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第6話♡忍び寄る黒い羽根 ~守護者の覚悟と、試される絆~

「――この羽根……まさか、カスミさんの……!? 彼女、私たちを見ているの……!?――」


 サキの指先が、床に落ちていた一枚の黒い羽根に触れる。それは、まるで夜の闇を切り取ったかのような、冷たく、そしてどこか妖しい光沢を放っていた。

 脳裏に蘇る、あの甘く危険な夢魔の香りと、それを操っていたかもしれない妖艶な女の姿。

 背後から迫る、黒豹のようなスイ先輩の気配と、壁の向こう側から聞こえる、聖獣ミャウリの低い唸り声。

 「太夫」に、新たな脅威が静かに、しかし確実に忍び寄っているのを、サキは肌で感じていた――。


会員制茶屋「太夫」日本本店・リュウカの私室 – 早朝。空は薄暗く、部屋には昨日の騒動の残り香が微かに漂い、緊張感が張り詰めている。リュウカは文机に向かい、何やら古い書物を調べている。その傍らで、聖獣ミャウリが鋭い眼差しで窓の外を警戒していた。


ミャウリ「ミャン……リュウカ、今日の『太夫』は、朝から空気がピリピリしてるニャ……。昨日のあの忌々しい夢魔の残り香が、まだ完全に消えきっていないみたいだニャ。そして……あの黒い羽根の女、カスミの気配が、昨日よりも濃く、そして近くなっているのを感じるニャ……!」

ミャウリ「(リュウカの足元にすり寄り、低い声で唸る。その青い瞳は、怒りと警戒で燃えているようだ)今日のサキの運勢は……ズバリ!『見えざる敵との心理戦・勃発度:星いつつ☆☆☆☆☆』だニャ! きっと、カスミの奴が、また何か仕掛けてくるに違いないニャン! サキちゃんだけでなく、『太夫』全体が狙われていると思った方がいいニャ!」


リュウカ「ええ、ミャウリ。わたくしも同じことを感じていますわ。カスミの目的は依然として不明ですが、彼女がこの『太夫』、そしてわたくしたちの絆を試そうとしているのは間違いありません。油断はできませんわね」

リュウカ「(書物から顔を上げ、ミャウリの頭を優しく撫でる。その表情は、いつになく真剣だ)」


ミャウリ「今日の吾輩からのバフは……『危険察知レーダー・超絶感度MAXニャ! ただし、効果範囲はサキちゃんの半径5メートル以内限定ニャ!』 これで、サキちゃんに危険が迫れば、吾輩がいち早く気づいて駆けつけられるはずだニャ! あと、万が一のために、吾輩の奥の手『聖獣の咆哮・対カスミ用威嚇バージョン』も準備しておくニャ!」

ミャウリ「(リュウカの腕の中で力強く頷く。サキの周りに、見えないはずのミャウリの鋭い視線が常に注がれているかのような、守護のオーラが一瞬だけ立ち上った)」

ミャウリ「リュウカ! カスミの奴、もしかしたら『太夫』の結界を破って、内部に侵入しようとしてるのかもしれないニャ! あの女ならやりかねないニャ! 今日は、オーナーシェフにも警戒を強めるよう伝えておいた方がいいニャ!」


リュウカ「ええ、その必要がありそうですわね。オーナーにも連絡を入れておきましょう。ミャウリ、あなたも無理はしないで。サキさんたちには、わたくしからも改めて注意を促します。そして、もしもの時は……わたくしたちが全力で彼女たちを守りますわ」

リュウカ「さて、わたくしも準備をしませんと。今日は、この『太夫』の守りが試される一日。そして、私たちの絆の強さが問われる一日になるでしょう。けれど、きっと乗り越えられると信じていますわ」


ミャウリ「今日の朝餉は、気合を入れるために『特製カツ丼・必勝祈願バージョン』で頼むニャ! カスミなんかに、絶対に負けないニャ! リョウカとサキは、吾輩が必ず守り抜いてみせるニャ!」




会員制茶屋「太夫」日本本店・二階バックヤード休憩室 – 朝。昨日の夢魔騒動の余韻が、まだほんのりと空気中に漂っているような、いないような…そんな不思議な朝。サキは少し寝不足なのか、ぼんやりとした表情で自分のロッカーを見つめている。部屋には、いつもより少しだけ緊張感が漂い、メイドたちの間にも、どこか警戒するような空気が流れていた。**


