第5話♡禁断のリップと甘い囁き♡ バックヤードの秘密、サキュバスの影がチラリ…?
「――この甘い香り……まさか、夢魔の…!?――」
サキの脳裏に、古い書物で読んだ妖の記述が鮮やかに蘇る。部屋を満たす、抗いがたいほど甘美で、しかしどこか背徳的な花の香り。
とろりとした瞳で自分を見つめるスイ先輩の熱っぽい視線と、他のメイドたちのいつもとは違う大胆な言動。
そして、窓の外に見えた、一瞬の黒い羽根――。
全てのピースが繋がった瞬間、サキの背筋を冷たいものが走り抜けた。
会員制茶屋「太夫」日本本店・リュウカの私室 – 早朝。空は曇りがちで、部屋にはどこか不穏な空気が漂っている。リュウカは窓辺に立ち、静かに庭の桜を見つめている。その足元で、聖獣ミャウリが落ち着かない様子で尻尾をパタパタとさせていた。
ミャウリ「ミャフン……リュウカ、今日の『太夫』は、なんだか朝から空気がねっとりとしていて、甘ったるいニャ……。まるで、熟れすぎた果実が、破裂する寸前みたいな匂いだニャ……これは、あまり良くない兆候ニャン」
ミャウリ「(リュウカの足元にすり寄り、不安げにその顔を見上げる。青い瞳には警戒の色が浮かんでいる)今日のサキの運勢は……ズバリ!『甘い罠・危険度MAX:星いつつ☆☆☆☆☆』だニャ! きっと、抗いがたい誘惑と、心惑わす“何か”に遭遇するに違いないニャン! これは、今までで一番ヤバいかもしれないニャ!」
リュウカ「まあ、危険度MAX、ですって? ミャウリがそこまで言うのは珍しいですわね。サキさんだけでなく、『太夫』全体にとって、注意が必要な一日になりそうですわ」
リュウカ「(ミャウリを優しく抱き上げ、その背中を撫でる。彼女の表情も、いつもより僅かに険しい)」
ミャウリ「うーん、そうニャ……。今日の『太夫』には、どうやら“招かれざる客”が紛れ込んでいる気配がするニャ……。そいつは、美しい羽を持ち、甘い香りを振りまき、人の心を蕩かせて夢の世界に誘う……そう、まるで“夢魔”の類いのような……。その香りは、純粋な乙女には特に強く作用するから、サキちゃんは要注意ニャ!」
ミャウリ「今日の吾輩からのバフは……『真実を見抜く心の瞳・一時開眼ニャ! ただし、MP消費激しいから、一回きりだニャ!』 これで、サキちゃんが“何か”の正体に気づく手助けになるはずだニャ! ……吾輩も、今日は本気で『太夫』を守らないとニャ!」
ミャウリ「(リュウカの腕の中で決意を込めて頷く。サキの周りに、一瞬だけ、全てを見通すような鋭い光の眼差しが現れて消えたように見えた)」
ミャウリ「それと、リュウカ! あの黒い羽根の女……カスミとかいう奴の気配も、微かにだが近くに感じるニャ……。あいつ、絶対この騒ぎに関わってるニャ! 夢魔と手を組んでるのかもしれないニャ!」
リュウカ「カスミ……やはり、彼女が関わっている可能性が高いですわね。厄介なことになりそうですわ。ミャウリ、あなたも気をつけて。サキさんたちには、わたくしからもそれとなく注意を促しておきましょう」
リュウカ「さて、わたくしも準備をしませんと。今日は、この『太夫』の真の力が試される日になるかもしれませんわね。乙女たちの純粋な輝きが、邪悪な誘惑に打ち勝つことを信じて」
ミャウリ「今日の非常食は、スタミナ満点の『特製うなぎの蒲焼丼・肝吸い付き』で頼むニャ! 夢魔退治には、精をつけないとニャ! あと、カスミを追い払うための『聖なるマタタビの結界』も準備しておいてくれニャ!」
会員制茶屋「太夫」日本本店・二階バックヤード休憩室 – 昼下がり。窓から差し込む光も、どこか気怠げに見える。部屋には、昨日よりもさらに強烈で、むせ返るような甘い花の香りが充満している。それは、嗅いだ者の理性を麻痺させ、本能を剥き出しにするような、危険な芳香だった。**
