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第7話♡美の探求と揺れる心 ~パーソナルカラーと、扉の向こうの囁き~

「――この色、本当に私に似合うのかな……でも、スイ先輩が選んでくれたなら……ううん、ダメダメ! 昨日の夢魔の香りが、まだ私を惑わせているの……!?――」


 サキの手のひらに乗せられた、深紅のティント。それは、まるで熟れた果実のように艶やかで、甘く危険な香りを放っているかのようだ。

 背後から迫るスイ先輩の熱っぽい視線と、どこからか聞こえる、リュウカ様の意味深な囁き。

 そして、静かに回るドアノブの音――。

 美への探求心と、抗いがたい誘惑、そして見えざる脅威の間で、サキの心は激しく揺れ動いていた。



会員制茶屋「太夫」日本本店・リュウカの私室 – 早朝。窓から差し込む光は穏やかだが、部屋には昨日の戦いの名残のような、ピリリとした空気が漂っている。リュウカは鏡の前に座り、静かに化粧を施している。その足元で、聖獣ミャウリが毛繕いをしながらも、鋭い視線を部屋の隅々に向けていた。**


ミャウリ「ミャフン……リュウカ、今日の『太夫』は、朝からなんだか乙女たちの美意識が爆上がりしそうな、キラキラしたオーラを感じるニャ。昨日の戦いで、みんなちょっぴり強くなって、自分磨きに目覚めたのかニャ?」

ミャウリ「(リュウカの化粧台に軽々と飛び乗り、彼女が手にしているリップの色を興味深そうに覗き込む)今日のサキの運勢は……ズバリ!『新たな美の扉・発見度:星よっつ☆☆☆☆』だニャ! きっと、パーソナルカラーとか、新しいコスメとか、自分を輝かせるヒントを見つけるに違いないニャン!」


リュウカ「まあ、新たな美の扉、ですって? それは素晴らしいことですわね。サキさんだけでなく、皆にとって、美の探求は永遠のテーマですもの。何か、特別なアドバイスはありますかしら?」

リュウカ「(ミャウリの鼻先に、ほんの少しだけローズ系のリップをちょん、とつけようとして、ミャウリに避けられる)」


ミャウリ「うーん、そうニャ……。今日は『誘惑の囁き・危険度:星みっつ☆☆☆』も出てるからニャ、新しい美に挑戦する時も、甘い言葉や怪しい誘惑には気をつけるように、と伝えておくのが吉だニャ! 特に、黒猫さんの情熱的なお誘いとか、黒い羽根の女の気配とかニャ!」

ミャウリ「今日の吾輩からのバフは……『パーソナルカラー・見極めアイ・バージョンアップニャ! ただし、自分自身のことはよく見えないかもニャ♡』 これで、サキちゃんが自分や仲間に似合う色を見つける手助けになるはずだニャ! ……吾輩の毛並みに似合うのは、やっぱりロイヤルブルーの首輪かニャ~?」

ミャウリ「(リュウカの膝の上で満足げに喉を鳴らす。サキの周りに、一瞬だけ、色とりどりの光のパレットがキラキラと舞ったように見えた)」

ミャウリ「それと、リュウカ! やはり、あのカスミの気配が、まだ『太夫』の周りをうろついているニャ……。昨日の隠密妖魔は倒したが、あいつ、まだ何か企んでるニャ。今日は特に、二階のバックヤードあたりに、嫌な“視線”を感じるニャ……。ミャウリレーダー、ビンビンだニャ!」


リュウカ「ええ、ミャウリ。わたくしも同感ですわ。カスミはそう簡単には諦めないでしょう。彼女の目的が何であれ、これ以上『太夫』の乙女たちを危険な目に遭わせるわけにはいきません。今日は、わたくしもいつも以上に警戒を強め、そして……ほんの少しだけ、彼女に“お灸”を据えて差し上げる必要があるかもしれませんわね」

リュウカ「(静かに微笑むが、その瞳の奥には、絶対的な守護の意志と、氷のような冷たさを秘めた決意が灯っている)さて、わたくしも準備をしませんと。今日も一日、乙女たちの美への探求が、邪な気配を打ち破る光となりますように」


ミャウリ「今日のランチは、美肌効果抜群の『サーモンとアボカドのビューティー丼・コラーゲンスープ付き』で頼むニャ! 美意識高まる日にぴったりだニャン! あと、カスミの邪気を払うための『最高級マタタビ香』も焚いておいてくれニャ!」



