第29話 ハッピーな交渉を成立させました! +3000pt
「挫折の経験みたいなのもまた、ポイントになるんだなあ。ますますチャレンジするモチベーションが湧いてくるじゃないか」
俺はニコニコしつつ、音波砲を取り出した。
今回も、強力なメガホンとして使用するつもりだ。
というのも……。
「うおー! やれゴーレム!」「やったれー! 倒せー!!」「国家の犬を蹴散らせー!」
あちこちから集まってきたドワーフが、ゴーレムを応援しているからだ!
対するマキナは完全にアウェー!
ならばここは俺が!
「マキナーーーーーーーーーーーーーーーーーッ! 信じてるぞーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「はいっ!! 頑張ります!! 勝ちます!!」
振り返り、尻尾をぶんぶん振るマキナなのだった。
その隙に、ゴーレムが距離を詰めてくる!
試合ではない、ルールのない喧嘩である。
相手がどう出てもおかしくない。
大きく振り回されたゴーレムの腕は、金属の棍棒みたいなものだ。
これがマキナ目掛けて叩きつけられる。
だが、マキナは相手の動きを尻尾で感知していたらしい。
サッと横に動いて回避!
横殴りに襲ってきた腕は、ドリルショートランスで弾き……。
おおっと!
ドリル部分が回転!
回転力でゴーレムの腕を超高速で受け流す!
『グゴガアアア』
姿勢を崩すゴーレム!
マキナの尻尾が頭部に炸裂!
さらにゴーレムの姿勢が崩れた!
だが、相手も体勢を立て直しながら、腕をブンブン振り回して攻撃してくる。
「なんのーっ!」
やけくそ気味の攻撃などマキナには通用しないのだ。
間合いを空けて攻撃をやり過ごした後、ドリルショートランスで一方的に相手を殴る!
そう、ドリルやランスなら刺すイメージがあるのだが、マキナはこれで平然と殴打するのだ。
固定観念に囚われない戦い方!
ドリルの回転が、相手に触れる度に表面を削り取ったり、ちょっとした動きに干渉する。
ゴーレムは上手く動けていないぞ。
「ドリルショートランス、思った以上にクレバーな武器だったな。武器でもあり盾でもあったとは」
本来、ゴーレムとは魔力が続く限り動き続けるので、無限の体力で相手を圧倒してくる恐ろしい存在だ。
だがドリルショートランスだと、防ぎながら相手を削るので戦いが長引くほど使い手側が物理的に有利になる。
ゴーレムの腕が半分くらいになっているぞ!
「な、な、なんちゅう恐ろしい武器だ!」「こりゃあいかん」「あの姉ちゃんもやたら殴り合いに慣れてるぞ!」
「ふっふっふ、亜竜の狩りは持久戦ですからね。体力に劣る亜竜を疲れさせ、みんなで仕留めるための囮は何度もやりましたから! 里のみんなと両親には女がやるのは危ないしもったいないからやめろって何度も言われましたけど!」
「そんな経験が! 人には歴史ありだなあ」
『ウグワーッ! パートナーの思い出話を聞きました! 実績・ときには昔の話を解除! 1000pt獲得!』
「マキナの思い出を聞いただけで凄くポイントが増えた」
「ほんとですか!? 良かったです! じゃあ私、そろそろケリを付けますね! おりゃあーっ!!」
リーチが短くなったゴーレムアタックを回避して、懐に飛び込むマキナ。
ついにドリルショートランスを、ゴーレムの胸と腹の境目に突き立てる。
おお、ギャリギャリ音を立ててドリルが潜り込んでいくぞ。
ゴーレムが慌てて攻撃をしようとするのを、マキナは素早く後ろに下がって回避した。
既に、ツノとツノの間に雷球が出現している。
エレクトロブラストだ!
「金属が突き立ってると、私のブレスはそっちに向かうんですよね! 発射ーっ!!」
人竜族、こうやって発射する超自然的な攻撃を、全部一括りにブレスと呼んでいるそうだ。
ドラゴンブレスというわけだね。
これはドリルショートランスを避雷針として、文字通り吸い寄せられて炸裂!