サキ「はぁ……リュウカ様のあの言葉……『あなたにとって、“美しさ”とは…』って、やっぱり難しいなぁ……。私にとっての美しさって、なんだろう……キラキラしたコスメとか、可愛い猫耳とか……それとも、スイ先輩の、あの……ドキドキするような眼差し、とか……?ぽ♡」
サキ「(頬杖をつき、窓の外をぼんやりと眺めている。昨日のリュウカ様の言葉と、昨日のガールズトークの興奮が、まだ頭の中でぐるぐると回っているようだ。そして、今日のこの濃厚な甘い香りのせいで、思考がうまくまとまらないのを感じていた)」
スイ「んふふ、サキちゃん、また難しい顔して、可愛い溜息ついてるニャン♡ そんなんじゃ、せっかくの可愛いお顔が、熟れすぎた桃みたいに蕩けちゃうニャ♡ もしかして、まだリュウカ様からの“恋の宿題”のことでも考えて、一人でキュンキュンしてたのかニャ?♡」
スイ「(いつの間にか背後に音もなく立っていたスイが、サキの肩にそっと顎を乗せる。その吐息は熱っぽく、甘い香りがサキの鼻腔を直接刺激する。サキの肩が、電気ショックを受けたようにピクンと跳ねる)」
サキ「ひゃっ!? ス、スイ先輩! い、いつの間に……!? 今日は特に気配がなさすぎます! まるで、甘い霧に紛れて現れたみたい……!」
サキ「(慌てて距離を取ろうとするサキだが、スイの腕が力強く腰に回り、有無を言わさず引き寄せられる。スイ先輩の体温が、いつもよりずっと熱く感じる。そして、この強烈な甘い香り……やっぱり何かある、絶対におかしい!)」
スイ「ついさっきからニャ♡ サキちゃんの甘い悩みが、あたしを呼んだのかもニャン♡ それよりサキちゃん、最近なんだか、前にも増して色っぽくなったんじゃないニャ?♡ その潤んだ瞳も、ほんのり上気した頬も、まるで誰かの“甘い魔法”にでもかかって、今にも蕩け落ちそうな蜜色の果実みたいにニャ♡ ……ねぇ、その魔法、あたしがかけたって言ったら、信じてくれるかしら?♡」
スイ「(スイはサキの耳元で、ねっとりとした声で囁き、熱い吐息を吹きかける。サキの顔がカッと赤くなり、心臓が早鐘を打つ。スイの瞳も、いつも以上に熱を帯び、どこか飢えたような光を宿している)」
サキ「ま、魔法だなんて! そ、そんなわけないじゃないですかぁ! 私、そんなに変わってませんってば!」
サキ「(内心:うぅ、スイ先輩、今日も距離感がバグってるどころの騒ぎじゃないです! そして、この甘い香り、本当にヤバい! 頭がクラクラして、スイ先輩の言葉が全部、脳みそに直接響いてくるみたい……ぽ♡ これは、ミャウリ様の言ってた『甘い罠』に違いない!)」
ハナ「あー! スイ先輩、またサキたんのこといじめてるー! でも、私も分かるー! サキたん、最近なんか雰囲気変わったよね? ちょっと大人っぽくなったっていうか、なんかこう……内側から色気が滲み出てるっていうか!? ヤバい、私もドキドキしてきたんですけど!」
ハナ「(パタパタと派手な音を立ててハナが休憩室に入ってくる。手にはキラキラと妖しく輝く小箱。彼女のイエベ春の肌も、いつもより血色が良いように見える)」
ユナ「わたくしもそう思いますですの! サキさん、なんだか最近、キラキラしたオーラが増していて、目が離せませんわ……? まるで、月の女神様が降臨したかのような、神々しいまでの美しさですわ♡」
ユナ「(ユナもハナに続いて入室。ほんのり頬を染め、うっとりとした、どこか夢見るような表情でサキを見つめている。彼女のブルベ夏の透明感のある肌が、甘い香りのせいか、いつもより艶っぽく見える)」
サキ「ふぇ、フェロモン!? わ、私なんかがそんな……! 皆さん、今日のこの甘い匂いのせいですよ、きっと!」
サキ「(ハナとユナにまで真顔で言われ、サキはさらに顔を赤くして俯く。しかし、心のどこかで、そう言われるのが少し嬉しい自分もいることに気づいていた)」
