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第1話♡囁く媚薬と、猫耳たちの狂詩曲(ラプソディ)

「ねぇ、もしあなたの隣の席の子が、突然甘い吐息で誘ってきたら、どうする?」


はじめまして。あるいは、どこか別の路地裏でお会いしたことがあるかもしれませんね。

この物語は、きらびやかなネオンと古式ゆかしい提灯が妖しく交錯する街の片隅、

秘密の茶屋「太夫」を舞台にした、ちょっぴり(いえ、かなり?)カオスで、

とびきり甘美で、ほんのり危険なガールズギルドのお話。


可愛い猫耳メイドたちの、キラキラした日常と、

扇子の影に隠された、ミステリアスな非日常。

百合色の花が咲き乱れ、フェティッシュな香りが脳髄を蕩かす、魅惑の空間へようこそ。


もしあなたが、日常にちょっとした刺激と、美しいものへの飽くなき探求心をお持ちなら。

もしあなたが、女の子たちの秘密の会話や、不意に見せる素顔にドキドキしたいなら。

そしてもしあなたが、運命に翻弄されながらも、自身の「好き」を貫こうとする彼女たちの生き様を、

そっと覗き見てみたいと思うなら――。


さあ、深呼吸して。

桜と白檀、そして得体の知れない甘い媚薬の香りが、あなたを新たな世界の扉へと誘います。

次にページをめくった瞬間、あなたはもう、ただの読者ではいられないかもしれません。


だって、この茶屋では、いつだって何が起こるか分からないんですから。


――それでは、美と絆、そしてちょっぴりのカオスが織りなす、秘密の茶会ギルドの幕開けです。

最後までお付き合いいただければ、望外の喜びですわ♡



「――ひぃぃぃっ!? や、ヤバい人です! 絶対にヤバい人ですぅ!!――」


 甘く濃厚な花の香りが鼻腔を突き刺す。目の前に音もなく現れた妖艶な女は、薄絹のローブの奥から、まるで獲物を見つけた蛇のように、ねっとりとした視線を私に絡ませてくる。

 逃げたいのに、体が金縛りにあったように動かない。

 すぐそばで、黒豹を思わせる鋭い気配が、低く唸るような威嚇の声を上げた。

 その声に重なるように、どこか遠くから、澄んだ鈴の音がチリン、と微かに響いた気がした――。


会員制茶屋「太夫」日本本店・リュウカの私室


– 早朝。障子越しに柔らかな朝日が差し込み、部屋には静謐な空気が流れている。リュウカは文机に向かい、今日のギルドの予定を確認している。その足元には、美しい白い毛並みの猫、聖獣ミャウリが丸くなっていたが、不意にむくりと起き上がった。


ミャウリ「ミャフ~ン……。リュウカ、今日の『太夫』は、なんだか朝から空気が騒がしいニャ……。何か面白いことでも起こるのかニャ?」

ミャウリ「(大きなあくびを一つすると、リュウカの膝に軽々と飛び乗り、その顔をじっと見上げる。青い瞳はどこか期待に満ちている)」


リュウカ「あら、ミャウリ。おはようございます。そうですね……今日は新しいメイドさんが、初めて二階のお仕事に挑戦する日ですわ。少し、緊張しているかもしれませんね」

リュウカ「(ミャウリの喉を優しく撫でる。ミャウリは気持ちよさそうに目を細める)」


ミャウリ「ほう、新人ちゃんかニャ。それは楽しみだニャ! よーし、吾輩が特別に、今日の新人ちゃんの運勢を占ってしんぜようニャン!」

ミャウリ「(リュウカの膝の上でくるりと向きを変え、窓の外の景色に肉球をかざす。その肉球が微かに光を帯びたように見えた)えーっとニャ、今日の新人ちゃんは……おっと、いきなり“甘い誘惑”に遭遇する予感ニャ! しかも、かなり強烈なやつだニャ! これは……『恋の試練度:星みっつ☆☆☆』ってとこかニャ?」


リュウカ「まあ、恋の試練、ですって? 新人さんには少し荷が重いかもしれませんわね」

リュウカ「(微笑みつつも、その瞳には一瞬、案じるような色が浮かぶ)」


ミャウリ「大丈夫だニャ! ちゃーんと、頼りになる“黒い影”が守ってくれるみたいだしニャ。それに、今日の新人ちゃんには、吾輩から特別なバフを授けておこうニャン!」

ミャウリ「えいっ! 『幸運の猫パンチ・クリティカルヒット確率10%アップニャ!』 これで、何か困ったことがあっても、きっと良い方向に転がるはずだニャ!……多分ニャ♡」

