表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第2話「屋敷の修繕と初めての訪問者」

辺境の屋敷で迎えた朝は、想像以上に冷たかった。木枠の窓から差し込む陽の光も、埃に遮られてぼんやりとしか届かない。エレナは深く息を吸い込み、屋敷の状況を確認した。


壁のひび、瓦のずれ、庭に散らばる壊れた家具──修繕箇所は数え切れないほどあった。しかし、彼女は落胆せず、むしろ目が輝く。「やれることから、ひとつずつ」


まずは庭の整備。魔獣は静かに見守るだけで、手伝う気配はない。だが、ふとした瞬間に土を掘ると、その下から古い石板や錆びた魔具の破片が顔を出した。手帳の断片で見た記号と同じ印もあり、彼女の好奇心は刺激される。


「……面白くなりそうね」


作業の最中、遠くから足音が聞こえた。辺境の村からの訪問者――小柄な男性が、屋敷の門をくぐってきた。鍛冶屋の見習い、ルードだ。


「……あの、令嬢……ですか?」

「そうよ、エレナ・リーヴァ。どうしてここに?」


ルードは緊張しながらも答えた。「辺境の屋敷に人がいると聞いて。少し手伝えるかと……」

「助かるわ。まずは瓦の交換からお願い」


彼の手際は決して完璧ではないが、一生懸命さが伝わる。魔獣は遠巻きに観察していたが、やがてそっと近寄り、足元に座った。目が合うと、互いに安心したように見えた。


作業の合間、エレナは魔具の破片を手に取り、調べる。「これは……封印が甘くなっている。侯都で使われていた魔具の一部かもしれない」

ルードは首をかしげる。「魔具……って、そんな危ないもの、ここにあって大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。触る分には安全だから。むしろ、ここで管理するほうが安全」


夕暮れが近づき、屋敷に柔らかい光が差し込む。庭の雑草は整えられ、瓦の半分は修復され、魔獣も少し落ち着いた様子。エレナは微笑みながら、手を止めて庭を見渡す。


「この屋敷……少しずつ生き返ってきたわね」


その時、門の向こうで風が揺れる音がした。誰かが屋敷を覗き込む気配――辺境での平穏は、まだほんの序章に過ぎない。


「……侯都の者かもしれない。無理はさせないわ」

そうつぶやきながらも、エレナの瞳は鋭く光った。屋敷の静かな日常と、外の世界の陰謀。両方を見据えて、彼女の毎日は続くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