表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/34

第2話♡金の扇子と開かれる扉 ~二階は甘くて危険な香り~

会員制茶屋「太夫」日本本店・二階 サキの控室 – 翌朝


サキ「(ふぅ……。昨日は本当に色々あったなぁ……スイ先輩にあんなにドキドキさせられて、リュウカ様には意味深なことを言われて……。二階って、どんな世界が広がってるんだろう……。あの甘くてクラクラした香りも、まだ少しだけ鼻の奥に残ってる気がする……ぽ♡)」


(コンコン、と控えめなノックの音)


サキ「は、はいっ!」

サキ「(慌てて制服の襟を正す。今日から二階の見習い、気を引き締めないと!)」


スイ「おはよう、サキちゃん。昨夜はちゃんと眠れたかしら? あの“香り”で、うなされたりしなかった?」

スイ「(部屋に入ってくるなり、サキの顔を心配そうに覗き込む。その瞳は朝の日差しを受けて、猫のようにきらりと光る)顔色は悪くないみたいね。よかったわニャン♡」


サキ「ス、スイ先輩! おはようございます! だ、大丈夫です! ちょっとドキドキしてなかなか寝付けませんでしたけど、変な夢は見ませんでしたから!」

サキ「(うわ、今日のスイ先輩もやっぱり距離感が近いです! でも、なんだか昨日よりも少しだけ優しい雰囲気……? それとも、私が慣れてきちゃったのかな?)」


スイ「ふふ、そう。ならいいのよ」

スイ「さ、今日はあなたに二階の“お仕事”の基本を教えてあげるわ。VIPのお客様への失礼のないご挨拶、それからコンシェルジュの方々がスムーズにお仕事できるよう、細やかなサポートを心がけること。覚悟はいいかしら?」

スイ「(サキの肩をポンと軽く叩き、励ますように微笑む)最初は誰でも緊張するものよ。でも、サキちゃんなら大丈夫。私がついてるからニャ♡」


サキ「は、はいっ! よろしくお願いします、スイ先輩!」

サキ「(スイ先輩の笑顔、やっぱり素敵だなぁ……。なんだか勇気が湧いてきました!)」


**シーン:二階・コンシェルジュ専用ラウンジへ続く廊下 – 静かで洗練された空間。昨日ほどではないが、微かに芳しい花の香りが漂っている**


スイ「ここが二階のメインフロア。コンシェルジュの方々がお仕事をしたり、お客様との初回面談に使われる個室があったりするわ」

スイ「私たちは、ここでコンシェルジュの方々やお客様が心地よく過ごせるように、お茶の準備をしたり、お部屋の清掃をしたり、時には緊急の連絡を取り次いだりするの。一階のカフェとはまた違った緊張感があるから、気を引き締めてね。日本のお客様と異世界のお客様が鉢合わせしないように、予約管理や動線もすごく厳格なのよ」


サキ「は、はい……!」

サキ「(わぁ……廊下もすごく綺麗で、なんだか美術館みたい……。一階とは全然雰囲気が違います……! 床も壁も、なんだかキラキラしてる……? 予約管理とか動線とか、なんだか大変そう……!)」


(ラウンジの扉の前に到着する)


スイ「ここがコンシェルジュ専用のラウンジ。まずは、リシア様とハナ様にご挨拶しましょうか。お二人とも、ギルドにとってなくてはならない素晴らしいコンシェルジュよ。特にリシア様は、私たちメイドの間でも一目置かれる、憧れの的なの」


サキ「(ごくり……。リシア様とハナ様……! スイ先輩や他のメイドさんたちから、すごい人たちだって噂は聞いてるけど……どんな方たちなんだろう……ドキドキする……!)」


二階・コンシェルジュ専用ラウンジ – 午前中。大きな窓から柔らかな光が差し込み、上質な調度品が並ぶ、洗練された空間。


(スイに促され、サキが緊張した面持ちでラウンジに入る。中では数人の女性たちが、ホログラム端末を操作したり、資料に目を通したりと、静かにしかし集中して仕事をしている。その姿は皆、自信に満ち溢れ、美しい。昨日よりも落ち着いているとはいえ、部屋にはまだ微かに芳しい花の香りが漂っている)


サキ「(わぁ……ここがコンシェルジュの方々のラウンジ……すごく綺麗でおしゃれ……。一階のカフェとは全然違う、キリッとした空気……! 皆さん、すごく集中してる……!)」


(サキが周囲を見回していると、ひときわ目を引く銀髪の女性が、ホログラム端末から顔を上げ、ちょうどこちらに気づいたように目が合う。その涼やかな視線に、サキは思わず息を呑む)