ミャウリ「(得意げに小さな前足で空を切る。すると、サキの知らないところで、彼女の周りにキラキラとした光の粒子が一瞬だけ舞った)」


リュウカ「ふふ、ありがとうございます、ミャウリ。あなたのバフは気まぐれだけれど、時に驚くような奇跡を起こしますものね」

リュウカ「では、その“甘い誘惑”とは、具体的にはどのようなものかしら? 少しだけ教えていただけます?」


ミャウリ「うーん、それはニャ~……秘密だニャン♪ あまり教えすぎると、占いの面白さがなくなっちまうからニャ。でも、ヒントとしては……そうニャ、まるで美しい羽を持つ“夜の蝶”が、甘い蜜に誘われてやってくる……そんな感じかニャ? その蝶の鱗粉には、ちょっぴり毒があるかもしれないから、新人ちゃんは気をつけるのニャ」

ミャウリ「(意味ありげに片目を瞑るが、すぐにお腹が「ぐぅ~」と鳴る)……あ、それよりリュウカ! 今日の吾輩の朝餉は、昨日水揚げされたばかりの新鮮な特上マグロの、さらに厳選された大トロ部分を使った、特製ネギトロ丼で間違いないだろうニャ!? 占いでMPミャウリパワーを使い果たしたから、お腹がペコペコなんだニャ~♡♡♡」


リュウカ「ええ、ええ、もちろん全て手配してありますわ。あなたのその食欲と、鋭い占いのどちらが『太夫』の真の守護者なのか、時々分からなくなることがありますけれど」

リュウカ「(優しくミャウリの頭を撫で、立ち上がる)さて、わたくしそろそろ準備をしませんと。今日も一日、この『太夫』で、たくさんの美しい物語が、そしてちょっぴりのハプニングが、華やかに紡がれますように」


会員制茶屋「太夫」日本本店・一階バックヤード – 昼下がり。窓から差し込む木漏れ日が、床に優しい模様を描いている。どこからか、いつもより少しだけ濃厚な花の香りが漂ってくる。



サキ「はぁ~、やっと一息つけましたぁ。今日のランチタイム、なんだかお客様が多くて、嵐みたいでしたね!」

サキ「桜餅ラテ、一体何杯お出ししたかな……もう、指がぽきってなりそうですぅ。でも、お客様が『美味しい』って言ってくださるのが嬉しくて、ついつい頑張っちゃいました! なんだか今日は、いつもよりツイてる気がするんです! ぽ♡」

サキ「(ミャウリから幸運のバフがかかっているとは露知らず、しかし何となく気分が良い)」


???「あらあら、新人ちゃん、もうお疲れかしら? まだまだ序の口よ。本当の嵐は、これからかもしれないわね?」


サキ「ひゃっ!? えっ、だ、誰です……って、スイ先輩!?」

サキ「(うわ、びっくりした! いつからそこにいらしたんですか!? 本当に気配がなさすぎます! まるで猫みたい……って、先輩、本当に猫っぽいところありますよね!?)」


スイ「んふふ、驚いた? まだまだね、サキちゃん。気配を読むのもメイドの嗜みよニャ」

スイ「ま、今日の頑張りは見てたわよ。なかなか筋がいいじゃない、アンタ。お客様への笑顔も自然で、とても可愛らしかったわ」

スイ「特に、あの潤んだ瞳で一生懸命抹茶ラテを見つめる姿、思わず守ってあげたくなっちゃったわニャ♡」


サキ「か、可愛!? そ、そんなことないですってば! ちゃんと真面目にお仕事してました!」

サキ「(ってか、見られてたの!? 恥ずかしすぎますぅ! でも、スイ先輩に褒められると、なんだか嬉しいかも……ぽ♡ 今日は本当にツイてるかも!)」


スイ「あら、謙遜しちゃって。素直じゃない子は……嫌いじゃないわよ? むしろ、もっと知りたくなるわね」

スイ「(サキの顎に細い指をそっと添え、くいっと持ち上げる。サキの桜色の猫耳がぴくりと愛らしく反応する)」

スイ「ねぇ、サキちゃん。アンタのその猫耳、ただの飾りじゃないんでしょ? ふわふわしてて、とっても触り心地が良さそうね。……ちょっとだけ、触ってみてもいいかしら?」


