第19話 一緒にお風呂に入りました! +2000pt
「ミアン~!!」
マキナが俺を呼ぶ声がする。
浅めの湯船へ寝そべるように入り、俺を手招く。
太い金色の尻尾も、ゆらゆら揺れている。
「裸の女性と同じお風呂に!?」
「裸の私と一緒に寝たではありませんか」
「なんと語弊を招くような表現を……」
本当に眠っただけなのに。
『ピポー』
「ポチョはこの辺で遊んでてくれ。なに? 遊ぶものがない? じゃあこのトリモチランチャーの使い終わった筒をだな……」
『ポピピ』
ポチョがトリモチランチャーの筒で遊んでいるうちに、俺も覚悟を決めて服をぽいぽいと脱ぎ捨てるのだ。
こういうものは度胸なのだ。
俺の場合はヤケクソでもあるのだ。
『ウグワーッ! 不退転の覚悟を決めました! 実績・男は度胸解除! 500pt獲得!』
「こんなことでもポイント貯まるの!? 混浴のお風呂に入るだけなのに!?」
素っ裸になった俺は、ちょっと前かがみになりながら洗い場へ……。
マキナがじーっと見ている!
「み、見てませんよーっ! ミアンはもう少し鍛えてもいいなーとか思ったりしてませんし、なんだか興奮してくれてて元気になっているなーとか思ってもいませんから!」
「全部見てるじゃーん!!」
だが、まずは洗い場で体を綺麗にするのだ。
掛け湯をし、汗や汚れを洗い流し……。
まあ、この風呂のお湯は謎の空間から現れ、謎の空間に消えていくから問題なさそうなんだが、こういうのは気分的にね。
「なるほど……。ミアンの土地ではそのようにしてお風呂に入るのですね」
「そうなんだよー。今度真似してみてね」
努めて落ち着いた声を出してはいるのだが、心臓バクバクなのだ。
寝る前に素っ裸だった時もドキドキだったが、今度は俺も裸なんだぞ!?
ま、間違いがあってはいけない。
いや、間違いがあっても誰も困らないんだけど。
そーっと湯船に足を入れていく。
うおーっ!!
これだよこれ!
風呂の湯の熱さ!
ゆっくりと全身を沈めていく。
温度は40度から39度くらい……?
まあまあの温度だ。
もっと熱くても、マキナは飛び込めたことだろう。
今はぷかーッと浮かびながら、お風呂の中を漂っている。
銭湯にして良かった。
湯船がかなり広いもんなあ。
そして水面から覗く、マキナの大変ご立派な胸元盛り上がり2つ。
重力でふんわり形が崩れているのが大変エッチである。
くそーっ、俺の盛り上がりが収まらない。
「ああ~。なんて気持ちいいのでしょう……。世に楽園というものがあるならば、きっとここですよ……」
ええ、視界的には俺も楽園と言うか桃源郷です。
マキナ、浮いているのかと思ったらお湯の中で、尻尾が体を支えているっぽい。
こっちに流れてきたぞ。
「ミアンは泳いだり浮いたりしないのですか?」
「俺の世界ではお風呂で泳ぐのはお行儀が悪いと言われているんだ」
「なんとまあ! 土地が変われば常識も変わるのですね……」
マキナが体勢を変えて、俺の眼の前で座った。
ああ~っ。
何もかも見える~っ。
いや、濡髪が垂れて、胸元を隠しているんだけど。
真っ白な肌がお湯で軽く上気していて、大変エッチなのだ。
くそーっ、ようやくの風呂だというのに、風呂どころではないではないか!
『ウグワーッ! 改めて……一緒にお風呂に入りました! 実績・一緒にお風呂解除! 2000pt獲得!』
改めてってなんだーっ。
俺がもじもじしていたら、間合いを詰めてくるマキナ。
その目がお湯の中を凝視しているんだが!?
「ほうほう、こうなっているんですね……。人竜族の殿方よりは小さいですが……ふんふん……」
ガン見じゃないか!
こ、これは大変なことになりますぞーっと思ったら。
そこで家の扉がノックされたのだった。
「いるか? 私だ。ギルドからの連絡を受けてやって来たぞ。入れろ!」
この偉そうな喋り方は……。
今の状況に水を差してくる残念さと、このまま流れでどこに行ってしまうんだ!? というドキドキを助けてくれたという安堵感。
「あっ、はーいただいま」
俺はタオルを出して、腰に巻いて扉へ……。
と思ったら、全裸のままマキナがトコトコ行ってしまった。
ああーっ!
なんたることをーっ!
「デリアさんですよね? 何の御用ですか?」
「おお、昨日の今日でもう家を借りたというのでな。それに人竜族の女はやはり優秀だったのだと……のわーっ!!」
扉が開いたら、全裸のマキナが湯気を上げながら立っていたので、驚愕してのけぞる騎士デリア。
「な、な、な、なぜ裸なのだ! それに汗をかいて湯気を立てて……ま、まさか最中だったのか!? そ、それは失礼したな……」
「お風呂の最中だったんですよー」
「……なに? 風呂ぉ……!? 家の中に風呂!?」
マキナに招かれて、家の中に入ってきたデリア。
入口のところでちゃんと靴を脱いでくれる。
この世界は土足じゃないんだよなあ。
デリアは屋内に広がる大浴場を見て絶句。
そりゃあ、空間を無視して銭湯が展開してるんだもんなあ。
「へ……壁画付きの巨大な浴場だと……!? 公衆浴場並の大きさではないか! こ、これはなんだ!?」
「ミアンが出したんですよ」
「あの男がか!? あっ、いた!」
「どもー」
俺は湯船の中で手を振る。
もう外に出るのは諦めたぞ。
『ポピー』
「うわっ、なんか変なのもいる! ギルドで言っていた、奴が召喚したというモンスターか! ……妙なモンスターだなあ」
「デリアさんもお風呂、入っていきます? あなたは高慢でいやーな人ですけど、お風呂に入ればちょっと性格も良くなるかも知れませんよ」
「誰が性格が悪いだ!? し、しかし……これほど空いている風呂は……魅力的だ……。少しだけ……そう、これは新たにやって来た移民の家を検分するためだからな。私の職務の延長だ……」
いそいそと服を脱ぎ始めるデリアだった。
な、なんたることーっ。
二人目の女性の裸を見てしまったぞ。
鍛えられ引き締まった体である。
いや、出るところは結構出てるな……。
ますます俺は湯船から上がれなくなったぞ。
彼女はいそいそとやって来ると、洗い場に気付いた。
「これは……この蛇口から湯が出るんだな? ふむふむ」
掛け湯をしてから風呂に入ってくれる!
文化的ーっ!!
俺のデリアへの好感度が上がったぞ。
そして彼女は風呂に入ると、
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ~」
ととろける声を出してふにゃふにゃになったのだった。
風呂は固く凝った心すらも解きほぐすのだ!
『ウグワーッ! お客にお風呂を貸しました! 実績・うちのお風呂に入りに来て解除! 1000pt獲得!』
◎現在のポイント:12996pt
貢献ポイント :655ポイント
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