会員制茶屋「太夫」日本本店・二階バックヤード休憩室 – 昼下がり。昨日の夢魔騒動とカスミの刺客の緊張感が嘘のように、休憩室のテーブルには、色とりどりのリップやアイシャドウパレットが並べられ、まるでプチコスメカウンターのよう。サキ、ハナ、ユナがキャッキャと華やかな声をあげて盛り上がっている。しかし、部屋の隅々には、まだ微かに昨日の戦いの名残のような、ピリリとした空気が漂っている。そして、どこからか、甘く蕩けるような花の香りが、ほんのりと、しかし確実に漂ってきていた。それは、夢魔の残滓か、それとも新たな何かの予兆か……。


ハナ「見て見てー! これ、新作の『夢見るオーロラティント・妖精のキスカラー』! 偏光パールがザクザクで、塗ると唇がぷるっぷるになるって、ギルドのトレンド情報ポストでバズりまくってたやつなの! ユナたんみたいなブルベ夏さんには、この青みピンクとか、透明感爆上がりで絶対似合うと思うんだよねー!」

ハナ「(ハナはキラキラした目でティントのキャップを開け、ユナに差し出す。彼女のイエベ春の肌には、コーラルオレンジのチークが太陽のように輝いている)」


ユナ「わぁ……! なんて美しい色合いですの! まるで、虹色の朝露をそのまま閉じ込めたようですわ! ハナ様は本当にコスメにお詳しいのですね! わたくし、自分に似合う色がまだよく分からなくて……いつもハナ様やスイ様にお見立てしていただいてばかりで……」

ユナ「(ユナは目を輝かせるが、少し困ったように眉を下げる。彼女のブルベ夏の白い肌は、今日の穏やかな光の中で、より一層儚げに見える)」


サキ「私もですー! イエベとかブルベとか、春夏秋冬とか、最近よく聞きますけど、自分がどれなのかサッパリで……。とりあえず、明るいオレンジ系なら失敗しないかなーって、安心感でつい手に取っちゃうんですよね。でも、本当はもっと色々な色に挑戦してみたい気持ちもあるんですけど……」

サキ「(サキは自分のポーチから、見慣れたコーラル系のリップを取り出す。イエベ春の彼女には確かによく似合うが、どこかマンネリも感じている。昨日のスイ先輩の言葉が、心のどこかで響いている。ミャウリ様のバフ、『パーソナルカラー・見極めアイ』が、発動しているのだろうか?)」


ハナ「あー、サキたんは典型的なイエベ春って感じだよね! 明るいコーラルとかピーチピンク、ふんわりしたパステルカラーが、サキたんの可愛らしさを最大限に引き出してくれるもん! でもさー、たまには冒険も大事だよ? 例えば、この深めの赤リップとか、ちょっと背伸びして大人っぽく変身できちゃうかもよ? 昨日のスイ先輩みたいにさ♡」

ハナ「(ハナは妖艶な笑みを浮かべ、昨日スイ先輩が持っていたものとよく似た、ボルドー色のリップをサキに勧める。その瞳の奥が、一瞬だけギラリと光ったように見えた)」


サキ「ひゃっ!? こ、こんな真っ赤な色、私には無理ですよぉ! ハナ先輩みたいにオシャレで美人さんじゃないと……! それに、なんだかこのリップ、昨日の夢魔の香りがするような……気のせい、ですよね……?」

サキ「(サキは慌てて手を振るが、内心では少しだけ興味を惹かれている。しかし、リップから漂う微かな甘い香りに、昨日の恐怖が蘇り、警戒心を強める)」


そこへ、涼やかな、しかしどこか全てを見透かすような声が響く。


リュウカ「あら、今日も賑やかな“美の研究会”が開かれているようですわね。楽しそうな声が、廊下まで聞こえてきましたわ。サキさん、そのお色は、あなたの素直な可愛らしさをよく引き立てているけれど、時には大胆な色も、まだ見ぬご自身の新しい扉を開く、魔法の鍵になるかもしれませんわよ?」

リュウカ「(リュウカがいつの間にか部屋の入り口に、金の扇子を優雅に揺らしながら立っていた。彼女の周りだけ、空気が凛と澄んでいるように感じられる。そして、彼女からは、いつも以上に清らかで、しかしどこか抗いがたい魅力を持つ、白檀と桜の香りが漂ってくる)」


