表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/26

第3話 初めての人命救助をしました! +1000pt

 本当に手ぶらなのは俺くらいのようだ。

 採集を選んだ俺は、おっかなびっくり、薄暗い森の中を目指す。


「チャットボット。こういう山歩きで必要なものってなんだ?」


『とてもいい質問ですね! ご希望の道具は、照明、そして採取用の軍手、収納用の籠になります』


 お買い物サービスに、該当の商品が提示される。

 一番安いのは10pt、一番高いのは1000pt!?

 うーむ、違いが分からない。


 一番安いのは怖いから、それぞれ30ptくらいのものにしておこう。

 俺の片手に松明が出現する。

 両手のひらが軍手で覆われ、松明を持たない方の腕には籠がぶら下がっている。


「完璧。それじゃあ行こうか」


 森の中に一歩踏み入れると……。


『ウグワーッ! 新たな一歩を踏み出しました!』


「うわーっ! この実績解除のフレーズ、状況によっては心臓に悪いな……」


『実績・冒険の第一歩を解除! 200pt獲得!』


 おっと、嬉しいポイント量だ。

 これで、さっき購入したぶんのアイテム代がチャラになってお釣りが来る。


 ホクホクしながら、森の中を歩く俺だ。

 幸い、先行している人たちの足跡がそこここにあり、迷うことは無い。


 だがそれはつまり、既に誰かが通った道を歩くことになる。

 採取の対象となるのは、食用、薬用になる草木とキノコ。

 よく考えたら、俺はそういうのに詳しくないし、先行した人に全部取られてしまっているのではないか?


「こりゃあまずい。ポイントを使って何かいいのを買おう。例えば……貢献ポイントの対象になる草木やキノコが分かるアプリとか! そういうアプリはある?」


『とてもいい質問ですね! こちらの探索アプリを使えば、一定距離までの対象物を探せますよ!』


「AIみたいな返答してきたな? ピックアップ感謝! では、ダウンロードしてインストールして……ええっ!? 基本無料!? ありがたーい!」


 ほくほく顔で探索アプリ……The・探索を起動する俺。

 探索条件を打ち込む場所がある。


 ええと、貢献ポイント対象、と。


『The・探索が探索対象を認識しました。半径10m以内の対象を表示します』


「よしよしよし、いいぞいいぞいいぞ」


『その前に、15秒間のCMをご覧いただくとこのサービスがご利用可能になります』


「な、なんだってー!?」


 基本無料の落とし穴だ!!

 カード会社からのヒロイックでうるさいCMが流れ始めた!!

 俺はすぐさま、このアプリの使用権をランクアップする。

 FREEから、PREMIUMへだ!


 うおおお、虎の子のポイントが500pt消えた!

 基本無料だけどCMが出ないようにするために、かなりポイント食うじゃないか!


『次回からCMなし、などの条件をご提示下さい!』


「次からは絶対そうするからな!」


 このチャットボット、ポンコツかも知れない。

 アプリの探索能力だけは確かだった。

 ソナーのような画面が表示され、俺の周囲に点々と貢献ポイント対象の草木が表示される。


「種類までは分からないんだな」


『そちらはアプリ内課金で拡張するシステムになります』


「世知辛い……」


 もっとポイントが増えたら拡張しよう。

 今はこれで十分だ。


 一見して、対象となる薬草とそっくりな草木がある。

 だけど探索アプリが反応しないため、これは対象外だと分かる。

 よく似た毒草だったりして。


 探索アプリが示す対象物を採集しながら、俺は森の奥へと進んでいった。

 おっと、ここには対象のキノコがある!

 どれどれ……。


 おや?

 つま先にふにゃっとした柔らかな感触が。


 アプリから目を離し、足元を見る……。

 そこには、人が横たわっていた。


「…………。うわーっ!!」


 そりゃあ驚くって。

 アプリを見ながら歩いてはいけません!

 今後、気をつけます!!


「死体か……?」


 倒れている人の周りをウロウロする俺。

 アプリは、この人の下敷きになっている場所を指し示している。


 その人は、手にキノコを握りしめていた。

 齧った跡があるな。

 一見すると、採取対象のキノコそっくりだが……アプリは反応していない。

 毒キノコじゃないか?


 倒れている人をチェック。

 金色の髪が、森に差し込む木漏れ日を受けて煌めいている。

 髪の間から二本のツノが生えていた。


 整った顔立ちは、眠っているかのように穏やかだ。

 大きく膨らんだ胸が上下している。

 生きているな。

 眠ってるのだろうか?


「っていうか女の人じゃん」


 いかんいかん、胸を凝視していたぞ。

 彼女は長袖のシャツみたいなのを着ていて、下半身は短パンだった。

 真横に太い、ヘビみたいなものが飛び出している。

 ……尻尾だ!


「ツノと尻尾がある美女だぞ! 人間じゃないってわけか! ……いやいや、この世界では人間かも知れない。おーい。女の人ー。寝てるんですかー」


 声を掛けてみる。

 反応はない。

 顔をぺたぺた叩いてみた。

 反応がない。


「これはまずいかも知れない。毒か? 毒じゃないか? チャットボット」


『The・探索のアプリ内課金をご利用下さい』


「くっそー! 人命には代えられないだろ! ポイント課金だ! 毒を判定してくれ!」


 手持ちのポイントが一気に吸われる……と思ったら。


『ウグワーッ! 初めて誰かのためにポイントを消費しました! 実績・黄金の精神Lv1を解除! 1000pt獲得!』


「えーっ!? い、いや、そんなことより! アプリ起動!」


 The・探索の毒物判定機能を使用する。


『コンスイタケ。素晴らしい香りと食味だが、口にしたものを永遠の眠りに誘い、一晩で殺す。その肉体を苗床にして繁栄する』


「最悪の毒キノコじゃん! どうやって毒を解除する!?」


『調理されたコンスイタケは体内で素早く分解、吸収されているために物理的な手段では解除不可能。解毒の魔法かポーションを使用すること。生のコンスイタケの場合はまだ胃の中で未消化な場合があるため、吐き出させることで解毒できる』


 消化されてないのに毒の力を発揮するってわけか!?

 まあいい、助かるならやってやろう!

 酔っ払った人に吐かせる方法は、ネットで調べて知っているんだ。


 俺はツノの生えた女性の口を開くと、喉の奥に指を突っ込んだ。

 うおっ、生暖かくてぬらぬらしている。


 まさか人生で初めて女性に深く接触するのが、毒キノコを吐かせるためだとは……。

 ツノの生えた女性は、すぐに生理効果でオエッとなった。


 全力を込めて彼女をうつ伏せに……おおーっ! 出てきた! 胃の中のものが出てきた!

 その中には、かじりかけの生キノコが混じっている。


「おえーっ! おえええっ! げほっ、げほーっ! うげーっ!! ひ、ひどい、ひどい目覚めなんですけどーっ!!」


 ツノの生えた女性がそんな事を言いながら、胃の中のものを吐ききったようだった。

 よしよし、蘇生した!


『ウグワーッ! 初めての人命救助をしました! 実績・命の守り手Lv1を解除! 1000pt獲得!』


「えーっ!? な、なんか善行を積んだら、ポイントを使ってポイントが増えてしまったんだがーっ!? これはポイントの永久機関じゃないのかぁーっ!?」


◎現在のポイント:2010pt

 貢献ポイント :0pt (指定の場所に納品しなければポイントになりません!)

お読みいただきありがとうございます。

面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
基本無料あるあるw しかしところどころこすっからいのに、善行にポイントを大盤振る舞いするあたり、真意が読めぬ……w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