第17話 ポチョが仲間として認められました! +500pt
さて、お風呂を出す前にマキナに会ってもらいたい子がいるのだった。
「もう入ってもいい?」
「どっ、どうぞ! ふわあああ、不思議な体験をしました……。お尻が妙にすっきりしています……」
家に戻ると、マキナがもじもじしていた。
トイレはかなりいい感じだったみたいね。
「それでマキナ。今日はこれからお風呂も買うんだけど、その前に紹介したい子がいるんだ」
「紹介したい子? それはなんですか? ミアンはこれまで、誰かと会ったりはしてなかったような……」
「俺の冒険を手伝ってくれた、新たな仲間なんだ。では……紹介しましょう! 俺のペットのポチョ!」
じゃじゃーん!と口で効果音を言いながら、ストレージから現実へポチョをドラッグする。
そうすると、柴犬くらいのサイズの歩行戦車がチョコーンと現れた。
全長は柴犬の尻尾を含めないくらい。
ガニ股なので、全幅は柴犬二匹くらい。
砲塔の一番高いところは柴犬の頭の位置くらい。
ほぼ柴犬だと思う。
『ポピー』
登場したポチョは、マキナを見上げて挨拶した。
「あらまあ!」
マキナもびっくり。
ポチョに全く敵意が無いことが分かり、駆け寄ってきてつんつん触る。
『ポピピ』
「ちょっとあったかいですね?」
「メカなんだけど、人肌なんだよね」
「なるほどー。可愛いかも知れません。ミアンを助けてくれてありがとうございます、ポチョ」
『プピ~』
マキナに撫でられて、ちょっとデレデレするポチョなのだ。
うんうん、褒められると嬉しいよな。
『ウグワーッ! ポチョが仲間として認められました! 実績・家族紹介を解除! 500pt獲得!』
『ポピピポ』
「どうしたポチョ。あれか? マキナにすりすりして犬みたいな仕草をする許可を俺に取ろうとしているのか。いいぞいいぞ」
『ピピー』
「あらあら~」
砲塔部をすりすりしてくるポチョを、マキナがわしゃわしゃ撫でた。
犬の扱いをよくご存知でらっしゃる!!
「この子は何か食べるんですか?」
「あれっ、どうかな? メカだからなあ。でも、こういうところで勝手に判断せず、分からないことは聞くのがいいんだ。チャットボットー」
『とてもいい質問ですね! 一般的に機械は食事をしないと言われていますが、ポチョは食べられます。食事の中にエネルギー源になる油を混ぜてあげて下さい』
「なーるほど」
油がメインの食料で、他はおやつになるわけだ。
「ミアン、ミアン! この子にえさやりをしましょう! 私、食べるところが見てみたいです!」
「いいねー! やろうやろう」
大いに盛り上がっていると……。
「邪魔するぜ……!」
なんか荒っぽい見た目の男女が家の中に勝手に入ってくるのだが。
革ジャンみたいなのを身に着けていて、腰に剥いた剣には街中で抜けないように封印が施されている。
これは冒険者だな。
代表らしきソフトモヒカンの男は、マキナを見てにやりと笑った。
「凄え実力者のルーキーが入ってきたって聞いてな。俺達ネビュラチェインズが勧誘にやって来たってわけだ。あんた、俺達の仲間になれ。俺達はケスタインでも上位のパーティーだぞ」
パーティー!
そういうゲームのようだ!
「ふむ……。私の力が欲しいのですか? ですが残念です。私はミアンとともに行動しますので」
さっと断るマキナなのだった。
目線はポチョに注がれたままで、手はわしゃわしゃとポチョを撫でている。
そっちの方が大事なのだ!