スイ「(サキに小声で囁く)サキちゃん、あの方がリシア様よ。リュウカ様もその手腕には絶大な信頼を寄せている、ギルドでもトップクラスのコンシェルジュ。どんなお客様の心も見抜き、最高の“美的体験”を創造すると言われているわ。私たちメイドの間でも、その的確な仕事ぶりと美貌は、ちょっとした伝説になっているくらいなの」


サキ「(はっ……! あの方が、リシア様……! スイ先輩や他のメイドさんたちが噂していた、あの……! オーラが、すごい……! まるで、近寄れないくらい美しい氷の華みたい……!)」


リシア「(静かに立ち上がり、サキとスイの方へ歩み寄ってくる。その歩き姿さえも優雅で、微かに上質な香水の香りが漂う)スイ、おはよう。そちらは……新人のサキさんね。リュウカ様からお話は伺っているわ」

リシア「(サキの目の前で立ち止まり、ふわりと微笑む。その笑顔は、先ほどのクールな印象とは少し異なり、どこか親しみやすさを感じさせる)」


スイ「はい、リシア様。今日から二階の見習いとして、サキがお世話になります」


サキ「は、初めまして! 新人メイドのサキと申します! リシア様、どうぞよろしくお願いいたします!」

サキ「(緊張で声が裏返りそうになるのを必死で堪える。目の前のリシア様は、噂以上に美しくて、なんだか目が合わせられないくらい……!)」


リシア「ふふ、そんなに緊張しないで、サキさん。リュウカ様がね、『とても素直で可愛らしい子が入ったのよ』って、嬉しそうに話していたわよ」

リシア「(サキの桜色の猫耳に視線を移し、優しく微笑む)その猫耳、すごく可愛いわね。あなたによく似合ってるわ。その色、桜の花びらみたいで素敵ね。もしかして、ご自身でデザインを考えたりしたの?」


サキ「あ、ありがとうございます……! り、リシア様に褒めていただけるなんて……! あ、いえ、これは制服の一部でして……でも、そう言っていただけて、すごく嬉しいです!」

サキ「(リシア様の笑顔、すごく綺麗……! ちょっとドキドキしちゃった……ぽ♡ しかも、猫耳褒めてくれた! 私、この猫耳お気に入りなんです!)」


リシア「そう、制服なのね。デザインも素敵だわ。これからよろしくね、サキさん。分からないことがあったら、私やスイに遠慮なく聞きなさいね。ここではチームワークも大切だから」

リシア「(内心:ふむ……確かに、リュウカ様が言うように、素直そうな瞳をしているわね。そして、この純粋さは……磨けば面白い輝きを見せるかもしれない。少し、興味が湧いてきたわ。それに、この子の纏う雰囲気……どこか懐かしいような、不思議な安らぎを感じる……気のせいかしら)」


(そこへ、明るい声と共に、ふわふわとした黒髪の女性が小走りで近づいてくる)


ハナ「あー! リシア先輩、スイ先輩、おっはよーございまーす! って、もしかして、その子が昨日メイドたちの間で『奇跡の原石ちゃん現る!』って噂になってた、超絶美少女新人のサキちゃん!? きゃー! やっと会えたー!」

ハナ「(分厚い資料の束を抱え、弾むような足取りで現れる。太陽のような明るい笑顔が印象的だ)サキちゃん、はじめまして! 私、ハナっていうの! ギルドのトレンド情報収集と可愛いもの発掘担当(自称)! よろしくねっ♡」

ハナ「(サキの手を両手でがしっと握り、ぶんぶんと振る。その勢いにサキは少しよろめく)ねぇねぇ、その猫耳、すっごく可愛い! 桜の刺繍も超オシャレじゃん! どこのブランドのやつ? 私もそういうの欲しいなー! 今度一緒にお店見に行かない? 最新の猫耳ショップ、リサーチ済みなんだから!」


サキ「は、初めまして、ハナさん! こちらこそ、よろしくお願いします! あ、この猫耳は制服の一部でして……あ、お店、ぜひご一緒したいです! 猫耳大好きなんです!」

サキ「(わ、わわっ! ハナさん、すごくフレンドリーで明るい人! でも、握手する力が意外と強い……! そして、やっぱり距離感が近いですぅ! でも、なんだかお友達みたいに話しかけてくれて、嬉しいかも!)」


リシア「ハナ、少し落ち着きなさい。新人さんが驚いているわ。お客様へ接するように、もう少しエレガントな振る舞いを心がけてちょうだい。あなたのその明るさと行動力は長所だけれど、TPOは弁えなさいといつも言っているでしょう?」


ハナ「えー、だってサキちゃん可愛いんだもーん! ついテンション上がっちゃいましたー! てへぺろ♡ ねぇ、リシア先輩、今日の鳳様の初回面談の資料、最終チェックお願いできますか? 最新の銀座限定アフタヌーンティーの情報と、鳳様がお好きそうな隠れ家バーのリスト、バッチリ入れておきましたんで! きっと鳳様も『ハナちゃん、さすがだね!』って褒めてくれますよ!」