スイ「んふふ、やっぱりみんなもそう思うニャ?♡ サキちゃんは、気づいていないかもしれないけれど、日に日に魅力的になっているのよ。あたしたち『太夫』の、そしてあたしだけの、秘密兵器になるかもしれないニャン♡ その蕾、あたしが優しく開かせてあげるから、ね♡」
スイ「(スイは満足そうに艶然と微笑み、サキの桜色の髪を優しく撫でる。その指先からは、微かに甘い香りが移ってくるようだ)」
ハナ「ねぇねぇ、見て見てー! この間話してた『魅惑の月光リップ・夢魔ブレンド(禁断症状注意♡)』、またちょっとだけ秘密のルートで手に入ったんだけどさー!」
ハナ「(ハナがキラキラした小箱をパカリと開けると、中には月光をそのまま固めたような、妖艶な輝きを放つリップスティックが一本、蠱惑的なオーラを放って鎮座している。それは、昨日よりもさらに強い甘い香りを漂わせていた)」
ハナ:「これ、やっぱり効果すごくない!? 昨日、ほんのちょっとだけ、いつもより多めに塗ってみたらさー、ギルドのVIP客の月詠社長ったら、いつもは超クールなのに、いきなり『君の瞳に乾杯…いや、君の唇に、僕の全てを捧げたい』とか、ポエムみたいなこと言い出しちゃって! マジでドン引き……いや、ちょっとキュンとしたんだけど!♡」
ハナ「(昨日の出来事を思い出し、興奮したように早口でまくし立てる。その瞳は、いつもより潤んでいて、どこか焦点が合っていないように見える)」
ユナ「まあ! そんなに効果があるのですか!? わたくしも、先日ハナ様からほんの少しだけお借りして、唇にちょんちょんと乗せてみましたら、一階のカフェで常連の奥様方に『ユナちゃん、今日は一段と輝いていて、まるで恋する乙女みたいね!何か良いことあったの? お相手はどんな方?』なんて、質問攻めに遭ってしまいましたの! カエデ様にも『今日のユナは、一段と華やかで、目が離せないな…』って、熱っぽい視線で見つめられてしまいましたし! きゃっ♡ 思い出すだけで、胸がドキドキして、カエデ様に抱きしめられたくなっちゃいますぅ♡」
ユナ「(ユナは思い出したのか、両手で頬を押さえて嬉しそうに、そしてどこか大胆に身悶える。その姿は、普段の天然さとは違う、妖艶な色香を漂わせている)」
サキ「やっぱりあのリップ、何か特別な力が……。人をこんなに変えてしまうなんて……でも、そんなに効果があるなら、ちょっとだけ……試してみたい気も……します……」
サキ「(サキは期待と不安、そして抗いがたい好奇心が入り混じった表情で、妖しく輝くリップを見つめる。この甘い香りが、サキの理性を少しずつ溶かしていくのを感じていた)」
スイ「あらあら、ハナちゃんたら、また危ないクスリに手を出してるのニャ♡ でも、ちょっと興味あるかニャ♡ 人を惹きつける“香り”や“魔力”っていうのは、使い方次第で最高の媚薬にも、破滅を招く毒にもなるからニャン♡ 特に、この『太夫』のように、美しい魂が集まる場所には、そういう不思議な力が作用しやすいって言うしニャ♡ ねぇ、サキちゃん、もしかしたらあの天井の隅に、小さな妖精さんがいて、私たちに魔法の粉を振りまいているのかもしれないわよ?♡」
スイ「(スイは意味ありげに、そしてどこか挑戦的に、天井の隅をチラッと見上げる。その視線の先には、昨日とは違い、ほんの僅かに黒い羽根のようなものが、一瞬だけ舞って消えたように見えた――サキだけが、それを目撃した)」
サキ「(天井の隅…? 黒い羽根……!? スイ先輩、やっぱり何か見えてるんだ……! 妖精さんじゃなくて、もっと……不吉な何か……?)」
サキ「(サキもつられて天井を見上げるが、今はもう何も見えない。しかし、先ほどの黒い羽根の残像が、サキの脳裏に焼き付いて離れない。そして、ミャウリ様の言っていた『美しい羽を持つ夢魔』という言葉が、頭の中で警鐘を鳴らし始める。ミャウリ様のバフ、『真実を見抜く心の瞳』が、今まさに開こうとしているのかもしれない)」
