第118話 こそっと入国しました! +1000pt
ドライアドの生態、完全に理解した!
彼女たちは女性種に固定された亜人で、過去に実験生物として生み出されたらしい。
で、人と交配を繰り返しながら現代まで種を繋いでいる。
光合成ができて、精霊魔法が使える以外は人間とそう変わらない扱いをしていいということが分かった。
なお、男性種のドライアドもいるらしいが、それは山岳地方に偏っているらしい……。
おお、勉強したら眠くなってきた。
キャンピングカーにカーテン機能があることが分かったので、これで内側からの光が漏れないようにした。
いや、真っ暗にして寝るんだけどね。
アイラがスピピピ、と寝息を立てている。
爆睡だ!
毛布の下は全裸で、隣に俺という男がいるのに!
男として見られていないのか……。
いや、明らかに誘われていたので、これは覚悟が決まっているからなのではないか。
「どう思う、ビナス」
発声機能がないビナスは、ナスビみたいな体をフリフリするだけなのだ。
仕方ないので寝た。
朝になった。
カーテン機能をちょっとだけ解除したら、凄まじい陽光が飛び込んでくる!
グワーッ!!
こ、これは……夏の日差し!
これ、多分現実の世界なら6月に入った頃だな?
ということは日も高くなり、そして梅雨に突入するのではないだろうか。
窓越しの日光が顔面に直撃したアイラが、「ギャーッ」と悲鳴をあげた。
女の子がなんて声で叫ぶのだ。
しかも寝起きに。
「はあ、はあ……。ゆったり寝ていたところに無理やり光合成をスタートさせられましたよ……! 恐ろしい……。人間で言うなら、寝ているところに食べ物をいきなり押し込まれたみたいなものです!」
「あ、なーるほど! 分かりやすい!」
『ウグワーッ! また一つドライアドの生態に詳しくなりました! 実績・生態が面白いねドライアド、解除! 500pt獲得!』
ほんとにね!
見た目はマキナよりもずっと人間に近いのに、恐らく性質は誰よりも人間から遠いところにある。
ブツブツ言いながら水を飲み、陽の光に当たるアイラ。
面白い人だなあ、としみじみ思う俺だった。
さて、昼の時間は一時間、二人で漕いで三十分休み。
また一時間移動して、また三十分休み……というペースで進んだ。
近くをシェイプシフターがうろついていたが、キャンピングカーを見てギョッとして離れていった。
自走する大きな箱、自然の生き物からすると怖いもんなあ。
なお、デスワームの別種みたいなのもいた。
やっぱり四本脚の生き物しか捕食しないらしく、眼の前をキャンピングカーが通過するのをポカーンと眺めていたのだった。
「疲れますけど……これ、恐ろしく安全な移動手段ですね……!! いや、疲れるんですけど! 冒険者ギルドのデスクワーク中心だった私が、何の因果でこんな肉体労働をせっせとやってるのか分からないんですけど!」
「俺との相性でアイラは選ばれたんじゃないかなあ。最初に俺を担当したのが運の尽きだった……」
「ああ~」
なんとも切ない声をあげるなあ。
なお、デスクワーク担当と言う割に、アイラはかなり体力がある。
俺と一緒にバリバリペダルを漕いで、一時間は継続できるんだから。
それにキャンピングカーの内部は空調が完備されているため、暑くない。
まあ、運動しているから汗はどんどん流れてくるんだけど。
「あ、なんか見えてきた」
荒野を超えて、通過するものに枝葉を伸ばしてくる木々を振り切った先にその都市があった。
灰色の壁がどこまでも続き、その規模は明らかにケスタイン王国以上。
「セダインだ」
「セダインですね……。私、初めて見ましたけど」
「そうなんだ? アイラもしかして……」
「はい。ケスタイン王国生まれですから、あそこから出たことは数えるほどしかないですよ。その一度がリクス・タカード解放なので、とんでもない大冒険だったんですよ……」
なるほどぉ。
さて、通信リングを使って、先行チームに連絡してみる。