サキ「(うぅ……昨日のこと、あんまり覚えてないけど……スイ先輩の顔がすっごく近かったことと、あの甘くて危険な香りは……なんだか、夢じゃなかった気がする……♡ あの後、リュウカ様に色々説明してもらったけど、夢魔とか、カスミさんとか……なんだか現実感がなくて、まだフワフワしてる……)」

サキ「(思い出して、サキの頬がじわじわと赤くなる。同時に、昨日の自分の大胆な行動や、スイ先輩の情熱的な姿を思い出し、心臓がドキドキと高鳴るのを感じていた。ミャウリ様の言っていた『甘い罠』って、本当に怖かったけど……でも、少しだけ、ドキドキしたのも事実で……ぽ♡)」


ハナ:「おはよー、サキたーん! あれ? 今日もなんだか顔赤くない? もしかして、まだ昨日の“熱い夜”の夢でも見てるとか~? スイ先輩に食べられそうになってたもんねー、マジで一線越えるかと思ったわー! あはははは! でも、あの時のサキたん、ちょっとエロくて可愛かったよ♡」

ハナ「(元気いっぱいのハナが、キラキラした笑顔でサキの肩をバンバン叩く。しかし、その瞳の奥には、昨日の騒動のせいか、ほんの少しだけ警戒の色が浮かんでいる)」


サキ「ひゃっ!? は、ハナ先輩! お、おはようございます……! た、食べられそうになんてなってませんよぉ! あれは、あの夢魔の香りのせいですってば!」

サキ「(サキは慌てて否定するが、声が裏返っている。昨日の出来事を思い出すと、顔から火が出そうだ)」


スイ「んふふ、サキちゃん、おはようニャン♡ ハナちゃんの言うこと、まんざら嘘でもないんじゃないかニャ?♡ 昨日のサキちゃん、とっても可愛くて……あたし、あの甘い香りに酔わされて、思わず本能のままに“味見”したくなっちゃったくらいだニャン♡ 理性を保つのが、本当に大変だったんだからニャ♡」

スイ「(いつの間にか背後に音もなく立っていたスイが、サキの耳元で、わざと熱っぽく囁く。その吐息は、やはりどこか甘く、そして昨日よりも少しだけ、自制心が効いているような気がした。しかし、その瞳はサキを熱っぽく見つめている)」


サキ「す、スイ先輩っ! お、おはようございます……! あ、味見だなんて、そんな……! もう、昨日のことは忘れてください!」

サキ「(サキは飛び上がりそうになるのを必死で堪え、スイから数歩距離を取る。スイは楽しそうにクスクスと笑っているが、その瞳の奥には、サキへの独占欲と、そして何かを守ろうとするような、強い意志が感じられた)」


ユナ「皆様、おはようございますですの! 今日は非番なのですが、どうしても『太夫』の桜餅と、皆さんの元気なお顔が見たくなってしまって、遊びに来ちゃいました♡ ……あら? サキさん、スイさん♡、なんだか今日の朝は、昨日とは違う意味で、とっても親密な雰囲気ですのね! まるで、嵐の後に絆を深めた恋人同士みたいですわ♡」

ユナ「(そこへ、今日は少しだけ落ち着いた色合いの私服姿のユナがひょっこりと顔を出す。手には可愛らしい和柄のポシェット。彼女の言葉に、サキとスイの動きがピタリと止まる。ユナの瞳も、昨日の騒動を経て、少しだけ大人びて見える)」


サキ「こ、恋人同士だなんて! ゆ、ユナ先輩、何をおっしゃるんですかぁ! 私たちはただの先輩と後輩で……!」

サキ「(サキは顔を真っ赤にしてブンブンと首を横に振る。しかし、心のどこかで、ユナの言葉を否定しきれない自分もいることに気づいていた)」


スイ「んふふ、ユナちゃん、いいところに気づいたニャン♡ ねぇ、サキちゃん、あたしたち、そんな風に見えるかニャ?♡ もしかしたら、昨日のあの事件が、私たちを新しいステージへと導いてくれたのかもしれないわね♡」