『ぴがががががーっ!!』
もろに食らったゴーレムはビリビリと痺れたあと、頭とか腕とか足が、ポンポンポンッと吹っ飛んでいってしまった。
俺は音波砲で叫ぶ!
「ゴーレム、戦闘不能!! 勝者、マキナーっ!!」
「うおおおおおおお」「うわああああああ」「すげええええええ」
ドワーフも盛り上がっている!
『ウグワーッ! 実況解説しました! 実績・始まりのミアン節解除! 1000pt獲得!』
ミアン節ってなんだ!
なお、ゴーレムを打ち倒すと、ドワーフたちがすごすごと現れたのだった。
「わしらの技術の結晶が敗れた……」「やるもんだのう冒険者」「我々も研鑽をせねば……」「だが貢献ポイント辛い」
「そこで俺から皆さんに提案なんですが……」
「なんだなんだ」
代表らしきドワーフが出てきた。
「俺の故郷の話なんですが、やり方が上手い研究者は、自分のやれることや実績を上手くアピールして、国に研究費を出させてました」
「な、なにぃーっ!?」
どよめくドワーフたち!!
彼ら、坑道に押し込まれていたけれど、どうやら採掘よりもこういうゴーレム作りの方が好きらしい。
つまり、他のドワーフにはない強みがあるんじゃない?
「つまりですね! 皆さんのゴーレムを作れるという強みを国に売り込むんです! 研究成果を貢献ポイントにできるように交渉して、研究開発しまくるだけで褒められる状態にするといいのでは、と思います!」
「な、なるほどーっ!!」
ドワーフたち、どよめく!!
そうしたら、俺達の背後からやって来るピンクの髪の騎士なのだった。
「ははは、こちらもすぐに制圧したか。優秀優秀。さすが、私が風呂を借りに行っている冒険者だ」
良く分からない褒め方をするデリア。
ずっと後ろからつけてきていたんだろうなあ。
「デリアさん、俺から提案なんですが」
「なんだ? こいつらを国外追放してから聞いてやる」
「ひいーっ」
国外追放の言葉に、震え上がるドワーフたち。
「彼ら、このゴーレムという労働する機械を生産できるらしいんですよ」
「ほう、それがどうしたと言うのだ?」
「ゴーレムは言うことを聞いて、魔力が続く限り働き続ける機械なのです」
「ほう……ほう……!!」
「彼らにゴーレムを研究開発させて、その成果を国が貢献ポイントとして召し上げて、様々な危険な労働に従事させるというのはどうでしょう。ゴーレムが壊れるまで、貢献ポイントを払う必要がないですよ」
「あーっ! な、なるほどーっ!!」
デリアが完全に理解した! という顔で目を見開く。
「お前たち、それは私の手柄にしてしまうからな……?」
「どうぞどうぞ」
「私達、貢献ポイントさえもらえたらそれでいいですよ」
「わしらは無駄な労働せずに研究開発だけさせてもらえれば……」
ウィンウィンが成立した!!
『ウグワーッ!! ハッピーな交渉を成立させました! 実績・ウィン・ウィンこそ理想形解除! 3000pt獲得!』
凄いポイントが来たぞーっ!!
何気にこれ、人生の転機だったりするのか?
マキナが目をキラキラさせながら俺を見ている。
「うーん、やっぱりミアンは凄いです! 腕っぷしだけなら強い殿方はたくさんいますけど、人と人の間を取り持って変えていける殿方は、ミアンが一番すごいです!」
それは買いかぶりじゃないかなあ!
ヨルカを乗せたポチョは、俺の周りをトコトコ歩き回り、
『ポピッピ!』
と飛び上がる。
労ってくれている気がする……。
あっ、ヨルカがコロンと落っこちた。
こうしてドワーフたちは、ケスタイン王国お抱えの研究機関になるのだった。
どうやら、壁の外の調査とか、壁を広げるための征服行動やらの危険な仕事があるらしいのだが……。
◎現在のポイント:18480pt
貢献ポイント :3055ポイント(ドワーフの事件を解決!)
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