ハナ「リュウカ様! お疲れ様です! ねえねえ、リュウカ様って、ご自分のパーソナルカラーとか、気にされたことってあります? なんか、どんな色でも完璧に着こなしちゃってて、もはやイエベとかブルベとか、そういう次元を超越しちゃってる感じしませんか? 私たちギルドの永遠のミステリーにして、美の頂点です!」

ハナ「(ハナは目を爛々と輝かせ、尊敬と好奇の入り混じった視線でリュウカに質問する)」


リュウカ「ふふ、パーソナルカラー、ですか。確かに、自分をより魅力的に見せるための、興味深い指標の一つですわね。けれど、わたくしにとっては、その日の気分や、纏うべき“物語”、そしてお会いする方との調和を考えて色を選ぶことの方が、より心躍る体験かしら。美しさとは、型にはめるものではなく、自身の内から香り立つもの。そして、それをどう表現するかは、その方自身の自由な選択ですわ」

リュウカ「(リュウカは静かに微笑み、自分の唇に塗られた、絶妙な深みのあるローズ系のリップを、金の扇子で隠した口元から覗かせるように、指でそっと触れる。それは、イエベにもブルベにも寄りすぎず、温かみと冷たさ、強さと儚さといった相反する要素を内包した、まさにリュウカ様ならではの、神秘的で洗練された色合いだった)」


ユナ「まあ……! リュウカ様のお言葉、まるで美の女神様の箴言のようですわ! 色を纏う“物語”……なんて奥深く、そして素敵な響きなのでしょう! わたくしも、いつかそんな風に、自分だけの物語を色で表現できるようになりたいです!」

ユナ「(ユナは感嘆の息を漏らし、リュウカの言葉を心に刻み込むように、うっとりと聞き入っている)」


サキ「(リュウカ様……本当にどんな色でも、どんな言葉でも、私たちを魅了してしまう……。次元が違うって、こういうことなのかな……。あのローズ色のリップ、すごく綺麗で、なんだかリュウカ様の秘密に少しだけ触れられたような気がする……♡ でも、あのリップからも、ほんの少しだけ、昨日の甘い香りが……? ううん、リュウカ様に限って、そんなことは……)」

サキ「(サキはリュウカの圧倒的な美しさとオーラに、そしてその言葉の深みに、ただただ見惚れるしかなかった。しかし、鋭敏になった五感が、リュウカの纏う香りの中に、微かな違和感を捉えようとしていた)」


スイ「んふふ、リュウカ様は“美”そのものを体現した、我らが誇る絶対的な支配者だからニャン♡ でも、サキちゃんもどんな色でも似合うと思うニャン♡ 特に、あたしが特別に選んだ色なら、きっと、サキちゃんのまだ誰も知らない魅力を、根こそぎ引きずり出しちゃうかもニャ?♡ ねぇ、サキちゃん♡」

スイ「(スイがリュウカの後ろから、まるで黒豹のようにしなやかに現れ、サキの背後に音もなく忍び寄る。そして、甘く、しかしどこか挑戦的な声で囁く。その手には、昨日サキの唇に塗ろうとしていた、あの深紅のティントが、妖しい光を放って握られていた。そして、スイの体からは、昨日の夢魔の香りが、まだ微かに、しかし確実に漂ってきているのを、サキは感じ取った)」


サキ「す、スイ先輩っ!? い、いつの間に……! また気配を消して……! しかも、そのティント……!」

サキ「(サキの心臓がドキリと大きく跳ねる。スイの吐息が、またしても甘く、そして昨日よりもさらに濃厚な花の香りがするような気がする。これは、夢魔の残滓? それとも、スイ先輩自身の……?)」


ハナ「キャー! スイ先輩、登場の仕方が今日もイケメンすぎてもはや罪ー! てか、そのティント、やっぱり昨日サキたんに塗ろうとしてたやつじゃん! まさか、今日こそお揃いにする気!? やだー、もうラブラブすぎて、見てるこっちが爆発しそうなんですけどー! #スイサキ永遠なれ ってポストしちゃうぞ!」

ハナ「(ハナは興奮してパチパチと手を叩き、スマホを取り出そうとするが、ミャウリの鋭い視線に気づき、慌てて手を引っ込める。しかし、その瞳は好奇心で爛々と輝いている)」


