第19話 ♡『梅雨空の憂鬱と、輝き続けるための秘密会議♡』
「――今日はお休み！ やったー！ …って言いたいけど、外はずっと雨予報だし、なんだか気分もジメジメしちゃうなぁ。こんな日は、お家でゆっくり映画でも見るのが一番かな？ 『太夫』のみんなは、雨の日でもキラキラしてるけど、何か特別な梅雨対策とかしてるのかな？ 特に、髪の毛がうねっちゃうのが悩みなんだよね…。スイ先輩のあのサラサラ黒髪、雨の日でも全然変わらないの、本当にすごいなぁ。何か秘密があるのかな……？ よーし、今度こっそり聞いてみよう！――」（サキちゃん、今日はお休み）
梅雨入り間近の、とある平日。「太夫」日本本店のバックヤード休憩室は、窓の外のどんよりとした曇り空とは裏腹に、いつも通りの華やかさと、どこか梅雨の時期特有のしっとりとした落ち着きが混在する空気に包まれていた。今日はサキがお休みのため、少しだけメンバー構成がいつもと違う。
**【リュウカとミャウリの朝 ～雨の気配と、乙女たちの美意識～】**
ミャウリ「（リュウカの執務室の窓辺で、大きなあくびを一つ。外の湿度が高いのか、自慢の純白の毛が心なしか少しだけボサッとしているのを気にしているようだ）にゃ～……。リュウカよ、どうにもこうにも、このジメジメとした空気は好かんなぁ。吾輩のこの神々しい毛並みが、うねってしまうではないか。まったく、梅雨というのは、乙女にとっても、そして我々のような高貴なる聖獣にとっても、美の大敵じゃニャ」
ミャウリ「（ため息をつきながらも、キラリと目を光らせる）今日の『太夫』バックヤードの『梅雨対策ビューティートーク炸裂度＆お悩み共有共感指数』は、間違いなく星4つ☆☆☆☆じゃ！ この時期特有の美容の悩みは尽きんからのう。特に、髪のうねり、メイク崩れ、肌のベタつき…乙女たちの戦いは続くのじゃ！ 今日はサキがおらんが、残されたメンバーで、きっと熱い情報交換会が繰り広げられることじゃろう。そして、ユナには…『新たな梅雨対策アイテム発見＆先輩からの意外なアドバイスゲット確率：80％』！ これは、またユナが新たな知識を得て、キラキラ度をアップさせる予感じゃニャン♡」
ミャウリ「今日の吾輩からの、梅雨を乗り切るためのスペシャルバフは、『湿気になんて負けないニャ！最強美髪＆美肌キープパワー発動ニャ！』だ！ どんな天気だろうと、乙女は常に美しく輝いておるのが一番じゃからのう！」
リュウカ「（ミャウリの毛並みを気にする様子に、小さく微笑みながら、そっと手櫛で整えてあげる）まあ、ミャウリ。あなたでも、この時期の湿気は気になるのですね。確かに、梅雨の季節は、髪や肌の悩みが増えるものですわ。でも、そんな時だからこそ、乙女たちの美意識はさらに磨かれ、新しい工夫や知恵が生まれるのかもしれませんわね」
リュウカ「（窓の外の、今にも泣き出しそうな空を見上げ、静かに言葉を続ける）今日のバックヤードでの語らいが、彼女たちにとって、この少し憂鬱な季節を楽しく、そして美しく乗り切るための、有益な情報交換の場となりますように。そして、ユナさんが新たな発見をされるのでしたら、それは素晴らしいことですわ。サキさんがお休みでも、きっと彼女たちの間には、いつもと変わらない温かい絆があることでしょう」
**【会員制茶屋「太夫」日本本店・バックヤード休憩室 – 梅雨入り前のビューティートーク】**
（開店前のバックヤード休憩室。今日はサキがお休みのため、ユナ、ハナ、そして珍しく朝からミラが顔を揃えている。リシアは二階で朝のミーティングの準備中だ。テーブルの上には、ハナが持ち込んだ最新の梅雨対策コスメのサンプルや、ユナが故郷から持ってきた「湿気で髪が広がらないようにする秘伝の椿油」などが並んでいる）
ユナ「はぁ……。最近、どうにも髪がまとまらなくて困っておりますの…。わたくしの故郷『妖の島』は、比較的湿度が安定しているのですが、こちらの世界の梅雨という季節は、本当に髪にとっては試練ですわね。せっかく朝、綺麗に結い上げても、お昼過ぎにはどうしてもアホ毛がぴょんぴょんと…」
ユナ「（少し困ったような表情で、自分の艶やかな黒髪をそっと撫でる。普段はしっとりとまとまっている彼女の髪も、心なしか少しだけ広がって見える）」