サキ「えっ!? あ、はい! この制服の……って、うわっ!? せ、先輩のお顔が……!」

サキ「(スイ先輩のお顔が、すぐそこに! 甘い香水の匂いと……先輩自身の、なんだかドキドキするような香りが、ふわって……!)」


スイ「ふふ……なんだか今日は、いつもより甘い香りがするわね、アンタから。まるで、咲き始めの桜の花みたい」

スイ「ペロリと、その花びらを一枚……食べちゃいたいくらい、魅力的よ♡」


サキ「た、食べ!? せ、先輩、何を仰ってるんですか!?」

サキ「(今日のスイ先輩、なんだかおかしいです! いつもより……距離感が、すごくバグってるみたい……!)」

サキ「(それに、このバックヤード、さっきからなんだか……普段とは違う、むわっとするような甘い花の香りが漂ってません!? 頭がクラクラするような……これって、もしかして……?)」


???「あら、スイ。新人さんをあまりからかってはダメよ。その子の純粋な反応が、今日のこの“特別な香り”を、余計に濃くしてしまうかもしれないわ。ただでさえ、少々厄介な置き土産のようですから」


サキ「あ、リュウカ様!」

サキ「(助かった……のか、な? でも、リュウカ様の言葉もなんだか意味深……!)」


リュウカ「サキさん、お疲れ様。少し、お話があるのだけれど……二階へいらっしゃいな。ミャウリも、今日の占いの結果を、あなたに直接伝えたがっているようですし」

リュウカ「スイ、あなたも。サキさんの案内、お願いできるかしら? くれぐれも、“道草”はしないようにね」

リュウカ「(意味ありげにスイに微笑みかける。その黒曜石のような瞳の奥に、ほんの僅かな憂いの影と、そして面白がるような輝きが差したように見えた)」

リュウカ「今日の“お客様”が残していった“置き土産”は、純粋な魂には少々刺激が強いようですから。気をつけてちょうだい」


スイ「はいはい、仰せのままに、リュウカ様。この可愛い小鳥ちゃんは、わたくしが責任持ってお連れしますわニャン♡」

スイ「(サキに向き直り、蠱惑的な笑みを浮かべる)さ、行くわよ、サキちゃん。リュウカ様の“秘密のお部屋”へね。どんな“おもてなし”が待っているのかしら? それとも、どんな“運命”が……ふふっ♡」


サキ「は、はいっ!」

サキ「(な、なんか、今日の「太夫」、やっぱり空気がおかしいです! 甘ったるくて、クラクラするような……ミャウリ様の占い、もしかして本当に当たっちゃうのかな……? “甘い誘惑”って、これのこと!? “厄介な夜の蝶”って、一体……!?)」


二階へ続く階段 – 薄暗い照明が、壁に掛けられたアンティークな絵画を妖しく照らし出している。漂う濃厚な花の香りが、一階よりもさらに強くなっている。




サキ「先輩、やっぱり今日、お店の中、変な匂いがしますよね? 特にこの二階は……」

サキ「桜の香りとは違う……もっと、こう……むわっと甘くて、頭がぽーっとするような……胸がドキドキするような……」


スイ「あら、気づいた? 鋭いわね、サキちゃん。鼻もいいのね。それとも、体が正直なのかしら?」

スイ「ま、たまにあるのよ、こういう日は。特別な“お客様”……そうね、例えば人の心を惑わすのが得意な、“夜の蝶々”のような妖艶な方々がいらっしゃった後とかね」

スイ「(サキの耳元に顔を寄せ、吐息がかかるほど近くで囁くように)まるで、誰かが特別な“恋のお香”でも焚いたみたいじゃない? それとも……もっとこう、人の理性を蕩かしてしまうような、ねっとりとした“何か”の残り香とか♡ 人ならざるものの……そう、例えば“夢魔”の類いが残していった、甘い罠とかね」


サキ「こ、恋のお香!? ゆ、夢魔……ですか!? ま、まさか! そんな……でも、この香り、確かに普通じゃない気がします……! なんだか、体がふわふわするような……」

サキ「(夢魔……おとぎ話や古い書物で読んだことがあるような……でも、この「太夫」なら、本当にいてもおかしくないのかも……!? だから今日のスイ先輩、あんなに積極的なの!? 私までドキドキしちゃってるのは、この匂いのせいなの!? ミャウリ様が言ってた“甘い誘惑”って、これのこと!? そして、“夜の蝶”はやっぱり関係あるの!?)」


スイ「ふふ、どうかしらね? でも、なんだか体が火照る感じ、しない? 心臓の音も、いつもより少し早いんじゃないかしら? 私には聞こえるわよ、サキちゃんのドキドキが」

