第14話 ♡『秘密のレシピと、雨宿りのティータイム♡』
「――最近、リシア先輩に教えてもらったミストのおかげで、お肌の調子がすっごく良いんだよね! スイ先輩にも、『なんだか最近、綺麗になったニャ。その調子だニャン』って、頭をポンポンされちゃったし……えへへ、嬉しいな。今日は、ユナさんが故郷の『妖の島』から持ってきた、珍しいハーブティーを淹れてくれるんだって! どんな味がするんだろう……? あっ、窓の外は急に雨……。こんな日は、温かいお茶と、みんなとの楽しいガールズトークが、一番のご馳走かもしれないな!――」
水曜日の午後。「太夫」日本本店のバックヤード休憩室は、窓の外で突然降り始めたサーッという激しい雨音とは対照的に、どこか穏やかで温かい、心地よい空気に包まれていた。
サキは、午後のシフトが始まる前の僅かな休憩時間を利用して、ユナが特別に淹れてくれるという、故郷のハーブティーを楽しみに待っていた。
リシアのアドバイスのおかげで、最近肌の調子が絶好調なサキ。心なしか、毎日のメイクのノリも良く、気分も自然と上向きだ。
そんな時、休憩室のドアが静かに開き、リシアが少し困ったような、それでいてどこか楽しそうな、複雑な表情で入ってきた。
**【リュウカとミャウリの午後 ~雨音の調べと、芽生える好奇心~】**
ミャウリ「(リュウカの執務室の大きな窓辺で、ガラスをリズミカルに叩く雨粒を眺めながら、少し退屈そうにふさふさの尻尾をぱたぱたと左右に振る)にゃ~……。リュウカよ、この雨では、お気に入りの路地裏パトロールもままならんニャ。まったく、こんな日は、ほかほかの美味しいお魚でも食べながら、ふかふかのクッションの上でぬくぬくと昼寝するに限るのじゃが……あぁ、極上のマグロが恋しいのぅ」
ミャウリ「(ふと何かを思いついたかのように、ピクリと自慢の耳を立てる)おや? 今日のユナの『秘伝のおもてなしスキル発揮&大成功度』は、ニャンと星5つ☆☆☆☆☆じゃニャいか! あの娘、今日は何かとびっきり特別なもので、バックヤードの仲間たちを驚かせ、そして癒やすつもりのようじゃな! そして、サキには…『未知の味覚体験&新たな美容豆知識ゲット確率:95%』! これは、またまたサキにとって、心も体も喜ぶ嬉しい発見がありそうな、素晴らしい予感じゃニャン♡」
ミャウリ「今日の吾輩からの特別バフは、『雨の日だって心は日本晴れ&美味しいもの引き寄せパワーMAXニャ!』だ! こんな薄暗い日だからこそ、日常の中に潜む小さな幸せを、しっかりと見つけ出すのじゃぞ!」
リュウカ「(ミャウリの言葉に小さく、しかし楽しそうな微笑みを浮かべ、静かに窓の外の雨音に耳を澄ませる)まあ、ユナさんがそんな素敵な力を見せてくれるのですね。雨の日は、確かに少しだけ物憂げな気持ちになることもありますけれど、温かいお茶や、気心の知れた人との穏やかな語らいは、心を優しく解きほぐし、穏やかにしてくれるものですわ」
リュウカ「(ふと、自分の机の引き出しから、一枚の古風な押し花の栞を取り出し、それを慈しむように眺める)…雨音は、時に遠い過去の記憶を呼び覚ます、優しい調べのようでもありますわね。ユナさんの故郷の特別なお茶が、バックヤードの皆にとって、心温まる特別なひとときをもたらしますように。わたくしも、その香りを想像するだけで、少し楽しみですわ」
**【会員制茶屋「太夫」日本本店・バックヤード休憩室 – 水曜日の雨宿り】**
(休憩室には、サキとユナ、そして少し遅れてやってきたハナも加わり、中央のテーブルを和気あいあいと囲んでいる。ユナは、持参した可愛らしい桜柄の刺繍が施された巾着袋から、乾燥した色とりどりの花びらや、細かく刻まれた葉っぱのようなものを丁寧に取り出し、美しいガラス製のティーポットにそっと入れている。部屋には、甘く爽やかで、今まで嗅いだことのないような、どこか神秘的な香りがふんわりと漂い始めていた)