ちょっとしたら、密偵氏から返答があった。
『どうもどうも。俺とウイレアはもう中にいる。ユニ蔵とフェーリアもそうじゃないかな? ぶっちゃけ、ケスタイン王国よりもザルだぞ。入り込むのは簡単だ』
「なるほどー。貴族による管理みたいなのが行き届いてない感じですかね?」
『ああ、なんつうか……。人間と人間が組織を作って、それで回してる感じがする。危なっかしいのを、ギリギリやりくりしてるな』
「ははあ……。AIが絡んでいないなら、それは本来の人間社会なのでは……」
とりあえず有用な情報は掴めた。
密偵は昨日、ウイレアの力で空から侵入。
当然のように、空から来る怪物に対抗する罠などが仕掛けられていたそうだ。
この国の空にはあちこちに網が張られており、空を飛ぶ生き物はここに引っかかってしまう。
だが、そこでウイレアにぶら下がっていた密偵が活躍した。
網を的確に解除し、無事に二人は潜入に成功したのだそうだ。
『とりあえず、ユニ蔵は騒ぎを起こして一部の連中の目をそっちに向け、フィーリアの誘惑のブレスで兵士を骨抜きにして突破したようだな。人死は出してない』
「上手くやってるなあ。じゃあ、俺も適当に潜入するので、中で合流しましょう」
『了解!』
通信終わり。
すぐ近くで、肉汁たっぷりのステーキサンドを食べていたアイラ。
「どうやって潜入するんですか……?」
「俺の場合は多分、どういう方法でも潜入できる……」
「本当ですか……!? いやあ、ミアンさんなら本当だろうなあ」
敵に回したらだめだなー、なんてぶつぶつ言うアイラなのだった。
それはそれとして、ステーキサンドはぺろりと平らげた。
俺が普通のBLTサンドで済ませている横で、常にガッツリ肉料理を食べるアイラ。
「よし、栄養を補給しました。本当、悔しいけどものすごく美味しいんですよね、ミアンさんのご飯」
「でしょー」
「ということで! さっさと仕事を終えて、何の心配もなく美味しいお肉を食べるために! やりましょうやりましょう!」
「よし、じゃあ潜入だ!」
二人とビナスで外に出て、キャンピングカーをストレージに収納する。
あまりにも壁が広大なセダイン。
兵士が見張りできてない場所がかなり多いのだ。
物理的に無理だよなあ。
それでも一応、壁の上から見下ろした時に見分けがつかないよう、カモフラージュ用のシートを二人で被っていく。
「暑い……! 暑いですミアンさん!!」
「俺も暑い。でもちょっとだけ我慢してね」
壁に到着。
このカモフラージュシート、光学的に完璧に擬態できるので、鳥類の目でもサーモセンサーでも一切見破ることができないのだ。
そして、壁にミニミニトンネルユニットを設置。
「はい、トンネル作成開始!」
一瞬だけ、壁が振動した。
だが無音。
上からわあわあ声が聞こえた。
壁が揺れたぞーと騒いでるんだろう。
だが、何の音もしないし振動もすぐに止まったからね。
「はい、トンネルできた」
「ななななな、何をしたんですかミアンさん!?」
眼の前には、俺とアイラが四つん這いになればくぐれるくらいの穴が空いている。
これ、きちんとドリルで掘り進んで作ったトンネルなんですねえ。
ただ、掘削で発生する音を逆位相で完全に消去しているので、振動のみの無音作業になる。
さらに……。
『本来であれば宇宙空間での白兵戦のため、敵対する船に取り付いて穴を開けるユニットです! なのでこの文明レベルの壁ならば数秒で突破できますね』
チャットボットが得意げだ!
『そして! ウグワーッ! こそっと入国しました! 1000pt獲得!』
「セダイン潜入、成功! あ、トンネルは戻しておくね」
応急処理用のパテで埋めておいた。
これでよし。
「ほ……本当に、絶対敵に回したらいけない人ですね、あなた……」
アイラが心底恐ろしそうに言うのだった。
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