スイ「(サキの手に、そっと自分の手を重ねる。スイの手は少しひんやりとしているが、まるで熱を求めるように、サキの熱い手に吸い付くように絡みついてくる)アンタの手、すごく熱いわよ、サキちゃん。まるで熟れた果実みたいに、甘くて美味しそう」


サキ「ひゃあっ! せ、先輩の手も……なんだか、ドキドキします! あ、熱いです!」

サキ「(だ、だめだ、意識しちゃいます! この甘い匂いと、先輩の体温と……指の感触が……頭が、とろけちゃいそうですぅ!)」


スイ「ねぇ、サキちゃん。この香り、嫌い? それとも……もっと、深く味わってみたい? 私の……すぐ側で、ね♡ この香りに身を委ねてみるのも、悪くないんじゃないかしら?」


サキ「え……あ……あのっ!」

サキ「(言葉が出ません! 頭がぼーっとして……スイ先輩の、獲物を狙う猫みたいに妖しく光る瞳に吸い込まれそうです……! 助けて、ミャウリ様~!幸運の猫パンチはどこに~!?)」


**シーン:二階・リュウカの執務室前 – 静まり返った廊下。香りはさらに濃密になり、むせ返るようだ。壁に飾られた花の絵が、まるで生きているかのように揺らめいて見える。**


リュウカ「二人とも、少し遅かったわね。待ちくたびれて、わたくしの可愛いサクラの精霊が、花びらを散らして拗ねてしまうところだったわ」

リュウカ「(扉の前で静かに微笑んでいる。その瞳は先ほどよりも潤んでおり、どこか遠くの景色を見ているような、深い憂いを湛えているように見える。そして、その肌は陶器のように白く、ほんのりと甘い香りを漂わせているような……?)」

リュウカ「あら……二人とも、随分と顔が赤いわよ? この廊下は、特に“香り”が強く満ちているようだけれど、大丈夫かしら。あまり長居はしない方がよろしいかもしれませんわね」


スイ「いえ、別に何も? ただ……可愛いサキちゃんが、この蠱惑的な“香り”に当てられて、少し潤んだ瞳で熱っぽく私を見つめてくるものですから。つい、ね? リュウカ様。この子の無防備さは、罪ですわ」

スイ「(サキの腰を自然な仕草で、しかししっかりと引き寄せ、リュウカに見せつけるというよりは、自分の所有物であるかのように慈しむように微笑む。その仕草は普段よりも遥かに大胆で、独占欲が滲み出ている)」


サキ「せ、先輩! ち、違います、リュウカ様! これは……その、階段が少し暗くて、足元がふらついちゃっただけで……!」

サキ「(どうしよう、誤解されちゃいます! でも、スイ先輩の腕の中、なんだか……ドキドキするけど、すごく安心する……かも? この香り、本当にヤバいですぅ! 私、どうなっちゃうんだろう……!)」


リュウカ「ふふ……そう。仲が良いのは良いことね。絆は、時にどんな媚薬よりも強く、美しさの源泉となるものですもの」

リュウカ「でも、スイ。その子の“初めて”の甘い感情は、もう少し大事に、ゆっくりと育んであげなさいな。急いては事を仕損じますわよ」

リュウカ「今日の“お客様”が残していった“魅惑の香り”は、純粋で無垢な魂には少々強すぎるようですから。わたくしたちのような“慣れた”者でも、少々浮かされてしまうほどですもの。精霊サクラも、この強い香りに少し戸惑っているようだわ」


スイ「善処しますわ、リュウカ様。この子の純粋な花びらは、わたくしが責任を持って、優しく開かせてあげたいですからニャ♡ 誰にも邪魔されずに、ね」

スイ「(名残惜しそうに、しかし熱っぽい視線をサキに送りながら、ゆっくりと腕を解く)」


リュウカ「さて、サキさん。あなたに覚えておいてほしいことがあるの。これは『太夫』で働く上で、とても大切なことよ」

リュウカ「(金の扇子を優雅に取り出し、サキに見せる。それは、部屋の薄暗がりの中でも、自ら光を放つかのように美しい輝きを湛えている)」

リュウカ「これは、選ばれたギルド会員様だけが手にできる『金の扇子』。いわば、『太夫』の特別な会員証であり、お客様が真の美と向き合うための“心の鍵”でもあるの」

リュウカ「お客様が二階の個室へお越しの際は、この扇子とホログラム端末のQRコードで認証を行うの。わたくしたちメイドは、この扇子をお持ちのお客様を、敬意と真心を込めて丁重にお迎えし、ご案内するのよ」