ハナ「でしょでしょー! このリップ、もしかしたら異世界の月の魔力とか、人の心を操る夢魔の吐息とか、そういうヤバいのが込められてるのかもねー! だって、塗った瞬間からなんか体がポカポカして、普段は言えないような大胆なことも言えちゃう気分になっちゃうんだもーん♡ あ、もしかして、太夫に住み着いてるっていう、セクシーでいたずら好きな夢魔のお姉さん(リリィちゃんって呼ぼうかな♡)の仕業とか?♡ きゃはは!」
ハナ「(ハナはリップを指先でくるくると回しながら、呂律が回らないような、しかしどこか楽しげな様子で言う。彼女のイエベ春の肌が、興奮で上気しているのが分かる)」
スイ「夢魔のお姉さん、かニャ?♡ ふふ、それも可愛い想像でいいかもしれないニャン♡ でも、もし本当にそうなら、そのお姉さんは、私たちをどこへ連れて行こうとしているのかしらね?♡ 甘い夢の先にあるのは、天国なのか、それとも……♡」
スイ「(スイはクスクスと喉を鳴らすように笑うが、その瞳の奥には、いつものからかうような色だけでなく、どこか見定めようとするような、鋭い光が宿っていた)」
(その時、休憩室の空気がふわりと揺らめき、今までで最も濃厚で、むせ返るような甘い香りが部屋中を満たした。それはまるで、熟れすぎた果実が破裂し、夜に咲く禁断の花々の蜜が溢れ出したかのような、抗いがたいほどに官能的で、しかしどこか背徳的な香りだった。その香りを吸い込んだ瞬間、メイドたちの理性のタガが、完全に外れた――)
サキ「(うっ……この匂い、さっきよりずっと、ずっと強い……! 頭が、クラクラする……思考が、溶けていくみたい……ぽ♡)」
サキ「(サキは無意識に自分の胸元を強く押さえる。心臓が、破裂しそうなくらい激しく鼓動している)」
ユナ「あら……あらら……♡ なんだか、とっても良い香りが……してきましたですの……♡ ふわぁ~……ふわふわぁ~……なんだか、カエデ様のあのたくましい胸板に、思いっきり顔をうずめて、そのまま……そのまま……食べちゃいたいくらい、愛おしくなっちゃいましたぁ……♡ あと、お背中も……カエデ様の全部、わたくしのものにしたいですぅ……♡」
ユナ「(ユナの瞳がとろりと潤み、恍惚とした表情で宙を見つめながら、自分の羽衣をぎゅっと握りしめる。その口調も、普段のおっとりとしたものではなく、どこか切羽詰まったような、情熱的なものに変わっている)」
ハナ「やっば! この香り、超絶アガるんですけどー! キタコレ! なんか、今ならどんなイケメンだろうが、美女だろうが、この私、ハナ様の魅力で全員メロメロにして、ハーレム作れる気がする! よーし、今夜あたり、例の月詠社長と、リシア先輩まとめて呼び出して、三人で秘密のお茶会しちゃおっかなー! あの二人の驚く顔、見てみたいし! あと、あの無口なオーナーシェフも、実は私のこと気になってるんじゃないかなーって! うふふ、あはははは♡ 私ってば、罪な女!♡」
ハナ「(ハナは急に立ち上がり、鏡の前で自分の髪をくしゃくしゃとかき上げ、挑発的で妖艶な笑みを浮かべる。普段の計算高い彼女とは全く違う、野生動物のような奔放さと、危険な色気が漂っている)」
スイ「んふふふ……サキちゃん……♡ 愛しい、愛しいサキちゃん……♡」
スイ「(スイはゆっくりと、しかし抗えない力でサキに近づき、その華奢な両肩を掴む。スイの瞳も、いつもよりさらに熱っぽく、そしてどこか切なげに、飢えたように潤んでいる。その瞳には、サキ以外の何も映っていないようだ)」
スイ「サキちゃんにも、この『魅惑の月光リップ・夢魔の口づけバージョン』、たっぷり塗ってあげるわね♡ きっと、もっともっと可愛く、そして大胆になって……あたしから、もう二度と離れられなくなるニャン……♡ ねぇ、サキちゃん……♡ あたしのものに、なってくれるんでしょう?♡」
