第119話 含蓄のあることを言いました! +1000pt
「さて……侵入しましたけど、どうします?」
「そうだなあ。この世界の王国や帝国は狭い空間だから、ある程度の人は顔見知りの可能性がある……。なんかその辺りごまかせる魔法があったりします?」
「なるほど、なるほど……。それは私にはない視点でした! 確かにそうですねえ。私もケスタイン王国の住人か移民かはすぐに見分けられますし。いいでしょう! じゃあ魔法、行きますね」
アイラは「ミアンさん、やるじゃない」とか呟きながら、精霊に呼びかける。
精霊というのは、司教が使う神聖魔法同様、因子を役割に応じて成形し、疑似人格をもたせた外部ユニットとして出現するものだ。
神と違うのは、精霊はシチュエーションに合わせて作り変えるものなのだ。
今回アイラが使うのは、植物の精霊魔法。
まさに彼女が得意とするところだ。
だって、植物の因子はアイラの体からも発されているからだ。
「私達を隣人と誤認させる魔法、フレンズを使用しました。これでほとんどの人は、私達をセダイン帝国の隣人……それもある程度仲のいい人間だと認識するでしょう」
「おー、凄い! で、ほとんどというのは……」
「王国で言えば、シルバー級以上の人には因子耐性があったりします。気付かれますね」
「万能ではなかったか……」
流石にそれは虫のいい話だった。
フレンズの魔法は、一般市民が集まるところをうろつく時に効果を発揮することだろう。
さてさて、アイラと二人でセダイン帝国の市場をぶらつくことにする。
「あら、綺麗……。織物はケスタイン王国よりも発達しているようですね。こんなきらびやかな布、あちらにはないですから」
「そうだなー。複雑な色彩で染められた反物もある。文化的なところではケスタイン王国より優れているかも知れない」
「お料理は似通ってますねえ。穀物を使ったものが多いみたい。大した事ないですね」
「アイラさんは肉が使われてないと評価が低いなあ」
ケスタイン王国、動物性タンパクの摂取という意味では大変優れた場所だった気がするな。
何せ、必ず肉を焼くか煮るかする店や屋台があった。
「私はここでは暮らせませんね……」
「穀物主体だから?」
「そうです! 見て下さいあのお饅頭。野菜炒めのお饅頭ですよ!? そこは! 肉の餡でしょうーっ!!」
「落ち着いてアイラさん、落ち着いて行こう」
「ふう、ふう、冷静です、私は冷静です。あまり怒るとまたお腹が減って、ミアンさんにお肉を出してもらう必要が出ます」
うん、ポイントを消費して凄くいい肉出してるからね!
不服そうなアイラをなだめすかし、とりあえずこの国の料理を食べてみることにした。
なーるほど、肉類はケスタインほどガッツリ食べず、色々なものをバランスよく食べるのね。健康的。
穀物が多めなのは、人口が多いから主食で栄養を摂らせるという方針なのかも知れない。
玄米チャーハンみたいなのがなかなか美味かった。
「美味しいのは認めますが、ガツンと来ないですね。そもそもこの辺は私達ドライアドにあまり必要がない栄養なので」
アイラがぶつぶつ言ってるのだった。
なお、牛の舌を調理したもの……いわゆる牛タンは大好評だった。
「セダイン帝国やりますねえ! これは美味です~」
一気にデレたな……!
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牛タンを売ってたおっさんは、美女が牛タンをやたら褒めてくれるので気を良くして、
「そうだろうそうだろう。セダインの牛タンは世界一だからな! 飯に乗せて食ってもいいし、こいつをつまみにして一杯やってもいいんだぞ! 近く行われる大遠征が成功すれば、牧場も広げられる。そうしたら牛タンをもっと食えるようになるぞ!」
おっと!
ここで気になるワードが出てきた。
大遠征とな?
「ははあ、大遠征しないと、牧場の面積も頭打ちだからねえ」
俺は話を適当に合わせながら、おっさんの話を引き出そうと試みる。
「ああそうだ。セダインでも子供が増えたからな。将来を見越して、土地を広げないとならねえ。北にあるケスタインだっけ? あの機械どもが支配する妙な国を取り込めば、あそこを丸ごとならして牧場にして、食料を作れるってわけだな!」
ははーん。
セダイン帝国ではベビーブームが起きて、人口が爆発したようだ。
将来的に食料が足りなくなることが分かったため、ケスタイン王国の侵略を行おうと考えているわけだ。
この辺りを開拓すればいいじゃないかとも思うが、それはそれで大変な危険が伴うし、広げた国土は新しく壁で覆わねばならない。
セダイン帝国を囲む壁は、俺が見たところ古いものだった。
あまり更新されていないんじゃないか?
そもそも、壁を再生産する技術が失われているか、衰退しているのかも知れない。
俺はここでもう一つ、情報を集めることにした。
「ケスタイン王国の貴族は機械だもんなあ。うちとは違うよなあ」
「ほんとほんと! 千年以上同じ奴が貴族やってるんだろ? こっちはまあ、みんな皇帝の一族ではあるけどよ。まだ上に人間がいたほうがなあ。納得できるってもんだぜ」
うーん!
ファンタジー世界的な感じでは、セダイン王国の方が正しい!
こっち、どうやらケスタイン王国が持ってる謎の科学技術みたいなのが無さそうなのだ!
貴族を担当するAIなどというものは無く、皇帝一族が全てを取り仕切っている。
『そもそも私に聞けば全て分かるのでは?』
おっと、チャットボットが疑念を懐いたな。
「こういうのはじっくり調査することで趣も出るし、それに俺が質問時に思いつかなかったような背景情報も出てくるんだよ」
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