サキ「わぁ、ユナさん、これがいま淹れてくれようとしているお茶なんですか? すごく綺麗な色とりどりの花びら……! 見ているだけでうっとりしちゃいます! それに、とってもいい香りもしますね! どんな味がするんだろう、すっごくドキドキします!」
サキ「(大きな瞳をキラキラと輝かせながら、ユナの優雅な手元を興味津々で見つめる。リシア先輩に教えてもらったミストのおかげで、肌の調子が良く、心なしか表情もいつもより明るく、自信に満ちているように見える)」
ユナ「はい、サキさん。これは、わたくしの故郷『妖の島』でしか採れない、『七色の虹花』という、とても特別なハーブを使った秘伝のお茶ですの。それぞれの色の花びらが、異なる癒やしの力と、ほんのりとした自然な甘み、そして心安らぐ香りを持っているのですわ。今日は特別に、いつもお世話になっている皆さんのために、故郷から大切に持ってきたんですの」
ユナ「(優しく、そして少し誇らしげに微笑みながら、沸かしたてのお湯をティーポットにそっと注ぐ。その所作は、まるで大切な儀式を執り行っているかのように丁寧で、見ているだけで心が落ち着く美しさがあった)」
ハナ「へぇ~っ! 妖の島の秘伝ハーブティー!? なにそれ、めちゃくちゃ気になるんですけどー! しかも『七色の虹花』って、名前からしてもう可愛すぎ! 美容効果とか、あったりするわけ!? 例えば、飲んだら一瞬で毛穴レスの赤ちゃんみたいな、つるつるスベスベ肌になっちゃうとか!?」
ハナ「(身をぐっと乗り出し、期待に満ちたキラキラした目でユナに詰め寄る。相変わらず美容へのアンテナはビンビンで、新しい情報には目が無いようだ)」
(そこへ、リシアが少し濡れた肩を上品なレースのハンカチでそっと拭いながら、休憩室に入ってきた。手にしていた最新型の薄型タブレット端末には、何やら複雑な化学式のようなものがびっしりと表示されている)
リシア「あら、皆さんお揃いですのね。こんにちは。外は本当に急などしゃ降りで、ほんの少しですが足止めされてしまいましたわ。……あら? ユナさん、これはまた、今まで嗅いだことのない、非常に興味深い香りのハーブティーですわね。グラスに注がれた色合いも、まるで夕焼けのようですし……もしかして、あなたが以前、わたくしに少しだけお話ししてくださった、『妖の島』にのみ自生するという、あの……」
リシア「(ユナが淹れているお茶の芳醇な香りにすぐに気づき、少し驚いたように美しい眉をわずかに上げる。いつものクールで知的な表情の中に、ほんの少しだけ抑えきれない好奇の色が浮かんでいるのが見て取れる)」
ユナ「まあ、リシア様! おかえりなさいませ! はい、お察しの通り、こちらは『七色の虹花』のお茶でございますの。よろしければ、リシア様もご一緒にいかがですか? きっと、お気に召していただけるのではないかと存じますわ」
ユナ「(リシアの登場を心から喜び、早速お茶を勧める。先日の美容液の件以来、ユナはリシアに対して深い尊敬と親しみを抱いているようだ)」
リシア「ええ、喜んでいただきますわ。ありがとう、ユナさん。……その『七色の虹花』、確か手持ちの古い文献によれば、摂取した者の感情のバランスを調和させ、内面から自然な輝きと活力を引き出す効果があると記されていましたが……その具体的な有効成分の構成や、人体(あるいは、あなたのような妖の身体)への詳細な作用機序については、残念ながらまだ解明されていない部分が多い、非常にミステリアスで興味深い薬草ですのよね」