スイ「(スイはサキの肩に腕を回し、昨日よりも少しだけ優しく、しかし確かな力で引き寄せる。その仕草には、サキを守りたいという強い意志が感じられた)」


ハナ「きゃー! スイ先輩、やっぱり大胆ー! ユナたんもナイスアシスト! やっぱり『太夫』は、試練を乗り越えるたびに百合の花が咲き乱れる、愛と美の聖地だわー! あ、ユナたん、そのポシェット、昨日も持ってたやつ? やっぱり超可愛い! 異世界の職人さんの手作りとか?」

ハナ「(ハナは目を輝かせ、ユナのポシェットに興味津々。しかし、休憩室の隅をチラチラと警戒するような素振りも見せる)」


ユナ「えへへ、これは先日、銀座で見つけたお店で…日本の『カワイイ』がたくさん詰まっているんですの! それよりサキさん、本当にスイ様とお付き合いされてるわけではないのですか? なんだかお二人、とっても良い香りがしますもの…♡ まるで、雨上がりの花園で、寄り添って咲く二輪の薔薇のような…甘くて、でもどこか切ないような…」

ユナ「(ユナは純粋な瞳でサキとスイを交互に見つめる。その言葉に、サキは昨日の濃厚な夢魔の香りと、スイ先輩の熱っぽい眼差しを思い出し、クラッとしそうになる。しかし、今日はもう、あの香りに惑わされないと心に決めていた)」


サキ「(お花の蜜じゃなくて、薔薇……。ユナ先輩、少し詩的になってる……。でも、スイ先輩と私の香りって……?)」


一階カフェ – 昼前。いつもより客足は少ないが、メイドたちは昨日の騒動を感じさせない、プロフェッショナルな笑顔で接客している。しかし、サキはどこか周囲の空気に違和感を覚えていた。


(非番のユナは、一階カフェの窓際の席で桜餅と抹茶ラテを楽しんでいる。サキが注文を取りに来るが、どこか周囲を警戒するような動きを見せる)


サキ「ゆ、ユナ先輩、ご注文は以上でよろしかったでしょうか……? 何か、おかしなことはありませんでしたか?」

サキ「(小声で尋ねるサキ。ミャウリ様の『危険察知レーダー』が、微かに反応しているような気がするのだ)」


ユナ「はいですの! サキさん、ありがとうございます♡ なんだか今日のサキさん、いつもより少しだけ、周りを気にされているようですのね? でも、その真剣な眼差しも、とってもお綺麗ですわ! 特にその唇の色、昨日よりも少しだけ落ち着いた桜色で、今日のサキさんの凛とした雰囲気に、とってもよくお似合いですこと!」

ユナ「(ユナはサキの唇をじっと見つめる。実はサキ、今朝、昨日の夢魔騒動で少しだけ懲りて、ハナの『魅惑の月光リップ』ではなく、自分のパーソナルカラーに合った、落ち着いたピンクベージュのティントを丁寧に塗ってきたのだ。それでも、スイ先輩に何か言われるのではないかと、内心ドキドキしていた)」


サキ「あ、ありがとうございます……! ユナ先輩こそ、今日の私服、すごく素敵です! そのポシェットも!」

サキ「(褒められて嬉しい反面、やはり周囲の気配が気になって落ち着かないサキ。特に、カフェの入口や窓の外を、無意識に確認してしまう)」


スイ「サキちゃん、お客様がお待ちかねだニャン♡ あら、ユナちゃん、その桜餅、今日も美味しそうだニャ♡ あたしにも一口くれないかニャ? 今日のは、昨日よりも甘さ控えめだと嬉しいニャン♡」

スイ「(スイがサキの背後から現れ、ユナの桜餅に手を伸ばす。そのついでとばかりに、サキの腰にそっと手を添え、守るように自分の近くに引き寄せる。その瞳は、周囲を鋭く観察している)」


サキ「(ひゃっ!? スイ先輩、また……! でも、今日のスイ先輩の手、なんだかすごく頼もしく感じる……!)」

サキ「(サキの肩がピクリと跳ねる。スイの手のひらの温かさと、その力強さが、制服越しにも伝わってくるようだ)」


ユナ「どうぞですの、スイ様! ふふ、お二人を見ていると、なんだかこちらまで心が温かくなりますわ♡ まるで、暗雲を切り裂いて差し込む月の光と、それに寄り添う星のようですの! どんな困難も、お二人なら乗り越えられそうですわ!」