リシア「ええ、後で目を通しておくわ。あなたは月光院様の『シークレット茶会~月の雫に願いを込めて~』の準備に集中して。例の“特別な効果のあるお香”の手配は問題ないでしょうね? あれは月光院様が今回のプログラムで特に楽しみにされているものだから、手違いがあってはギルドの信用に関わるわよ」


ハナ「はーい、了解でーす。月光院様のお香もバッチリですよー! 異世界の希少な品ですけど、私のスペシャルルートでなんとか確保しましたから! あ、サキちゃん、今度一緒にカフェ巡りしようよ! 銀座のSNS映えする最新スイーツ、たーっぷり教えてあげる! 美味しいものは正義だからね!」


サキ「は、はい! ぜひお願いします!」

サキ「(リシア様とハナさん……タイプは全然違うけど、どっちもすごいコンシェルジュさんなんだろうなぁ……。お仕事の話は専門的で難しいけど、なんだかすごくかっこいい……! 私もいつか、あんな風に誰かのために何かを創り出せるのかな……)」


スイ「(サキの肩を優しく叩く)さ、サキちゃん。まずは私たちメイドの仕事場であるバックヤードに行って、お茶でも飲みながら、もう少し二階のルールについて説明するわね。コンシェルジュの方々のお仕事の邪魔になってもいけないし。それに、さっきリシア様も言ってたけど、チームワークも大切だから、他のメイドさんたちにもちゃんと挨拶しないとね」


サキ「はい、スイ先輩!」

サキ「(コンシェルジュの皆さんに深々と一礼し、スイ先輩の後についてラウンジを出る。まだドキドキしてるけど、なんだかワクワクもしてきた……! 二階って、本当にすごい場所なんだ……! 私もここで、何かを見つけられるかもしれない!)」


二階の廊下 – ラウンジから少し離れた場所。先ほどよりも花の香りが和らいでいる。


(サキとスイが二人きりになる)


リュウカ「あら、サキさん。二階の雰囲気にはもう慣れたかしら? それとも、まだ少し胸が高鳴っているところ?」

リュウカ「(いつの間にか、廊下の角から静かに現れる。その微笑みは優雅だが、どこか全てを見通しているようだ。彼女が通った後には、微かに白檀の香りが残る)」


サキ「リュ、リュウカ様! お疲れ様です! は、はい、まだ緊張してますけど、スイ先輩に色々教えていただいて……コンシェルジュの方々、皆さんすごくて……圧倒されちゃいました!」


リュウカ「そう、それは良かったわ。コンシェルジュの方々は皆、個性的で優秀な方たちばかり。それぞれが独自の美意識と哲学を持って、お客様に最高の体験を提供しようと日々研鑽を積んでいるのよ。きっと多くのことを学べるでしょう」

リュウカ「(サキの瞳をじっと見つめる。その眼差しは厳しくも温かい)焦らず、あなたのペースで、この『太夫』の美しさと……そして、ほんの少しの“秘密”に触れていってくださいね。何か困ったことがあれば、いつでもわたくしか、スイに相談なさい。あなたはもう、私たち『太夫』の大切な仲間なのだから」

リュウカ「では、わたくしはこれで失礼するわ。良い一日を過ごしてちょうだい、サキさん」

リュウカ「(静かに一礼し、再び音もなく去っていく。その姿は、まるで美しい幻のようだ)」


サキ「(リュウカ様……やっぱり不思議な方だなぁ……。“秘密”って、一体なんだろう……? でも、なんだかすごく優しく見守ってくれてる気がする……。「仲間」って言ってもらえて、胸がじーんとしちゃった……!)」


スイ「ふふ、リュウカ様はいつもあんな感じよ。でも、サキちゃんのこと、きっと特別気にかけてくださってるわ。あの方の“お眼鏡にかなう”って、本当にすごいことなのよ。自信持っていいわニャ」

スイ「さ、本当にバックヤードに行きましょうか。美味しい桜餅ラテ、特別に淹れてあげるニャン♡ きっと、昨日の“香り”のドキドキも、少しは落ち着くはずよ。今日は色々と見て回ったから、少し疲れたでしょう? 甘いものでも食べて、元気出しましょ。午後の仕事も頑張らないとね!」


サキ「は、はいっ! ありがとうございます、スイ先輩!」

サキ「(スイ先輩の優しさに、また胸がぽかぽかしてきた……。二階はすごい場所だけど、スイ先輩がいれば、なんだか頑張れそうな気がする! 次はどんな素敵なことが待ってるんだろう……! 桜餅ラテ、すごく楽しみだな……ぽ♡)」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