第139話 未経験なのにそれっぽいことを言いました! +1000pt
朝目覚めた弟子たちが、完成している大地母神像を見て驚愕しているのだった。
「ぼ、僕がデザインした大地母神像が!! もう……もう形になっている!! 誰が作ったんだ!」
「あたしじゃないんだけど!! ひいい、完璧な造形!! ほんの僅かな妥協もない磨き抜かれた表面……!! 神の業だわ……!!」
「よく分かんねえけどよ、エッチだな……!!」
「静まれ、静まれ弟子たちよ!」
「あっ、師匠!」
アベルが会釈し、カノンはちょっと上目遣いで睨むような目になった。こいつのこれが敬意の表し方な。
で、サーラがうへへ、と愛想笑いした。
おお、挨拶の仕方にも社会性が反映されている!
「これは俺が昨夜お招きした、造形のプロが一晩でやってくれたのだ。それがこちらにいる、クリームフレンさんだ」
『うむ……我である……!! 貴様らが作ったという公園やこの塔……。まだまだだが、人間としては悪くない。命を削っている気配がするな。いいぞいいぞ』
「初めて会う人……人……? だけど、なんだか凄まじい説得力がある……!!」
本当かどうか分からないが、魔王だからな。
一見すると、光と闇が組み合わさった人型の何かだが……。
本当になんなんだろうな。
とりあえず、ここが居心地よくて居着いていることだけは分かった。
「よし弟子たちよ。飯を食ったらまた作業開始だ! 市街地は建造物が多くなければいけないからな。カノンとサーラの仕事はまだまだ続くぞ!」
二人は本日もやる気十分。
専用アイテムを身につけ、仕事に取り掛かるのだった。
残されたアベル。
じっと大地母神像の前から動かない。
「すごい……。すごい像だ……。僕の考えた物が、こんなに完璧な形で……いや、僕が考えていたよりもずっとすごい形で出来上がるなんて……。ぼ、僕はまだまだだ……!」
『ククククク……。たかだか十数年しか生きておらぬ人間がここまでできるなら、まあ天才と言って良かろうよ。せいぜい精進するがいい』
「言葉遣いが魔王っぽい! アベル、あれなんじゃないか? 落書きしまくってた女神ちゃんを、この都市のシンボルにする感じであちこちにデザインして回ったらどうだ? 数をこなすことで、腕は上がってったりするものだ。お前は若いから、まだまだ実践回数が足りないとかそういうのじゃないか?」
『ウグワーッ! 未経験なのにそれっぽいこと言いました! 実績・一家言ある風だけど素人ですからねミアンさん! 解除! 1000pt獲得!』
言うなよー。
チャットボット……女神の声は魔王にも聞こえるらしく、この光と闇の塊みたいなのはクックック……と笑っていた。
「そうか……! 今なら、女神ちゃんをこの都市に刻めるんだ! うおお! 師匠、僕、やりますよ!」
「そうかそうか、やる気になったか。じゃあこれ、移動できる足場ユニット。高いところまで背伸びできるから。あとこれ、マテリアル。デザインの中に押し込んで、このカッターとヤスリで造形していって」
「はい!!」
『女神ちゃんだと? この世界は信仰を失っているのだったな? どーれ、我が見てやろう……』
クリームフレンがアベルと一緒に行ってしまった。
「良かったの、あれ?」
『この世界から信仰が失われて久しいですからねえ! これは信仰を取り戻していくための工程でもあるんですよ! その助けをするのが魔王でもまあいいじゃないですか!』
「本当に魔王なの、あの人?」
『そうですよ? 魔王を突き詰めた先には虚無しか無いことに気付き、他者と関わりながら有償で権能を振るうことに存在意義を見出した珍しい魔王です。本来ならば世界を滅ぼす災厄になるのですが、ポイントの力を得ても善行ばかりしかしない、ミアンさんみたいな変わり者は、どこにでもいるんですよ』
「なるほどなあ……。まあ、深く考えないでおこう」
俺はここで、大きくあくびをした。
よく考えたら徹夜だった。
そこに息子の誕生と、弟子たちへの説明が重なって、いい加減疲労の限界だ。
「よし、寝る!」
そういうことにするのだった。
四階に到着すると、誰もいない。
マキナは恐らく、カッツを連れて風呂だろうか。
アイラとデリアもいそうだ。
「久しぶりに……本当に、久しぶりに一人だ……! 新鮮……!!」
この世界に来てから、ずっと誰かが隣りにいたからなあ。
思えば、これで俺の社会不適合者っぷりが緩和していったように思う。
「一人だと、ベッドルームが広いな……。ひたすら広い!」
巨大なベッドに横たわり、天井を眺める。
この世界に降り立った時は、ケスタイン王国の目の前でたった一人だった。
何も持っていなくて、ポイントプログラムだけを友に運命に立ち向かった。
それが今はどうだ。
妻がいる。
子供がいる。
地位がある。
家がある。
たくさんの仲間達がいる。
何より、毎日毎日、次から次へとやること、やりたいことが飛び出してくる。
いつの間にか俺は、ポイントを稼ぐために動くのではなく、毎日を楽しむために動くようになっていた。
ポイントはおまけだ。
ポイントこそ人生だった俺は、いつの間にか人生の方が主役になってしまっていた。
不思議なものだ……。
そんな事を考えている間に寝てしまった。
夢の中の俺は、そろそろディテールを思い出せなくなってきている一人暮らしの狭い部屋にいて……。
ああそうだったな。
俺は一人なんだった。
……一人だったっけ?
夢の中、遠くから声が聞こえてくる。
それは赤ちゃんの声なのだった。
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