


「ふんっ!」


 鹿の首を切り裂いてとどめを刺したのだった。

 うおーっ!

 こ、これが狩りかあ。


『ウグワーッ! 初めての狩猟をしました! 実績・初めての狩り解除! 1000pt獲得!』


 だが、マキナの顔は残念そうだった。


「やってしまいました……。毛皮の背中側に大きな切れ込みが入ってしまっています。これでは貢献ポイントが安くなってしまいます」


「そうなんだ!? 難しいなあ……」


「逃走しようとする草食動物は難しいですね。向かってきてくれれば楽なのですが。もちろん、ミアンが取り出してくれた武器があるおかげですよ! これがあると気が大きくなります!」


「なるほど、じゃあ次は向かってくる動物を探そう! その前に、バイオレットディアーを納品……」


 一頭で、貢献ポイントは200ポイントだった!

 傷がついた毛皮でこれは凄いぞ。

 恐ろしく動きが早く、力も強い鹿ということで、単独で狩ることは困難な動物らしい。


 腕利きのハンターだったら話は別だが、それでも狩ればバイオレットディアーの毛皮と肉、骨から得られる収入で二ヶ月は遊んで暮らせるとか。

 その割に安い貢献ポイントで、移民希望者は買い叩かれているのを感じる~!


 それでも採集とは比べ物にならないポイント効率だ。

 これは、他の獲物も期待できるんじゃないだろうか!?


「あっ! さっきバイオレットディアーを狩ったところにまた動物が!」


「血のニオイを嗅ぎつけて来ましたね。何が来たか分かりますか?」


「コーラルベアーって書いてあるけど。ええと? 磨かれたサンゴのようなきらびやかな装甲に身を包む熊で、雑食性。この森の生態系の頂点……、だって」


「狙いましょう!」


「ええーっ!? いけるのか!? 一瞬ならバイオレットディアーに追いつく加速能力と、甲殻は生半可な刃物を弾く硬度ってあるけど!」


「ショット薙刀があればいい勝負はできると思います。あとは、ミアンが何かサポートしてくれませんか?」


「俺が!? 生涯を通じて荒事の経験が無い俺が……!? い、いや、これは一歩踏み出すチャンスだろう。何かできるものを探すよ。チャットボット!」


『何か御用でしょうか?』


「戦闘経験の無い俺でも狩りを手助けできそうなアイテム!」


『とてもいいオーダーですね! でしたら、狙いやすく、遠距離から攻撃できて、外してもリスクが少ないものがいいでしょう。ずらりと並べますのはこちらで……』


「予算に糸目はつけない! というけど、今の手持ちは3300くらいなんでそれ以内で頼む……」


 どんどん減るぞ、ポイント!!

 稼がせてくれえ!

 ポイ活趣味の人間としては、減っていくだけのポイントは心臓に悪いんだ!


『ご予算内でのラインナップはこちらです』


「どれも銃タイプ……。トリモチランチャー? 音波砲、それにテーザーガンか……。テーザーガンは一つで3000!! トリモチランチャーは使い捨てで500、音波砲は1500かあ……。ええい、ままよ! トリモチランチャー二つと、音波砲一つ!!」


『お買い上げありがとうございます!』


『ウグワーッ! お買い物サービスで使用したポイントが5000を超えました! 実績・お買い物初心者解除! 500pt獲得!』


 トリモチランチャー分が戻ってきたな……。

 そして俺達は、さっき狩猟した場所まで戻って来る。


 そこには、ギラギラと輝く甲殻を背負った、大きな熊がいた。

 そいつは俺達を視認するや否や、立ち上がって大きく咆哮した!


 木陰から飛び出した巨影が、加速する!

 はっや!!


 俺一人なら一瞬で捻り潰されていたと思う。

 だが、ショット薙刀を構えたマキナが、コーラルベアーの突進を受け止める!


「ぐぬぬぬぬ! なかなかのパワーです! ですが私は、ミアンのお陰でお腹も満足! 力だって出るんですよ! おらーっ!!」


 コーラルベアーを押し戻すマキナ!

 すごいパワーだ!

 地竜の力を持つ人竜族だって言ってたもんな。


 コーラルベアーはぐおおおおー!と叫びながら、爪を振り回そうとする!


 俺はそこに駆け寄って……。


「おりゃあーっ! トリモチランチャーッ!!」


 バシュッとぶっ放す、トリモチのバズーカ!

 猛烈にネバネバする大きな弾体が、コーラルベアーに張り付いた。


 怯む熊!

 慌てて場を離れようとするが、トリモチが周囲の木々や地面にへばりつき、コーラルベアーの移動を許さない。

 その間に距離を取るマキナ!


 コーラルベアーがこっちに注意を向けたところで、俺はさらに音波砲を取り出している!


「おりゃーっ! 音波砲!! うおわーっ!」


 これはつまり、音を収束させてぶつける、超強力なメガホンみたいなものだ。

 俺の叫び声が増幅、収束され、コーラルベアーに叩きつけられた。


 ムギャオーッ!と怯むコーラルベアー。

 あまりのうるささで、平衡感覚を失ったらしい。

 フラフラしている。


 ここにダメ押しのトリモチを……。


「あとは私がいけます!!」


 駆け寄ってくるマキナ!

 コーラルベアーの脇の下に薙刀を突きこみ、刃を射出した!

 熊が暴れる!

 その腕を受け止めるマキナ。


 熊とやりあえるとかすごいパワーだ!

 やがてコーラルベアーの動きが鈍くなり、ばったりと倒れて動かなくなったのだった。


「やったか!?」


 俺が近づこうとしたら、マキナに制止された。


「ゆっくりと百数えて下さい。それでも動かなければ大丈夫ですから」


「わ、分かった!」


『ウグワーッ!! 森の頂点捕食者を狩猟しました! 実績・狩猟上手を解除! 2000pt獲得!』


「数えなくていいっぽいぞ!? チャットボットが安全を知らせてきた!」


「便利ですねえ……!」


 感心するマキナ。

 そして得たポイントも大きいぞ。

 武器を購入した時に消費した分が、全部戻ってきたじゃないか。


 あとは、この大物を運んで貢献ポイントに変えるだけ。


「……持ち帰るのはちょっと大変ですね……。ミアン、手伝って下さい」


「非力な俺が力になれるかなあ!」


 持ち帰りは本当に大変だったのだった!


◎現在のポイント:4006pt

 貢献ポイント :255ポイント(果たしてコーラルベアーのポイントは……?)

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ポイントシステムのおかげか、マキナさんに影響されてかミアンさんだいぶ積極的になっているご様子。 そしてマキナさんから見て滅茶苦茶甲斐性あるように見えてるなぁw
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