スイ「(スイの指が、サキの震える唇の輪郭をゆっくりと、そしてねっとりと、まるで味わうようになぞる。その背徳的な感触に、サキの体はビクンと大きく震え、甘い息が漏れる。抵抗しようにも、体が金縛りにあったように動かない)」
サキ「ス、スイ先輩……だ、だめ……です……♡ そんな、そんなことされたら……私……私……どうにかなっちゃいそうですぅ……♡ スイ先輩の、匂いが……甘くて……苦しい……です……♡」
サキ「(サキは涙目でスイを見上げるが、スイの強い眼差しと、部屋中に満ちる甘く危険な香りに、思考が完全に麻痺していくのを感じる。スイの顔が、ゆっくりと、そして確実に近づいてくる――もう、逃げられない――!)」
「――この甘い香り……まさか、夢魔の…!?――」
(スイの唇が、サキの唇に触れる寸前――サキの脳裏に、ミャウリの言葉と、天井で見た黒い羽根、そして古い書物で読んだ夢魔の記述が、稲妻のように結びついた! ミャウリのバフ、『真実を見抜く心の瞳』が、ついに発動したのだ!)
(夢魔――美しい姿で現れ、甘い香りと囁きで人の理性を奪い、精気を糧とする妖。その香りは、特に純粋な魂を持つ者や、恋する乙女に強く作用するという……!)
(そして、あの黒い羽根……あれは、カスミさんのものでは……!? カスミさんが、この夢魔を呼び寄せた、あるいは協力している……!?)
サキ「(そうだ……この香りは、ただの甘い花の香りじゃない! これは、夢魔の……夢魔の仕業なんだ! そして、この騒ぎの裏には、きっとカスミさんが……! みんな、操られてる! スイ先輩も、私も……!)」
サキ「(全身に鳥肌が立つと同時に、不思議な力が湧き上がってくるのを感じた。恐怖よりも、仲間を、そしてスイ先輩を守りたいという強い想いが、サキを突き動かした!)」
サキ「ス、スイ先輩! 目を覚ましてください! この香りは危険です! 私たち、何かに操られています!」
サキ「(サキは最後の力を振り絞り、スイの肩を強く掴み返し、叫んだ! その声は、いつものか細いものではなく、凛とした響きを持っていた。サキの瞳にも、迷いのない強い光が宿っている!)」
スイ「……ニャ……? サキ……ちゃん……?」
スイ「(サキの必死の叫びと、その瞳の力強さに、スイの瞳にほんの僅かだが、理性の光が戻ったように見えた。しかし、まだ夢魔の香りの影響は強く、その表情は苦しげに歪んでいる)」
ハナ「え……? 操られてるって……何のことぉ? サキちゃん、私たち、今すっごく楽しい気分なのに……邪魔しないでよぉ……♡」
ハナ「(まだ夢見心地な様子で、不満げにサキを睨む)」
ユナ「サキさん……? でも、この香り……とっても心地よいですのよ……? まるで、天国にいるみたい……♡」
ユナ「(うっとりとした表情で、まだ状況を理解できていない)」
サキ「ダメです! このままじゃ、みんな、本当に取り返しのつかないことになっちゃいます! 私……私、どうしたら……!」
サキ「(焦るサキ。しかし、どうすればこの状況を打開できるのか、見当もつかない。その時、ふと、リュウカ様の言葉を思い出した――『美しいものには、時に見えない“意思”が宿るもの。それが善意とは限りませんわ。あなたたちには、その“意思”に惑わされず、真実を見抜く目を養ってほしいのです』)」
サキ「(そうだ……リュウカ様なら、きっと……! でも、どうやって助けを……!?)」
(――その瞬間、カシャン!と大きな音がして、休憩室の窓ガラスに、何かが勢いよくぶつかった! 見ると、窓の外に、聖獣ミャウリが必死の形相で張り付き、肉球で窓をバンバンと叩いている! そして、そのすぐ後ろから、リュウカが静かに、しかし有無を言わせぬオーラを放って現れた! 彼女の手には、あの金の扇子が握られている!)