リシア「(ユナから優雅にティーカップを受け取りながら、まるで大学教授のような専門的な口調で分析を始める。その美しい切れ長の目は、ティーカップの中の美しい琥珀色の液体と、立ち上る複雑な香りを、鋭く、そしてどこか楽しそうに観察している)」
サキ「へぇ~! リシア先輩、そんな難しいことまでご存知なんですね! さすがです! 感情のバランスを整える……なんだか、今の私にぴったりかもしれないです! 最近、ちょっとだけ、気持ちがフワフワしちゃうことがあったので……」
サキ「(リシアの博識ぶりに素直に感心しながら、自分の分のティーカップを両手で大切そうに受け取る。温かい湯気と共に、さらに豊かで複雑な香りがふわりと立ち上り、心が不思議と安らぐのを感じる)」
ハナ「え、なにそれ、超すごくない!? 感情のバランス整えて、内側から輝くって、もうそれだけで最強じゃん! 女子の味方じゃん! 私も早く飲みたい! ユナちゃん、はよはよ! 私の分もプリーズ!」
ハナ「(待ちきれないといった様子で、目を輝かせながら自分のティーカップをユナに差し出す。その姿は、新しいオモチャをねだる子供のようだ)」
(ユナは、皆ににこやかに、そして嬉しそうに微笑みかけ、それぞれのカップに美しい琥珀色に輝くお茶を丁寧に注いでいく。お茶からは、様々な花々の蜜のような甘い香りに加えて、どこか柑橘系のフレッシュで爽やかな香りや、ミントのような清涼感のある香りも微かに感じられた)
サキ「(そっと一口飲んで)わぁ……! おいしい……! すごく不思議な味です! 甘いのに、後味はスッキリしていて、それに、なんだか体が内側からポカポカ温まってきて、心がふわっと軽くなるみたい……! 初めての感覚です!」
サキ「(感動のあまり、思わず大きな声で感嘆の声を上げる。初めて体験する神秘的で複雑な味わいに、すっかり心を奪われてしまったようだ)」
ハナ「んん~~~っ! 何これ、めちゃくちゃ美味しいんですけどー! ヤバい、止まらないかも! しかも、飲んだ瞬間から、なんかお肌が内側からツルツルになった気がするんだけど! これって気のせい!? いや、絶対に気のせいじゃないって! これ、絶対なんか美肌効果あるってば!」
ハナ「(大げさなくらいに感動し、自分の頬を何度も優しく触りながら、その効果を必死に実感しようとしている。その目は真剣そのものだ)」
リシア「……確かに、非常に興味深く、そして奥深い味わいですわね。複数のハーブが絶妙なバランスで配合されているため、味覚への刺激のタイミングや持続性が複雑に絡み合い、それでいて驚くほど調和のとれた、唯一無二の風味を生み出している……。そして、この微かに感じる心地よい清涼感は、精神をリフレッシュさせ、集中力を高める効果もありそうですわ。……ユナさん、もしよろしければ、後学のために、この『七色の虹花』の乾燥ハーブのサンプルを少量だけ分けていただけないかしら? 可能な範囲で、その有効成分を詳細に分析してみたいのですけれど」
リシア「(静かに目を閉じ、お茶の複雑な風味と香りをじっくりと堪能するように味わいながら、冷静に、しかし熱っぽく分析する。その美しい口元には、珍しく、はっきりとした満足そうな笑みが浮かんでいる)」
ユナ「はい、もちろんですわ、リシア様! どうぞ、お持ちくださいませ! 皆様に喜んでいただけて、わたくし、本当に嬉しいです! このお茶は、わたくしたち天女にとっては、心を落ち着かせ、神聖な舞の集中力を高めるためにも、古来より欠かせない、大切な飲み物なのですの」
ユナ「(心から嬉しそうに微笑み、リシアにレースのハンカチに包まれたハーブの小袋を恭しく渡す。自分の故郷の文化が、尊敬するリシアに認められたようで、誇らしげな表情だ)」
