第22話 ペットをデコりました! +1000pt
ケスタイン王国の廃棄都市区画……というのは、かつてここで魔法実験が行われ、悪魔と呼ばれる怪物の類が召喚された場所なのだそうだ。
悪魔召喚によって都市全体が汚染され、モンスターが発生するダンジョンになってしまっている。
そのためにこの区画は廃棄され、さらに壁によって包まれ隔離されているのだ。
「壁があちこち壊れてるんだけど?」
「ここを根城にしているというオーガたちが壊したんでしょうね。薄い壁ですから、私のエレクトロブラストなら簡単に破壊できますよ」
「エレクトロブラスト!?」
「これです、これ」
マキナが自分のツノを指差す。
そうしたら、二本のツノがバリバリ帯電し、その間に電気で出来たボールみたいなのが出現する。
それが、猛烈な勢いで射出された。
うおーっ!
壁の一角が粉砕される!!
「凄い!! 石壁が豆腐みたいに崩れた! ……っていうか、その力があるなら移民申請の時も使っていれば簡単にいけたのでは?」
「この力、燃えやすいものを発火させてしまうんです。森が丸ごと火事になるかも知れなかったので……」
「あー、威力が高すぎて使えなかったと」
『ウグワーッ! パートナーの秘密を知りました! 実績・君のことが知りたい1Lv解除! 1000pt獲得!』
「うわーっ! なんか恋愛関係みたいな実績が解除されてしまったぞ!」
「わ、私としては、そういうパートナーになるなら色々さらけ出すつもりもあります! ミアンも隠し事はなしにして下さい!」
「わ、分かった! もともと俺は隠すような事などなにもないけど」
本当に!
隠す事は何一つないのだ!
さてさて、大きな音を立ててしまったが、どうかな……?
マキナが開けた穴から覗いてみる。
ポチョも真似して、俺の足元からそーっと覗いた。
俺の上から、マキナがそろりと覗く。
「何見てるんだよ!? 何だお前ら!!」
ちょうどオーガの見張りが駆けつけてきたところだった!
2m近い背丈の、額からツノが生えた筋骨隆々の男だ。
マキナも背が高いけど、それより一回り大きい!
これがオーガかあ!
なお、ツノの生え方はオーガは正面に、太くて短いツノが生えている。
マキナは頭の側面に近いところから、やや細くて鋭利なツノが生えている。
オーガのツノは鹿のツノみたいに艶がなく、マキナは金属質の光沢を帯びたツノだ。
「俺はマキナのツノの方が好きだなあ」
「まあ!」
マキナがちょっと甲高い声をあげて、俺の背中をぺちぺちした。
あっ、声に出てしまっていた。
「何だお前ら、いきなりいちゃつきやがって! 気に入らねえ! ぶっ殺してやる!!」
オーガが腰から手斧を抜いて振りかぶり、咆哮とともに襲いかかる!
「やれやれ、野蛮ですねえ。では私が制圧を……」
『ピポ!』
ここは任せろー、と前に出たポチョ。
「なんだあ、このちびすけは!!」
『ポピー』
ウォーターバズーカが火を吹くぜ!
いや、水を吹く。
ぶっ放された水の塊が、オーガの顔面に、腕に、足元に炸裂!
さらに通常の火砲がバキューンバキューンと火を吹き、オーガの体を揺るがせる。
「うおおおおーっ!? なんだーっ!? なんだこれはーっ! ウグワーッ!!」
水で足元をツルツルにされ、武器をふっ飛ばされ、顔面に水を浴びせられて目潰しされ、さらに火砲で姿勢を崩されたオーガ。
見事仰向けにぶっ倒れてしまった。
ポチョ強いなー。
『ポッピー!』
おっ、まだまだやれます! みたいなポーズをしてくるポチョなのだ。
これは強化してやってもいいかもな。
「やりますねー。でも、私も負けていませんよ!」
マキナはショット薙刀を振り回すと、後からやって来たオーガの見張り相手に大立ち回りだ!
相手の手斧を薙刀の切っ先で叩き落とすと、ぶんぶん回転させて柄の部分でオーガを叩き伏せる。
「ウグワーッ!?」
ツノを一本折られてぶっ倒れるオーガ!