ユナ「(ユナはうっとりとした表情で二人を見つめる。彼女自身も、昨日の夢魔騒動の影響で、いつもより少しだけ感受性が豊かになっているようだ)」


ハナ「(休憩時間でカフェに顔を出し、三人の様子を見て)うわーお! ユナたん、今日は完全にポエマーモード入ってるじゃん! でも、なんか分かるー! サキたんとスイ先輩、昨日の事件を乗り越えて、なんかこう……戦友みたいな絆が芽生えてる感じ? それとも、やっぱりガチ恋……? どっちにしろ、尊い! あ、ユナたん、その抹茶ラテ、今日は泡の量が完璧じゃん! 私が昨日、特別に泡立てのコツ、伝授しといたからね! ハートのラテアートも、練習すればできるようになるって!」

ハナ「(ハナはユナの隣に座り込み、親しげに話しかける。ユナも嬉しそうに微笑むが、ハナもまた、時折カフェの隅々を素早く目で確認している)」


二階バックヤード – 昼休み。休憩室にはサキとスイの二人だけ。窓の外は依然として曇り空で、部屋には静かで、どこか張り詰めた空気が漂っている。


サキ「(はぁ……今日の私、なんだかずっとソワソワしてる……。スイ先輩のことも、昨日のこと思い出しちゃって意識しすぎだし……それに、カフェでも、なんだか誰かに見られているような気がして……。ミャウリ様の占い、本当に当たるのかも……)」

サキ「(サキは一人、休憩室の隅でため息をつく。すると、静かにスイが入ってきた。その足音は、いつも以上に忍びやかだ)」


スイ「サキちゃん、ため息なんてついちゃって、どうしたのニャ?♡ もしかして、あたしのことで頭がいっぱいで、他のことが手につかないのかニャ?♡ それとも……何か、気になることでもあるのかニャ?」

スイ「(スイはサキの隣に腰を下ろし、悪戯っぽく微笑む。しかし、その瞳の奥には、真剣な光が宿っている)」


サキ「そ、そんなことありませんっ! ……でも、スイ先輩」


スイ「ん?♡ なあに、サキちゃん?♡」


サキ「昨日のこと……その……本当に、大丈夫だったんですか……? スイ先輩、すごく苦しそうでしたし……私、何もできなくて……」

サキ「(サキは勇気を出して尋ねる。スイは少しの間、サキの潤んだ瞳をじっと見つめた後、ふっと表情を和らげた)」


スイ「……ありがとう、サキちゃん。心配してくれて。あたしは大丈夫だニャン♡ それに、サキちゃんが最後に勇気を出してくれなかったら、あたしたち、もっと大変なことになってたかもしれない。サキちゃんは、あたしたちを救ってくれたヒーローだニャン♡」

スイ「(スイはそう言うと、サキの頬にそっと手を添える。その指先は、昨日とは違い、もう震えていない。確かな温もりと、感謝の気持ちが込められている)」


サキ「スイ先輩……私、そんな……」

サキ「(サキの心臓が、昨日とは違う意味で、温かく、そして力強く打ち始める。スイ先輩の瞳が、優しく、そして熱っぽく潤んでいるのが分かる。スイの唇から漂ってくるのは、もうあの危険な甘い香りではなく、スイ先輩自身の、落ち着くけれどドキドキする、大好きな香りだ)」


スイ「ねぇ、サキちゃん……昨日の、あの危うい雰囲気の中で、あたしがサキちゃんに言ったこと……覚えてるかニャ?♡ 『もっと甘くて……あたし好みの、美味しそうな唇になるニャン……♡』って。あれはね、半分はあの夢魔の香りのせいだったけど……半分は、あたしの本心だったんだニャン♡」

スイ「(スイの顔が、ゆっくりとサキに近づいてくる。サキは目を閉じることも、逃げることもできず、ただスイの言葉と、その真剣な眼差しに吸い込まれていく)」

スイ「だから……サキちゃんさえ良ければ……あたしのお気に入りのティント、サキちゃんのその可愛い唇にも、今度こそ、ちゃんと塗ってあげたいニャン♡ きっと、もっと甘くて……そして、あたしだけに見せてくれる、特別な唇になるニャン……♡ どうかしら?♡」

