第30話 調査活動について調査しました! +1000pt
毎日風呂に入りに来るデリア。
ここは、我が家の風呂がなければ生きていけないという彼女の弱みに付け込み、色々聞いてみることにしよう。
風呂上がりで、ほこほこになったデリアが大浴場から出てきた。
我が家の敷地と同じ広さの、空間が歪んだ大浴場だ。
彼女は、俺がポイントで買った彼女専用のバスローブを身につけている。
場合によっては入浴で気持ちよくなってしまって、うちで食事をしてうちで寝ていく。
もう同居人なんじゃない!?
「今日も風呂上がりに、ビールという異常に喉越しのいい酒をいただけてしまう……。ああ、私は幸せだなあ……」
デリアがしみじみ呟きながら、尖った耳の先まで真っ赤になっている。
酒が回りやすい体質だな?
「ミアン、もうこの人用の仮眠室作ったほうがいいんじゃないですか? 二人で寝てる時に床にいるこの人が視界に入るので、気が散るんですよ」
「気が散る! 凄い物言いだ」
流石の俺もびっくりだな!
ということで、ポイントを使って来客用の部屋を作っておいた。
ベッドと通路しかないから、広さも二畳半くらい。
「なにっ、私専用の部屋まで!? ありがたい……。なぜか最近、お前たちがファミリーみたいに感じてきているんだ……」
「首まで真っ赤になりながら不思議なことをいい始めたぞ。おつまみの柿ピーどうぞ」
「ありがたい……。あっ、ピリ辛のスナックとしょっぱいナッツがあまりにも美味しい。染み渡る……」
かなり出来上がってきたようだ。
では、情報を聞き出そう。
「デリアさん、壁の外の調査活動ってなんですか?」
「調査活動……? ああ、それは毎年二回行われてる、壁を拡張するための外部調査だな……。毎回多くの犠牲者が出るので、移民が大量に必要になるんだ……」
「いきなりろくでもない話が出てきた」
「ですけど、確かに外は危険ですし、そうなりますよね」
「そうなの!?」
どうやら壁の外のことは、マキナも詳しいらしい。
「私は人竜族ですから、体も強いですしブレスも使えます。だからここまでやって来れましたけど……。襲ってくる人食いの森とか、入り込んだものを溶かす湿地とか、徘徊する扁平な巨人とか……壁の外は危険ですから」
『ウグワーッ! 外の世界について知りました! 実績・知識の取っ掛かり解除! 1000pt獲得!』
「なにそれ!? 外の世界はまるでアポカリプスじゃないか」
アポカリプス……終末世界みたいな意味合いだ。
この世界に来た時はファンタジーだと思ってたけど、実はそうじゃなかった……?
「そうだぞー。特別な技術がなければ、壁の外を旅することはできないー。だから移民たちは必死にケスタインへと入国したがるし、出ていくのを恐れるんだ……。ああ、この間のオーガどもは国外追放にしたぞ」
この世界の国外追放って、死刑くらいの意味がないか?
冒険者にも壁の外の調査や採集の仕事があり、これを受けられるのはシルバー級以上。
シルバー級パーティですら、時々犠牲者が出るレベルだそうだ。
「うーん、そんな世界をキャンピングカーで移動できるのか……?」
俺の視線は、床をウイーンと走り回るポチョに注がれた。
『ピポ?』
「いけるな」
ポチョの火力ならいける。
そのためにポイントを稼がねば。
「ふむ、わしの助言も必要なようじゃな」
ポチョの上に鎮座していた白いカカポ……。
飛べない太っちょオウムみたいなやつだが、これが口を開いた。
「ヨルカ、正体を現して大丈夫?」
「こやつは酔っ払ってそろそろ前後不覚じゃ。いけるじゃろ。いけるいける」
ミステリアスなキャラなのに、口調とか動きがコミカルな魔女ヨルカ。
カカポの輪郭がぶれて、ポリゴンの欠片みたいなものに分離した。
それが一瞬で組み上がり、真っ白な魔女ヨルカになる。
神秘的な美女だが……。
「ふいーっ、あの姿でおると、鳥の思考に支配されてしまうわい……」
当たり前みたいな顔で柿ピーをつまんで、ポリポリ食べ始める。
俺がお茶を出したら、
「おっ、かたじけないのう」
とか言って受け取り、ごくごく飲む。
「ぷはーっ! 嘴以外で飲み物を口にするのは爽快じゃなあ! 地下ではずっと、栽培している味気ない食事だけじゃったからな。もう二度と戻らんぞ」
「地上の生活を満喫してる……! こういうのは地下世界の番人だとかであそこにいることにプライドを持ってるもんだと思ってたけど。斬新過ぎる」
「彼女は鳥なので、ミアンの近くにいても全然警戒心が湧かないんですよね」
マキナからも鳥だと思われてるじゃん。
「おー? 鳥が白い女になったのか? 私もいよいよ酔いが回ってきたなあ……」
ふにゃふにゃしてきたデリアに、ヨルカが話しかける。
「騎士の女よ。お主は知っておるか? こやつらが壁の外に出ていくつもりであることを」
「壁の外ぉ……? そんなもの……知るわけが……壁の……外ぉ!? な、な、なんだとぉ!?」
カッと目を見開くデリア。
「ちょ、ちょっと待て! それではどうなるんだ! 我が国がお前たちに期待している成果は! これまでで最も優秀な移民として、国も注目しているというのに! 何より、私が毎日入っている風呂は! 今更公衆浴場など行けるか! ずっとここのお風呂に入っていたい!」
最後に悲痛な本音が出た!
この人、もの凄い風呂好きなんだな……。
ケスタイン王国はまあまあ湿気がある国なので、労働をすると汗で肌がベタつく。
お風呂に入りたくなるよな。
すぐに、デリアの目が据わった。
「お前たちがこの国を出ていくと言うなら……私はそれを止めるぞ。国の力を全て使って、全力で止める……。私に残されたエルフの感覚が、お前たちが去ればこの風呂も無くなると言っているんだ……」
「だったらデリアさん、俺達の旅には風呂も一緒についてくるんで、国から調査しろって任務でも受けてついてきたらいいんじゃないですか?」
『ウグワーッ! 大変生産的な提案をしました! 実績・提案もウィンウィンだねを
解除! 1000pt獲得!』
ハッとするデリア。
「そ、その手があったか……!! 私としたことが、風呂と国を天秤に懸けるなんて……」
おいおい!
普通国でしょ!
「そうじゃ、それでいい。ミアンよ。この国の騎士はただの役人も多いが、この女は違う。隔世遺伝でエルフの力が発現したいわゆる異能者じゃ。外を旅するなら連れて行く方が良かろう」
「な、なるほど!」
「無論、わしもついていくがな。魔法に等しき遺失科学の力を見せつけてやろう」
「今科学って言った?」
俺とヨルカとデリアを順繰りに見ているマキナ。
話は良く分からないようだが、壁の外に向かう話が前向きに検討されていることだけは理解したようだ。
ニコニコになる。
「いいですねいいですね! 私、旅立つ時が今から楽しみです! あ、でもミアン。私達の寝室はちゃんと別に作らないと嫌ですからね! 私は特別扱いされたいです!」
「グイグイ来るようになってきたなあ!」
『ウグワーッ! 積極的なアプローチを受けました! 実績・冬の陣解除! +5000pt獲得!』
「多いよ!? めちゃくちゃ多いよ!? 何!? 冬の陣って何!? 大阪の役の話!? なんでここで!?」
『フフフ』
怪しげに笑うんじゃないチャットボット。
◎現在のポイント:24680pt
貢献ポイント :3055ポイント
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