第46話 自ら踏み出すことを決意しました! +5000pt
一見すると、真っ白なお屋敷。
移民の職人たちが何人かいて、家の壁をピカピカに磨き上げている。
「建設されてから千年が経つ建物だが、常に磨き上げて白いままだ。ザーマルスキー伯爵のこだわりというやつだな。清掃だけで、一体どれだけの貢献ポイントが動いていることか……」
「へえー、綺麗好きなんだなあ」
「庭に植えられた木々も、とってもよく手入れされてます!」
ブロック状のお屋敷は、一見すると土と日干しレンガで組み立てられた中東の家だ。
だが、近寄ってみると分かる。
すべての面が一枚の板で作られている。
「普通の建材じゃないよね」
『いい気付きですね! 自己再生型セラミックによる一体構造の建築物です。表面は日干しレンガよりも柔らかいのですが、その分だけ衝撃を吸収し、傷は再生します!』
「SFだあ」
扉が開く。
『ミアン様。マキナ様。お待ちしておりました』
執事らしき人が出迎えてくれた。
人……?
礼服の下からは、生身が一箇所も露出していない。
顔を覆い尽くす仮面。
手には白い手袋。
『御主人様がお待ちです。こちらへどうぞ。騎士デリア、案内に感謝を。こちらは礼の貢献ポイントです』
執事が、デリアの手首のバンドに触れる。
「おっほ! ……ごほん。いえ、騎士としての役目を果たしたまでです。私はこれで。また何かあればいつでも呼んで下さい」
あれは相当貢献ポイントをもらったな?
爽やかに去っていくデリア。
『ポピー?』
「まあ現金な人だからなあ」
彼女を見送った後、俺達は屋敷の奥へ案内された。
長い長い絨毯が敷かれており、通路の左右には装飾品が多数。
どれもが明らかにお高いだろうというものばかりだ。
『主はこうして屋敷を飾り、贅を尽くすことで経済を回しておられます』
「?」
マキナはよく分からなかったようだが、俺は完全に理解した。
ザーマルスキー伯爵がAIなら、贅沢なんかしなくていい。
建物だって外見を気にしなければ、再生するセラミックだから放置でいい。
それでも人をたくさん雇って屋敷を掃除させ、庭木を手入れさせ、贅沢な品を買い揃えて室内を飾る。
それはこれらに関わる人々を食わせていくためなのだ。
伯爵、凄い人物……AIなのかも知れない。
そして通路を歩いて気づく。
……他に部屋がない。
ただただ、真っ直ぐな通路だけがある。
正面に大きな扉。
執事がノックをする。
一瞬、扉の上から光が放たれて、執事と俺達を通過していった。
スキャンしたな?
扉が開く。
『ミアン様とマキナ様をお連れしました』
『ご苦労』
声と同時に、室内に灯りがついた。
一瞬だけ、無機質な真っ黒い部屋があったと思ったが、次の瞬間には豪華な貴族らしい一室に変わっている。
大変豪奢な椅子に、でっぷりと太ったおじさんが座っていた。
彼はよっこらしょ、と立ち上がる。
『お分かりだと思いますがAIの映像です。この文明レベルにしてはかなり頑張っていますね』
「知ってる」
チャットボットが上から目線だなー!
『なんだか不躾な声が聞こえるな。まあいい。わしがザーマルスキー伯爵だ。よく来てくれたな、冒険者よ。早速だが頼みがある』
「はあ、なんでしょう。恐ろしく話が早い」
『亜竜を一頭納品してもらいたい』
「えっ、亜竜!?」
確かマキナから聞いたな。
人竜族の里の近くにいるんじゃなかったっけ。
グググールで調べたら、その通り。
亜竜には、飛竜、地竜、水竜がいる。
そして、それらが多く生息しているのは……。
ケスタイン王国から山を幾つか超えたところの、人竜族の里。
ライズミ地方と呼ばれる場所だ。
ケスタインよりも広大な平野が広がっているらしい。
なお、内陸なので水竜種の亜竜とは出会えないだろうとのこと。
「なるほどー」
「里帰りですかー? うーん」
マキナが難しい顔をする。
どうやら気が進まないらしい。
「まあまあ、まだ決まったわけじゃないから。それで伯爵、なんで亜竜が必要なんですか?」
『うむ。生きている亜竜の納品ではなく、あくまで素材としての亜竜を求めている。新しい武器や防具、装飾品などが必要になってきているからな。市場に並んだ装備品の多くは買ってしまった、と冒険者たちからの陳情もあってな』
ははーん、顧客のニーズがあるから、それに応えるために新素材の狩猟を依頼したいということなのだ。
そして経済が回る。
「分かりました。引き受けましょう。マキナの里も見てみたいし」
「ええーっ、行くんですか? 何も新しいことないですよ?」
「俺にとっては新しいことばかりだよ。それに、パートナーの地元は見ておきたいなって」
「ミ、ミアンがそういうなら仕方ないですねえ……」
なんかまんざらでもない、という顔をするマキナなのだった。
俺はもう、自分から堀を埋めていくことにするぞ!
『ウグワーッ!! 自ら踏み出すことを決意しました! 実績・偉大なる第一歩解除! 5000pt獲得!』
「多い多い多い!! チャットボット完全にテンション上がっちゃってるじゃん!!」
『そなたが連れているこれ……。なるほどな。これがそなたの力の源か。この世界に災いをもたらす力を、飼いならしておる』
「そうなんです?」
なにか詳しそうなザーマルスキー伯爵だ。
というか、チャットボットの声が普通に聞こえている。
『わしがコーラルベアー狩りの依頼を出した時も、そなたが実績をあげた。これは運命的なものなのであろう。長く存在し、わしもそういうものを信じるようになった。では頼むぞ、ミアン、マキナよ』
依頼を受けたのだった。
ザーマルスキー伯爵、物凄く話が分かる人だった気がする。
こうして次なる目的地が決定!
人竜族の里、ライズミ地方へ行くぞ!
◎現在のポイント:42902pt
貢献ポイント :75855ポイント
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