スイ「(スイの囁きは、もう媚薬のように意識を溶かすものではなく、サキの心の奥深くに、優しく、しかし確かに響いてくる。スイの指が、サキの唇の輪郭を、昨日よりもずっと優しく、そして慈しむようになぞり――)」


(――その時、カサリ、と休憩室の隅で、昨日よりもはっきりとした物音がした。それはまるで、誰かが意図的に何かを落としたかのような、乾いた音だった)


スイ「……ニャッ!?」

スイ「(スイは鋭い動きで音のした方を見る。その瞳は、完全に警戒態勢に入っている。サキもハッとしてそちらを見たが、昨日と同じように、一見すると特に何も見えない)」


サキ「(今の音……! 昨日と同じ……! やっぱり、気のせいじゃない!)」


スイ「……今のは、気のせいじゃないニャ。誰かいるのかニャ……!? それとも、またあの夢魔の残党か……!?」

スイ「(スイはサキを自分の背後にかばうように立ち上がり、低い声で威嚇する。その姿は、まさにサキを守る黒豹そのものだ)」


(サキは、スイの背中から、恐る恐る音のした方へ目をやった。すると、ロッカーの隙間に、昨日よりも大きく、そしてはっきりと、艶やかな黒い羽根が一枚、落ちているのを見つけた。それは、昨日の夢魔騒動の時に見た、カスミの衣装についていた飾りの羽根と、酷似していた)


「――この羽根……まさか、カスミさんの……!? 彼女、私たちを見ているの……!?――」

サキ「(サキの指先が、床に落ちていた一枚の黒い羽根に触れる。それは、まるで夜の闇を切り取ったかのような、冷たく、そしてどこか妖しい光沢を放っていた。そして、その羽根からは、微かに、あの甘く危険な夢魔の香りと、そしてもう一つ、嗅ぎ慣れない、どこか金属質で冷たい香りがするような気がした)」

サキ「(脳裏に蘇る、あの甘く危険な夢魔の香りと、それを操っていたかもしれない妖艶な女の姿。そして、ミャウリ様の言っていた『カスミの気配が濃くなっている』という言葉。全てが、この一枚の羽根に繋がっている気がした)」


(サキが声を上げようとした瞬間、休憩室の扉が静かに、しかし勢いよく開き、リュウカが涼やかな、しかしどこか険しい表情で立っていた。彼女の手には、いつもの金の扇子ではなく、見たこともない銀色の、鋭い先端を持つ扇子が握られている!)


リュウカ「あら、お二人とも、また随分と親密な雰囲気でしたこと。でも、どうやら、私たちの可愛い巣に、招かれざる“黒い蝶”が紛れ込んでいるようですわね。しかも、かなり悪趣味な置き土産までしてくれて」

リュウカ「(リュウカはサキとスイを一瞥し、そしてサキが手にしている黒い羽根に鋭い視線を送る。その瞳は、絶対的な怒りと、そして何かを断ち切ろうとするような、強い決意に燃えている)」

リュウカ「サキさん、その羽根は危険ですわ。すぐに手放しなさい。それは、ただの飾りではない。呪いと、そして持ち主の邪悪な“意思”が込められた、媒介メディアムですわ」



(リュウカの言葉に、サキはハッとして黒い羽根を床に落とす。すると、羽根はまるで生きているかのように微かに震え、黒い霧のようなものを放ち始めた!)


スイ「ニャ!? なんだこれは!? くっ……頭が……!」

スイ「(黒い霧を吸い込みそうになり、苦しげに顔を歪めるスイ)」


サキ「スイ先輩! 大丈夫ですか!?」

サキ「(スイを支えようとするサキ。しかし、自分もその霧に触れそうになり、身構える)」


リュウカ「下がりなさい、二人とも! それは、人の精神を蝕む呪いの霧。夢魔の残り香とは質の違う、もっと悪質なものですわ!」

リュウカ「(リュウカは前に進み出て、銀色の扇子を構える。その扇子からは、まるで月光のような、清らかで強力な霊気が放たれている!)『聖なる月の光よ、邪を祓い、闇を切り裂け! 月華・閃!!!』」

リュウカ「(リュウカが扇子を一閃すると、銀色の光の刃が黒い霧を切り裂き、霧は悲鳴のような音を立てて霧散した! 黒い羽根も、跡形もなく消え去った)」


(――その時、休憩室の天井裏から、けたたましい物音と、何かが暴れるような音が聞こえてきた! そして、ミャウリの勇ましい咆哮が響き渡る!)