ソフトモヒカンの人はこれを聞いて、こめかみに青筋が浮かぶ。
「おいおいおい、正気か? この国で冒険者をやるのにソロなんて、ジュエルクラスの化け物どもじゃなきゃ無理ってもんだぜ」
「ソロ? 一人ではありません! ミアンがいると言っているではないですか!」
「はあ? アイアン級の、こんなヒョロっとした奴が頭数に入るかよ! 戦いのときに肉の盾になるのが関の山だぜ!? こんな役立たずなんか放っておいてよ。俺達と来い! パーティー用の大型住宅は快適だぜ! こんな何も無い家なんかより……何も……無い……」
ソフトモヒカンと仲間たちの目が、壁際に設置されたトイレに注がれる。
「なあに、あれ」
「トイレだよ。タンクレスでおしり洗浄機がついてて、風で乾かしてくれる上にしてる最中は音楽が流れるんだ」
トイレの凄さを説明してあげる俺なのだ。
ネビュラチェインズの魔法使いらしき人が、なんかトイレを見て顎が外れそうなくらいポカーンとしている。
「す、す、す、凄い工芸品だ……!? トイレ!? あれが!? 全体が最高級の陶磁器のごとく磨かれた、白く輝く機能美溢れるあれが!?」
「お分かりになりましたか」
俺はにやりと笑う。
他にもネビュラチェインズのメンバーは、窓ガラスを見て触れて驚いたり、ピンク色のポップな壁紙に驚愕したりしている。
『ウグワーッ! 自宅を内覧させました! 実績・我が家はどう?を解除! 500pt獲得!』
まだ準備段階の家だから、ポイント低めだな。
すっかり雰囲気に呑まれていたソフトモヒカンは、ハッとする。
「い、いかんいかん! いいか新人! 俺達と行動することが何よりもお前のため……」
「しません!! ミアンを悪く言う人は敵です!! 絶対にぜーったいにあなたたちに協力なんかしません!!」
マキナがへそを曲げてしまった!
「というわけで、マキナは俺と一緒に冒険するので、こう、お引き取り願えると」
「なんだと!? アイアン級風情がシルバー級パーティーのリーダーである俺に何を生意気な……」
「ポチョ、お客様お帰りだぞ」
『ピポ!』
ポチョがぐりんと、砲塔を回転させた。
「うわっ、なんだこいつ!?」
思わず、封印された剣を鞘ごと抜くソフトモヒカン。
ポチョがトコトコ寄ってくるので、これを叩く!
「あっ!」
マキナが驚くが、大丈夫!
ポチョは強いのだ。
横にさささーっと動いて鞘を回避すると、剣目掛けてバキューン!と砲塔から射撃した。
射撃の勢いで手から弾き飛ばされる剣!
バキューンバキューン! と射撃がされて、その全てはソフトモヒカンをギリギリかすめる範囲で放たれた。
「ひっ、ひぃーっ!? なんだ!? なんだこいつ!?」
「我が家のペットです。よしポチョ、招かれざる客を撃退するオプションつけような」
『ユニット・ポチョムキンの迷惑客撃退装備ですね。おすすめはこちらです。ウォーターバズーカ』
「それだー! 800ptかあ。いいんじゃないか? 購入!」
すると、ポチョの脇にプチプチで梱包されたウォーターバズーカが到着!
俺はこれを素早く開けた。
「い、今、何も無いところから突然モノが出現した!! しょ……召喚魔法なのか!? そんな、こんなヒョロい男が、伝説の召喚魔法の使い手だなんて……」
魔法使いの人が物凄く驚いているな。
買い物をして、眼の前に置き配されただけだが?
ウォーターバズーカをポチョの頭に載せると、カチャッと音がしてきちんと装着された。
「よし、行けポチョ!」
『ピポポー!』
バコーン!
バズーカから飛び出す、バケツ一杯分くらいの水の塊!
それを猛烈な勢いでぶちまけられたソフトモヒカンが、「ウグワーッ!?」とこけた。
水で滑るようになった床を、つるーっと押し流されていく。
追撃のウォーターバーズーカが、連続して炸裂!
「ウグワワーッ!? なんだ!? なんだこれはーっ!?」
外に追い出されたソフトモヒカンの戸惑う声が聞こえるのだった。
「こ、こいつは止めておいた方がいいよ! アイアン級なんかじゃない! 絶対に変だ! ギルドじゃこいつの実力を測りきれてないんだ!」
魔法使いの説得を受けて、立ち上がったソフトモヒカンはじっと俺を見た。
俺はちょうどお掃除セットを買ったところで、眼の前にプチプチで包まれたモップが現れたところだった。
「ま、また何も無いところから道具を呼び出しやがった……。魔法使い……!? それもとんでもねえレベルの魔法使いだ……! お前ら、退くぞ! ヤバい。あいつはヤバい……!」
何か勘違いされてはいないだろうか……?
『ウグワーッ! 上手にお掃除できました! デイリー実績・お掃除は大切解除! +100pt!』
◎現在のポイント:15026pt
貢献ポイント :655ポイント
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