スイ「(いつの間にか音もなく休憩室に入ってきており、壁に寄りかかりながら皆の楽しげな様子を面白そうに眺めていた)……へぇ、なんだか美味そうなもん飲んでるじゃニャいか。ユナ、悪いが、あたしにも一杯くれニャいか? こんな薄暗い雨宿りには、温かいお茶が一番だニャン♡ 体も心も温まるしな」
スイ「(ニヤリと口角を上げ、空いている席に自然に腰を下ろす。その切れ長の瞳は、サキが幸せそうにお茶を飲んでいる姿を、優しく、そしてどこか慈しむように見つめている)」
サキ「あ、スイ先輩! いつの間にいらしたんですか! はいっ、このお茶、本当にすごく美味しいですよ! ユナさんが、故郷から持ってきて淹れてくれたんです!」
サキ「(スイの突然の登場に少し驚きながらも、すぐに嬉しそうな笑顔を向ける。スイ先輩と一緒にいると、どんなお茶も、いつもよりずっと美味しく感じられそうな気がした)」
(ユナがスイのためにもう一杯、心を込めてお茶を淹れ、バックヤードの休憩室は、窓の外を叩く優しい雨音と、ハーブティーの芳醇で不思議な香り、そしてメイドたちの和やかで楽しげな会話に、温かく包まれた。リシアはユナとハーブの成分や異世界の薬草について専門的な議論を交わし、ハナは「このお茶を飲んだら、明日のメイクのノリが過去最強レベルになるはず!」と一人で盛り上がり、サキはスイと他愛ないおしゃべりを楽しみながら、心から温まる特別なティータイムを過ごすのだった)
(スイは、サキが隣で嬉しそうに淹れてもらったお茶を、ゆっくりと一口飲むと、ふっと安堵の息をつき、満足そうに目を細めた)
スイ「……うん、確かに美味いニャ。なんだか、心が落ち着く、不思議な味だ。……サキちゃん、あんたも最近、なんだか肌の調子が絶好調みたいじゃニャいか。このお茶の効果も、あるのかニャ? それとも……やっぱり、週末にあたしがあげた、あの『お揃いリップ』のおかげかニャ?♡ ん?」
スイ「(サキの顔を茶化すように覗き込み、悪戯っぽく、そして少しだけ甘い声で囁く。その声は、優しい雨音に紛れて、サキの耳にだけ心地よく響いた)」
サキ「(スイの言葉と、吐息がかかるほどの距離感に、顔を真っ赤にして俯いてしまう。でも、心の中は、温かいお茶と、スイ先輩の優しい言葉、そして週末の甘い記憶で、ポカポカと幸せな気持ちで満たされていた。雨の日も、悪くないかもしれない、なんて思ってしまうほどに)」
(――水曜日の午後。「太夫」のバックヤードでは、突然の雨がもたらした、ささやかなティータイムが、乙女たちの心を優しく、そして温かく繋いでいた。ユナの故郷から届いた『七色の虹花』のハーブティーは、新たな美容の知識と、心安らぐひととき、そしてちょっぴり甘くて秘密めいた会話を、彼女たちに運んできたようだ。この雨上がりの空に架かる虹のように、彼女たちの心もまた、しっとりと潤い、そしてより一層澄み渡っていくのだろうか――それは、虹の彼方に優しく続く、まだ誰も知らない、甘美な物語の予感)
(休憩室の窓際の、一番日当たりの良い棚の上で、聖獣ミャウリが、ユナがリシアに渡した『七色の虹花』のハーブが入った小袋から、ほんの僅かにこぼれ落ちた小さな花びらを一つ、こっそりと器用に前足でつまみ上げ、興味深そうに口に運んでいた。「むぐ……ふむ、これはなかなかどうして……! 確かに、体の内側からポカポカと温まり、なんだか吾輩のこの神々しい純白の毛並みが、さらに一層フサフサツヤツヤになりそうな、素晴らしい予感がするニャ! よぉし、今度サキの奴を上手く唆して、この『七色の虹花』を毎日吾輩のために淹れさせるよう、巧妙に仕向けてみるかニャ! もちろん、その手間賃としてのお礼は、とびっきりの『幸運バフ・超絶お肌ツヤツヤ&毛並みサラサラバージョン』でどうじゃ! うひひ!」と、ちゃっかり自分の美容と健康、そしてサキへの新たな(一方的な)ミッションを思い描き、ご満悦な表情で喉を鳴らしているのだった――)