ミャウリ「ミャーーーゴーーー!!!(訳:サキ! 無事かニャ!? よくぞ気づいたニャ! さすが吾輩のバフだニャ! 今、リュウカ様が助けに行くから、もう少しだけ耐えるのニャー!)」
リュウカ「……騒がしいですわね。どうやら、招かれざる“蝶”が、わたくしの可愛い小鳥たちを誑かしているようですわ。全く、悪趣味な置き土産を残してくれたものですこと。カスミ……あなたの仕業かしら?」
リュウカ「(リュウカの声は静かだが、その瞳には、今まで見たこともないような、冷たい怒りの炎が燃えている。彼女が金の扇子をゆっくりと開くと、部屋に満ちていた甘く危険な香りが、一瞬にして霧散し、清浄な桜と白檀の香りが辺りを包み込んだ!)」
(リュウカの登場と金の扇子の力、そしてミャウリの活躍(窓を叩き割らんばかりの勢い)により、休憩室に満ちていた夢魔の香りは急速に薄れていった。メイドたちは、まるで悪夢から覚めたかのように、一人、また一人と正気を取り戻していく)
スイ「……はっ!? わ、私……サキちゃんに、何をしようと……!?」
スイ「(我に返ったスイは、サキの肩を掴んでいた自分の手に気づき、血の気が引くのを感じる。そして、サキの涙目の潤んだ瞳を見て、深い後悔と自己嫌悪に襲われる)」
ハナ「え……うそ……私、何言ってたんだっけ……? 社長とリシア先輩まとめてお茶会……? オーナーシェフにアタック……? うわー! 黒歴史確定なんですけどー!」
ハナ「(頭を抱えて床に蹲る。自分の大胆すぎる発言を思い出し、羞恥で死にそうになっている)」
ユナ「わ、わたくし……カエデ様の胸板に顔をうずめたいだなんて……は、恥ずかしいですぅ……! しかも、食べちゃいたいって……! そんなこと、口が裂けても言えませんのに……!」
ユナ「(顔を真っ赤にして、羽衣で顔を隠してしまう。あまりの羞恥に、消えてなくなりたいと思っている)」
サキ「(ふぅ……助かった……。リュウカ様、ミャウリ様、ありがとうございます……!)」
サキ「(サキは安堵の息をつき、その場にへたり込みそうになる。しかし、スイ先輩の苦しそうな顔を見て、思わず手を伸ばす)スイ先輩……大丈夫です。私、怒ってませんから。あれは、あの香りのせいだって、分かってますから」
サキ「(スイの手をそっと握るサキ。その手は、まだ少し震えている)」
リュウカ「皆様、ご無事でしたか。今回は、少々厄介な“置き土産”に、皆様の心が弄ばれてしまったようですわね。わたくしの監督不行き届きです。申し訳ありませんでした」
リュウカ「(メイドたちに深々と頭を下げるリュウカ。その姿に、メイドたちは恐縮する)」
リュウカ「この香りの元凶は、おそらく異世界から紛れ込んだ“夢魔の類い”でしょう。人の心の隙間に入り込み、甘い夢を見せて精気を奪う、厄介な存在です。そして、その背後には、やはりカスミの影が見え隠れしていますわ。彼女の目的はまだ不明ですが、この『太夫』を、そしてわたくしたちを試しているのかもしれません」
ミャウリ「(窓から部屋に入り込み、リュウカの足元にすり寄る)まったくニャ! あのカスミとかいう女、本当に悪趣味だニャ! 吾輩の聖なる肉球で、引っ掻き回してやりたいニャ! でも、サキがよく頑張ったニャ! あの状況で正気に戻るなんて、大したもんだニャ! 吾輩のバフも、無駄じゃなかったみたいで嬉しいニャン!」