ユナ「まあ! スイ様とサキさんがお揃いの唇の色になったら、まるで運命の赤い糸で結ばれているみたいで、とってもロマンチックで、そしてちょっぴり背徳的な感じがしますわね……♡ きっと、お二人の間には、誰にも邪魔できない特別な絆があるのですわ!」

ユナ「(ユナはうっとりとした表情で二人を見つめる。彼女の頬も、ほんのりと上気し、瞳は潤んでいる。彼女自身も、まだ微かに残る夢魔の香りに、心地よく酔っているのかもしれない)」


スイ「ふふ、ユナちゃん、良いこと言うニャン♡ さすが、清らかな天女様は、真実の愛を見抜く目をお持ちのようだニャン♡ ねぇ、サキちゃん、このティント、あたしとお揃いにしてみないかニャ?♡ きっと、昨日の“甘い悪夢の続き”ができるくらい、蕩けるように甘くて、あたし好みの、とびきり美味しそうな唇になると思うニャン……♡ そして、二人で一緒に、もっと深い快楽の園へ……ね♡」

スイ「(スイはサキの顎にそっと手を添え、顔をぐっと近づける。その瞳は熱っぽく潤み、サキを射抜くように、そしてどこか懇願するように見つめている。その眼差しは、抗いがたいほどに蠱惑的だ)」


「――この色、本当に私に似合うのかな……でも、スイ先輩が選んでくれたなら……ううん、ダメダメ! 昨日の夢魔の香りが、まだ私を惑わせているの……!?――」

サキ「(うぅ……またこの雰囲気……! スイ先輩の瞳、吸い込まれそう……! なんだか、頭がふわふわして、体が熱い……♡ このティントを塗ったら、私、どうなっちゃうんだろう……? スイ先輩の言う通り、もっと大胆になれるのかな……? でも、これは本当に私の気持ちなの……? それとも、またあの香りに操られてる……?)」

サキ「(サキは抵抗できず、スイの顔が近づいてくるのを見つめるしかない。休憩室に、昨日よりもさらに濃厚で、理性を溶かすような、甘く蕩けるような花の香りがふわりと漂い始める。それは、スイの体から発せられているのか、それとも部屋に満ちているのか、もうサキには判別がつかなかった)」




その時――


カチャリ。


(休憩室のドアノブが、昨日と同じように、静かに、しかし確実に回る音がした。しかし、やはり誰も入ってくる気配はない。ただ、ドアの隙間から、冷たい風が微かに吹き込んできたような気がした)


ハナ「……ん? あれ? まただ! 誰か来たの? それとも、ただの風……? でも、窓は閉まってるよね?」

ハナ「(ハナが不思議そうにドアの方を見る。昨日と同じ現象に、さすがに首を傾げている)」


ユナ「どなたかいらっしゃるのでしょうか……? もしかして、わたくしたちの知らない、隠し通路でもあるのかしら……?」

ユナ「(ユナも不安そうにドアを見つめる)」


スイ「……チッ。また“招かれざる詮索好きな虫”かニャ……? しつこいニャン……」

スイ「(スイは鋭い目でドアを睨む。サキに触れていた手は離れ、全身から警戒のオーラを放つ。その猫耳は、完全に逆立っている)」


サキ「(今の音……! 昨日と全く同じ……! まさか、またあの黒い羽根が……!? カスミさんが、本当に私たちを監視してるの……!?)」

サキ「(サキは不安げに周囲を見回すが、特に変わった様子はない。しかし、先ほどまで漂っていた甘く危険な香りが、ほんの少しだけ薄らいだような気がした。そして、ドアの隙間から、微かに、しかし確実に、冷たく金属的な香りがしたのを、サキの鋭敏になった鼻は捉えていた)」


リュウカ「(先ほどまでサキたちのすぐ近くにいたはずのリュウカの声が、今度はドアの向こう側から、壁を隔てているはずなのに、まるで耳元で囁くかのようにクリアに響く)……ふふ、乙女たちの秘密の時間は、時に甘美な毒だけでなく、好奇心旺 quinzeな野次馬をも呼び寄せてしまうものですわ。扉の向こうの気配には、くれぐれもご注意なさいませ。……まあ、わたくしがこの『太夫』の結界を強化し続けている限り、そう簡単には手出しも、盗み聞きもさせませんけれど。特に、あの“黒い蝶”にはね♡」

