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第1話「追放令嬢と魔獣屋敷」

侯爵家の次女、エレナ・リーヴァは侯都の広間で告げられた。「お前は、ここではもう用済みだ。辺境の屋敷へ行きなさい」


理由も言わず、ただ冷たく背を向けられる。政略結婚の駒として利用され、噂では「悪役令嬢」とまででっちあげられた。だが、エレナの心は平静を装う。涙も怒りも、今は必要なかった。


馬車は幾日もかけて、侯都の喧騒から遠く離れた荒涼の地へと進む。窓の外には、枯れた野原と遠くに見える山並み。


そして、屋敷が見えた。

瓦は剥がれ、壁には苔が生え、庭は草に覆われている。しかし、その荒れ果てた屋敷には、確かに生き物の気配があった。


「……魔獣?」


庭の陰から現れたのは、噂の“魔獣”。大きな黒い毛並み、黄色い瞳。威圧するようでいて、どこか人を拒まない目をしていた。


エレナは息を整え、深く一礼した。「これから、よろしくお願いします」


屋敷の中は埃と古い家具の匂い。地下の扉を見つけると、そこに封印された魔具が眠っていた。手に取ると、微かに震える。


辺境生活は決して楽ではない。しかし、エレナは知っていた。観察力と知恵を使えば、この屋敷で、自分の居場所を作れると。


最初の夜。魔獣と火の前に座りながら、エレナは静かに誓った。「侯都の誰にも、私の居場所を奪わせない――ここで、私は生きてみせる」


窓の外で、遠くに光る侯都の灯が揺れる。静かな辺境に、ほんの少しの不穏な影が差していた。

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