「マキナ強い!」
「ショット薙刀、取り回しを練習していたんですよ! 流石の私でも、オーガの殿方と素手では力負けしますけど、長物があると腕力の差がひっくり返りますからね」
「なるほどー! オーガはそんなに腕力が凄いのか……!! これは捕まらないようにしなくちゃ。そのためにもポチョを強化だ」
俺は進軍するポチョの後ろを歩きつつ、お買い物メニューを確認。
『機動性を確保するなら、ドローンユニット。面制圧するならミニガンユニットがおすすめですよ! 歩行戦車には、一度に二つまでのユニットを取り付けられます! あなたのセンスでうちのコをオリジナルにデコっちゃいましょう!』
「な、なるほどーっ。ではドローンとミニガンを購入。行くぞポチョ、新モードだ!」
『ポピー!』
ドローンユニットを装着すると、ポチョの四脚にはめ込むように、装甲でカバーされたローターが出現!
四つの球形パーツが外に向けてせり出しているように見えるけど、あの中にローターがあるんだな。
で、ふわ~っとポチョが飛んだ!
『ポピッポー!』
「さらにミニガン設置!」
ウォーターバズーカと入れ替わりでミニガン。
いわゆるガトリングガンのことね。
ポチョと同サイズのミニガンだから、シルエットが凄いことになるなあ!
『ウグワーッ! ペットをデコりました! 実績・うちのペット見てみてを解除! 1000pt獲得!』
デコる扱いなんだ。
ミニガンに装填されてるのは、ゴム弾頭。
非殺傷攻撃なら、多分オーガも死なないでしょ。
ゴブリンとは頑丈さが違いそうだし。
ダンジョン側から、ワーッと出てくるオーガたち!
すごくムキムキでパワフルそうなのがたくさんいるぞ!
だが、こっちには新武装のポチョがいるのだ。
「いけ、ポチョ! 薙ぎ払えー!」
『ポッピピー!』
バララララララララララッ!
弾丸が連続してぶっ放される!
「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」
次々倒れていくオーガ!
うまく回避したやつは、マキナが薙刀でぶん殴って倒しているのだ!
『ウグワーッ! ペットが無双しました! 実績・我がペットを見よ解除! 500pt獲得!』
おっ、生活の彩り程度扱いだぞこれ。
「いいですねミアン! 順調ですよ順調!」
「そうだねー! っていうかマキナ、妙に落ち着いてない?」
「里ではよく狩りをしていましたから! こうやって戦っているのは私にとって自然なんです! 懐かしいなあ、接近戦で亜竜と戦いました!」
マキナ、武闘派だった!
次々にオーガを打ち倒したぞ。
これでお仕事は終わりかな……と思ったら。
「放て! 放てーっ!!」
声がして、建物の向こうから大きな石がビュンビュン飛んできた。
「うおわー!」
俺は慌てて逃げる。
「ミアン! 私の後ろに!」
「そうするー!」
マキナは当たりそうな石を、ショット薙刀で防いでいる。
ポチョは石の間をひらひら避けながら飛ぶ。
建物の上に、人影が現れた。
「政府から言われてやって来たか冒険者め! しかも今までの連中よりもずっと強力と見える!! だが、我らオーガ同胞団は退かぬぞ!! 絶対に! 搾取でしかない貢献ポイントは払わん!! 我らはこの地にオーガの国を作るのだ!! 国は我らに住処を提供しろーっ! 巨神ギガース様の神殿建設の土地を提供しろーっ! 人間は出ていけーっ! ケスタイン王国は王国民だけのものではなーいっ!!」
「なんか言ってるー!!」
「人の国にお邪魔してルール守らないの、迷惑ですねえ!」
俺もマキナも、オーガ同胞団とやらへの心象は最悪だぞ!
『ウグワーッ! 迷惑行為への怒りを燃やしました! 実績・郷に入らば郷に従えって言うでしょ解除! 500pt獲得!』
こっちも生活の彩り程度の扱いだ!
◎現在のポイント:13096pt(ドローン、ミニガンユニットを購入)
貢献ポイント :655ポイント
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