ハナ「あ～、わかるぅ～！ ユナぴょんも悩んでるんだね！ この時期の髪のうねりとか広がりって、本当にテンション下がるよねぇ～。私も毎朝、アイロンと格闘してるけど、湿気に負けて午後には爆発ヘアになっちゃうこともしばしば…。せっかく可愛くキメても、髪型が残念だと全てが台無しじゃんね？」
ハナ「（大げさに肩を落とし、自分のふわふわとした髪を指でくるくるといじりながら嘆いている。彼女にとって、ヘアスタイルはファッションの重要な一部なのだ）」
ミラ「へっ、お前ら、そんなことで悩んでんのかよ。あたしなんかは、どうせ汗かきゃ一緒だろってんで、雨の日はもう開き直って、バッサリとポニーテールにしちまうけどな。ま、確かに、自慢のこの一本角が湿気で微妙に位置がズレやすくなるのは、ちょっとイラッとするけどな」
ミラ「（腕を組み、少し呆れたように二人を見ているが、その言葉の端々からは、彼女なりに梅雨の不快さを感じていることが窺える。そして、頭の小さな一本角を無意識に指で触っている）」
ユナ「ポニーテール、ですのね…！ それはとても活動的で、ミラ様らしくて素敵ですわ！ でも、わたくしはやはり、しっとりとしたまとめ髪が好きでして……。ハナ様は、何か特別なヘアケアアイテムなどをお使いですの？」
ユナ「（ミラの潔さに感心しつつも、自分の理想のヘアスタイルへの憧れは捨てきれないようだ。ハナの持つ最新情報に期待の眼差しを向ける）」
ハナ「もちろんよ！ このハナ様を誰だと思ってるの！ 梅雨対策ヘアケアアイテムの情報なら、お任せあれ！ 最近のお気に入りはね～、この『瞬間サラツヤ♡湿気ブロックヘアオイルミスト』！ 朝、スタイリングの最後にシュシュってするだけで、髪の表面をコーティングして湿気の侵入をブロックしてくれるの！ しかも、めちゃくちゃ良い香りで、雨の日のどんより気分も吹き飛ばしてくれる優れものなんだから！」
ハナ「（得意げに、キラキラとしたボトルを取り出し、実際に自分の髪にシュッと吹きかけてみせる。ふわりと甘く爽やかなフローラル系の香りが広がる）」
ハナ「あとはね～、夜のケアも大事！ シャンプーの後に、この『ディープモイスト♡集中補修ヘアマスク』でしっかり髪に潤いを閉じ込めて、ドライヤー前には必ず洗い流さないトリートメントをつけること！ これだけで、翌朝の髪のまとまりが全然違うんだから！」
ユナ「まあ、ヘアオイルミストに集中補修ヘアマスクですのね……！ なんて素晴らしい響きなのでしょう！ わたくしもぜひ試してみたいですわ！ こちらの『椿油』も、わたくしの故郷では古くから髪を守るために使われているのですが、少し香りが独特でして……」
ユナ「（ハナの言葉に目を輝かせ、熱心にメモを取ろうとする。そして、自分が持ってきた小さな瓶に入った椿油を少し申し訳なさそうに見せる）」
ミラ「椿油ねぇ。ばあちゃんが使ってたのを思い出すぜ。ま、自然のもんは体にいいって言うしな。香りは…まぁ、慣れじゃねぇの？ あたしは別に嫌いじゃねぇけどな、そのちょっと土っぽい感じ」
ミラ「（ユナの椿油を興味深そうに眺める。意外にも伝統的なものへの理解があるようだ）」
（そこへ、スイがいつものように静かに、しかし今日はどこか雨の日のアンニュイな雰囲気を纏いながら休憩室に入ってきた。手には、お気に入りの黒猫柄の折り畳み傘を持っている）
スイ「……ん？ 何か、女子力高そうな会議でもしてるのかニャ？ 梅雨時の美容談義かニャ？ ご苦労なこったニャ」
スイ「（少し眠そうな、それでいてどこか全てを見透かしているような瞳で、テーブルの上に広げられたコスメやヘアケア用品を眺める。その艶やかな黒髪は、湿度の高い日でも驚くほどサラサラとまとまっている）」
ハナ「あ、スイ先輩、おはよーございまーす！ そうなんですよ～、今、梅雨の時期のヘアケアについて熱く語ってたところなんです！ スイ先輩の髪って、雨の日でも全然うねらないし、いつもサラサラつやつやじゃないですか～？ 何か特別な秘密のケアとかしてるんですか～？ あったらぜひぜひ、このハナちゃんにもこっそり教えてほしいんですけど～♡」
ハナ「（スイの完璧な髪に気づき、ここぞとばかりに質問攻めにする。スイの美しさの秘密には、常に興味津々だ）」
ユナ「スイ様、おはようございます！ わたくしも、ぜひスイ様の美しい黒髪の秘訣をお伺いしたいですわ！ この時期、どうしても髪が言うことを聞いてくれなくて……」