ミャウリ「(サキに近づき、その頬にスリスリと甘える。サキはミャウリを優しく抱きしめる)」
リュウカ「ええ、本当に。サキさん、あなたの勇気と、真実を見抜こうとする強い心が、私たちを救ってくれましたわ。ありがとう」
リュウカ「(サキに優しく微笑みかける。その微笑みは、いつものミステリアスなものではなく、心からの感謝と労いに満ちている)」
リュウカ「今回の件で、皆様も学んだことでしょう。美しさや快楽には、時に危険な罠が潜んでいるということ。そして、それに打ち勝つためには、自分自身の心を強く持ち、仲間と手を取り合うことが何よりも大切だということを」
リュウカ「この『太夫』は、ただ美しいだけの場所ではありません。様々な試練を通して、真の美しさとは何か、真の絆とは何かを学び、成長していく場所でもあるのです。今日の出来事も、きっとあなたたちをさらに強く、そして美しくしてくれることでしょう」
スイ「リュウカ様……サキちゃん……ごめんなさい。私、サキちゃんにあんな……」
スイ「(俯いたまま、消え入りそうな声で謝罪するスイ。その肩は小さく震えている)」
サキ「スイ先輩、本当に大丈夫ですから! 私、スイ先輩のこと、信じてますから! それに、あの時のスイ先輩、すごく……すごく、情熱的で……ちょっとだけ、ドキドキしちゃいました……ぽ♡」
サキ「(スイの手をぎゅっと握り返し、少し顔を赤らめながらも、真っ直ぐにスイを見つめる。その瞳には、確かな信頼と、そして新たな想いの萌芽が見える)」
スイ「……サキちゃん……!」
スイ「(サキの言葉と、その強い眼差しに、スイの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。それは、後悔の涙か、安堵の涙か、それとも……)」
ハナ「うぅ……サキたん、マジ天使……! 私も、もっとしっかりしないとダメだよね! こんなことでメソメソしてられないっしょ!」
ハナ「(涙を拭い、力強く立ち上がる。その瞳には、新たな決意が宿っている)」
ユナ「サキさんの勇気、本当に素晴らしかったですわ! わたくしも、もっと強く、そして美しい天女になれるように、頑張りますですの!」
ユナ「(サキに尊敬の眼差しを向ける。その顔には、もう迷いはない)」
リュウカ「ふふ、良いお顔になりましたわね、皆様。それでは、わたくしから、お口直しのハーブティーを淹れましょうか。今日の香りは、『悪夢を払い、清らかな心を取り戻す月の雫』にいたしましょう。そして、ミャウリには、頑張ったご褒美に、特大のマグロステーキを」
ミャウリ「ミャーーーオ!(訳:やったニャー!マグロステーキ! さすがリュウカ様、話が分かるニャン!)」
サキ「(うん、今日のことは本当に大変だったけど、でも、みんなの絆が深まった気がする! そして、私も、少しだけ強くなれたかもしれない! これからも、この『太夫』で、たくさんのことを学んで、スイ先輩やみんなと一緒に、もっともっと輝いていきたいな! あの甘い“香り”の正体は分かったけど、カスミさんの目的はまだ謎のまま……。でも、きっと、私たちなら乗り越えられるはず!)」
サキ「(まだほんのりと甘い香りが残るバックヤードで、サキは新たな決意を胸に、仲間たちと顔を見合わせ、微笑み合う。彼女たちのカオスでキラキラした日常は、また一つ大きな試練を乗り越え、さらに輝きを増していくのだった)」
|д゜)チラッ♡書いちゃった♡