リュウカ「(リュウカの声は、どこか楽しんでいるようにも聞こえるが、後半の言葉には確かな守護の意志と、絶対的な自信、そしてカスミへの明確な敵意が滲んでいた。その声が響いた瞬間、ドアノブの動きがピタリと止まり、冷たい金属的な香りも消え去った)」


スイ「……リュウカ様。ありがとうございますニャ。やはり、あの女の仕業でしたかニャ……」

スイ「(スイは小さく頷き、サキに向き直る。その表情は、いつもの悪戯っぽい笑顔に戻っていたが、瞳の奥には、まだ消えない警戒の色と、そしてリュウカ様への絶対的な信頼が宿っている)」


スイ「……さて、サキちゃん。お楽しみは、また邪魔が入らない、もっと素敵な場所と時間に取っておくかニャ♡ でも、このティントはやっぱりサキちゃんにプレゼントするニャン。これは、あたしからの“お守り”でもあるからニャ。いつか、あたしの前で、サキちゃん自身の意志でこっそり塗って、あたしを驚かせて、そして……あたしだけのものになってほしいニャ♡」

スイ「(スイはサキの手にティントを優しく握らせ、悪戯っぽく、しかしどこか真剣な眼差しでウインクする)」


サキ「え……あ、ありがとうございます……スイ先輩……。お守り、ですか……?」

サキ「(サキはティントを握りしめ、顔を赤らめる。先ほどのドキドキと、リュウカ様の謎めいた言葉、そしてスイ先輩の真剣な想いが入り混じり、頭の中が嬉しい混乱でいっぱいになっている。このティントは、ただのコスメじゃない。スイ先輩との、特別な絆の証のような気がした)」


ハナ「えー! なんだよー、またまたいいところだったのにー! てか、今のリュウカ様の声、本当にどこから聞こえてたわけ!? マジでこの店、異次元空間と直結してるとしか思えないんだけど!? でも、リュウカ様がいると、どんなヤバい状況でも何とかなるっていう安心感、ハンパないよね! まさにラスボス……いや、守護女神!」

ハナ「(ハナは不満そうに頬を膨らませながらも、リュウカへの絶対的な信頼を隠さない)」


ユナ「リュウカ様は、まるで全てをお見通しで、わたくしたちの進むべき道を、そっと照らしてくださる、慈悲深き月の女神様のようですわ……。あの声だけで、悪しきものを退けるなんて……本当に、お強いお方ですのね……」

ユナ「(ユナは感嘆の息を漏らし、リュウカ様の気配がしたドアの方を、尊敬の眼差しで見つめている)」


サキ「(スイ先輩の顔が近かったのも、あの甘い香りも……もしかして、昨日の夢魔さんの“残り香”が、まだ私たちの心に影響を与えている……? それとも、本当に、何か別の……私たちを引き合わせようとする、見えない力が働いているの……? でも、あの香り、やっぱり……少しだけ、クセになりそう……♡ リュウカ様とミャウリ様がいれば、きっと大丈夫……なのかな……?)」

サキ「(サキは握りしめたティントを見つめながら、胸の奥でくすぶる甘い予感と、微かな不安、そしてリュウカ様への新たな憧れと、スイ先輩への深まる想いを感じていた。そして、序章から続く『顔近く案件』の本当の原因が、ただの夢魔の気まぐれや、カスミさんの悪意だけではないのかもしれない、という、もっと大きな運命のうねりのような予感が、心の片隅で、確かな輪郭を持ち始めていた――)」



(――「太夫」のバックヤードでは、今日も甘く危険なガールズトークと、見えざる脅威の気配、そして支配人の絶対的な守護と、聖獣の鋭い監視が、絶妙なバランスで交錯する。乙女たちの美への探求は、時に心を揺るがし、時に絆を深め、そして時に、まだ見ぬ運命の扉を、そっと開くのかもしれない――)

(サキは、スイ先輩からもらった深紅のティントを、大切に自分のポーチにしまい込んだ。いつか、これを塗る日が来るのだろうか。その時、自分は、そしてスイ先輩との関係は、どうなっているのだろうか。そんなことを考えると、胸がドキドキと高鳴るのを止められなかった)

(そして、誰も気づかない休憩室の天井の隅で、聖獣ミャウリが、鋭い爪を研ぎながら、満足げに、しかし油断なく、外の気配を伺っていた――)



|д゜)チラッ

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