ミャウリ「グルルルルル……シャーッ!!!(訳:見つけたニャ! カスミの手下の隠密妖魔め! 吾輩の聖域を荒らすとは、万死に値するニャ! このミャウリ様が、お前なんぞ、一瞬で浄化してくれるニャ!)」

ミャウリ「(ドガッ!バキッ!という音と共に、天井板の一部が破れ、ミャウリが何やら黒い影のようなものと激しく戦っているのが垣間見える! ミャウリの体からは、普段の愛らしさからは想像もつかないような、神々しいまでの霊気が放たれている!)」


サキ「ミ、ミャウリ様!?」

サキ「(あまりの展開に、サキは言葉を失う)」


スイ「……ミャウリ……あいつ、本当にやる時はやるニャ……。さすが、リュウカ様の眷属……」

スイ「(スイも、ミャウリの戦いぶりに目を見張る)」


(しばらくして、天井裏の物音は止み、ミャウリが誇らしげな顔で、しかし少しだけ毛並みを乱して降りてきた。その口には、小さな黒い水晶のようなものを咥えている)


ミャウリ「ふぅ……片付いたニャ。こいつが、あの黒い羽根を操って、休憩室の様子をカスミに中継してたみたいだニャ。もう大丈夫だニャン」

ミャウリ「(黒い水晶をリュウカに渡す。リュウカはそれを確認すると、静かに頷き、銀色の扇子で一振りして粉々にする)これで、しばらくはカスミも手出しできないはずだニャ。でも、油断は禁物ニャン。あいつ、相当しつこいからニャ」

ミャウリ「(サキに近づき、その足にスリスリと甘える)サキ、よくやったニャ。お前が気づいてくれなかったら、もっと厄介なことになってたかもしれないニャ。ご褒美に、吾輩のふわふわの肉球を特別に触らせてやってもいいニャン♡」


リュウカ「ええ、ミャウリ、そしてサキさん。二人のおかげで、今回も『太夫』の平和は守られましたわ。本当にありがとう」

リュウカ「(リュウカは、いつもの優雅な微笑みに戻っている。しかし、その瞳の奥には、まだ戦いの余韻と、カスミへの静かな怒りが灯っている)どうやら、カスミは本気で私たちを潰しにかかっているようですわね。夢魔を操り、呪いの道具を使い、そして隠密の妖魔まで送り込んでくるとは。彼女の目的は、この『太夫』の破壊か、それとも……わたくし自身の何かを奪うことなのか……」

リュウカ「いずれにせよ、私たちは、これまで以上に警戒を強め、そして互いの絆を深めていかなくてはなりません。今日の出来事は、そのための試金石だったのかもしれませんわね」


サキ「(ゴクリ……。今日のことは、本当に怖かったけど、でも、リュウカ様やミャウリ様、そしてスイ先輩がいてくれたから、乗り越えられたんだ……。そして、私も、少しだけ役に立てたかもしれない……。カスミさんのことは怖いけど、でも、負けたくない! この大切な場所を、みんなを守りたい!)」

サキ「(サキは、ミャウリを優しく撫でながら、強く決意する。その瞳には、もう迷いはない。スイも、そんなサキの横顔を、愛おしそうに、そして頼もしそうに見つめている)」


スイ「……サキちゃん、なんだか、すごく強くなったニャン♡ さっきのあたし、ちょっとだけ、サキちゃんに守られちゃったみたいだニャ♡ でも、それも悪くないかもニャン♡ これからは、あたしがサキちゃんを守るだけじゃなくて、二人で一緒に戦っていけたら、もっと素敵だと思わないかニャ?♡」

スイ「(サキの手を優しく握り、悪戯っぽくウインクする。その瞳には、確かな信頼と、そして揺るぎない愛情が灯っている)」


サキ「はいっ! スイ先輩となら、どんなことでも乗り越えられそうな気がします!」

サキ「(力強く頷き返すサキ。まだほんのりと甘い香りと、そして戦いの後の緊張感が残るバックヤードで、彼女たちのカオスでキラキラした日常は、新たな脅威に立ち向かう決意と共に、さらに深まっていくのだった)」



もうすぐリョウカの♡

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