ユナ「（スイの登場に、少し緊張しながらも、真剣な眼差しで教えを乞う）」
スイ「……秘密、ねぇ。別に大したことはしてニャいぞ。強いて言うなら、シャンプーの後は、必ず冷風でキューティクルをしっかりと引き締めることと……あとは、まぁ、これかニャ？」
スイ「（少しだけ面倒くさそうに、しかしどこか自慢げに、自分のバッグから小さなシルク製のナイトキャップを取り出して見せる。それは、上品な黒色で、猫の耳のような小さな飾りがついている可愛らしいデザインだ）」
スイ「夜寝る時に、これを被って寝るだけニャ。シルクは髪の摩擦を抑えて、湿度も適度に保ってくれるから、朝起きた時の髪のまとまりが全然違うニャンぞ。ま、あたしみたいな美しい黒猫には、当然の嗜みだがニャ♡」
スイ「（フン、と少しだけ得意げに鼻を鳴らす。その言葉には、確かな自信と、ほんの少しのサキへのアピールも含まれているような、いないような…）」
ハナ「えええーっ！？ ナイトキャップ！？ 何それ、めちゃくちゃお洒落じゃないですかー！ しかもシルク製で猫耳付きって、可愛すぎ！ スイ先輩、そんな秘密兵器隠し持ってたなんて、ズルイですよ～！」
ハナ「（スイの意外なアイテムに、驚きと羨望の声を上げる。自分もすぐに真似しようと心に決めたようだ）」
ユナ「まあ、シルクのナイトキャップですのね……！ なんて優雅で、そして効果的なのでしょう！ わたくしも、ぜひ試してみたいですわ……！ 故郷の天女たちも、美しい羽衣で髪を包んで眠ることがあると聞いたことがございます」
ユナ「（スイの美意識の高さに改めて感心し、その知恵を吸収しようと熱心に耳を傾ける）」
ミラ「へぇ、ナイトキャップねぇ。お前、意外と女子みてぇなことしてんだな。ま、確かにその髪、いつ見ても綺麗だもんな。納得だぜ」
ミラ「（少し意外そうな顔をしつつも、スイの努力を素直に認めるような言葉を口にする）」
（スイは、皆の反応に少しだけ満足そうな表情を浮かべ、次にメイク崩れ対策や、雨の日でも気分が上がるファッションアイテムの話題へと、ガールズトークはさらに盛り上がっていく。ハナはウォータープルーフの最強アイライナーを熱弁し、ユナは「妖の島」の雨の日の装い（水を弾く特殊な織物でできた美しい羽衣など）について語り、ミラは「どうせ濡れるなら、いっそ派手なレインブーツで思いっきり水たまりを蹴散らしてやるぜ！」と豪語する）
（そんな中、スイはふと、今日お休みのサキのことを思い出していた。雨の日は、あのドジっ子な後輩は、家でどんな風に過ごしているのだろうか。もしかしたら、髪がうまくまとまらなくて、一人で困っているかもしれない。……いや、あいつのことだから、きっと窓の外の雨音を聞きながら、のんびりとお気に入りの小説でも読んでいるのだろうか。そんなことを考えると、自然と口元が緩むのを感じるスイだった）
（――梅雨入り間近の「太夫」のバックヤードでは、乙女たちの美への探求心と、雨の季節を乗り切るための知恵が、キラキラとした会話と共に交わされていた。それぞれの個性が光る梅雨対策は、聞いているだけでも楽しく、そしてお互いの絆をまた少しだけ深めたようだ。今日のこの秘密会議で得た知識とパワーで、彼女たちはきっと、どんな空模様の日でも、自分らしく輝き続けることだろう。そして、お休みのサキもまた、この雨上がりの空に架かる虹を待つように、新たな一週間への小さな期待を胸に、穏やかな休日を過ごしているのかもしれない――それは、梅雨の晴れ間を心待ちにするような、優しくて希望に満ちた、日常の物語）
（休憩室の片隅、スイが置いた黒猫柄の折り畳み傘の先から、ぽたり、と一滴だけ雫が落ちたのを、聖獣ミャウリが目敏く見つけ、それを前足でちょいと弾いて遊んでいた。「ふむ、スイの奴、サキがおらんとなると、心なしか口数が少ないようじゃニャ。ま、それもまた一興か。しかし、あのナイトキャップ、なかなか良いアイデアじゃニャいか。吾輩も、リュウカ様に特注で『聖獣ミャウリ様専用・最高級シルク製安眠アイマスク・マグロ柄』でも作ってもらおうかニャ？ これで梅雨の夜も快眠間違いなしじゃ！ぐふふふ！」と、新たな快適睡眠グッズのアイデアに、ご満悦な表情で喉を鳴らしているのだった――）