リュウカ「そして……この扇子には、古くからの言い伝えで、持ち主の秘めたる“願い”や、抗いがたい“運命”を映し出し、時にそれを導く力があるとも言われているわ。ただの会員証ではない、特別な意味が込められているのかもしれないわね。ふふ、信じるか信じないかは、あなた次第だけれど」


サキ「こ、これが……ギルド会員様の、金の扇子! きれいです……吸い込まれそうなくらい……」

サキ「(リュウカ様が持っている扇子を見つめる。直接触れてはいないが、その神秘的な輝きから、微かに温かいオーラと、またあの甘い花の香りが、まるで扇子から直接薫ってくるかのように、ふわりと強く感じられる……!)」

サキ「(お客様の証……でも、リュウカ様の言い方だと、もっと何か大きな秘密がありそう……ドキドキする……私の運命も、この扇子に何か関係してくるのかな……?)」



???(女性の声、ねっとりと甘く、しかしどこか冷たい響き。それは、まるで美しい毒蛇が囁くようだ)「あらあら、リュウカちゃん。もう新しい“愛玩人形おもちゃ”でも見つけたのかしら? それとも、今度はどんな純真な“蝶”を、あなたの甘い蜜で誘い込もうというのかしらねぇ? 本当に、悪趣味なお方だこと」


サキ「えっ!? だ、誰ですか!?」

サキ「(声はすぐ近くからするのに、やっぱり誰もいません! さっきより、もっとゾクッとするような、肌を粟立たせるような声……! まさか、ミャウリ様の占いにあった“厄介で美しい夜の蝶”って、この人のこと……!? しかも、“蝶”って言ってる!)」


リュウカ「カスミ。いつものように悪趣味な登場ね。あなたのその歪んだ美学は、いつ見ても不愉快だわ。姿を現しなさいな。サキさんが怖がっているではありませんか。彼女は、あなたが弄んでいいような“おもちゃ”ではないわ」


カスミ「(空間がまるで陽炎のように歪み、音もなくその中心から姿を現す。その様は、まるで悪夢が現実になったかのようだ)ごめんなさーい、リュウカちゃん。でも、この濃厚な“媚薬の残り香”が、あまりにも心地よくて……つい、長居してしまったわ。まるで、熟れた果実が発する、抗いがたい芳香のようね」

カスミ「(薄絹のローブを妖艶に纏った、蠱惑的な美貌の女性。その蛇のように細められた瞳は、サキの魂の奥底まで見透かすかのように、ねっとりと見つめている)」

カスミ「ふふ、可愛い新人さん。あなたからも、とっても美味しそうな……純粋で甘美な匂いがするわねぇ。今にも蜜が滴りそうな、熟れる前の果実のよう。ああ、なんて愛らしいのかしら」

カスミ「ねぇ、リュウカちゃん。この子……ほんの少しだけ、“お味見”してもよろしくて? ほんの先っぽだけでいいのよぉ♡ あなたの大切な小鳥ちゃんを、わたくしがもっと素敵な“夜の蝶”にしてさしあげてもよろしくってよ?」


サキ「ひぃぃぃっ!? や、ヤバい人です! 絶対にヤバい人ですぅ!!」

サキ「(な、なんなのこの人!? スイ先輩とはまた違う、もっとこう……底知れない、本能的な恐怖を感じるんですけど!? “味見”って、本気で言ってます!? ミャウリ様、助けてー! この人が“毒の鱗粉”を持ってるの!? 幸運の猫パンチ、今こそ発動してほしいですぅ!)」


スイ「カスミ。アンタ、その子に指一本でも触れてみろ。ただじゃおかないわよ、本気でね。この子の純粋さを汚すことは、この私が許さない」

スイ「(サキの前に素早く立ち、守るように両手を広げる。黒い猫耳が警戒でぴんと逆立ち、尻尾が威嚇するようにバシン! と床を打つ。その瞳は、怒りと守護の意志で、燃えるように輝いている。まさに、ミャウリの占いにあった“鋭い爪をシャキーン!と出す黒猫さん”だ!)」


リュウカ「二人とも、そこまでよ。この神聖な『太夫』の廊下で、見苦しい真似はおやめなさい」

リュウカ「(その声には、普段の優雅さとは異なる、絶対的な威厳が込められている)どうやら今日は、“お客様”の残した“香り”だけでなく、私たち自身も少々浮かれ、本性が露わになってしまったようね。困ったものだわ」

リュウカ「(金の扇子をそっと開き、優雅に、しかし力強く扇ぐ。すると、甘ったるい香りがふっと浄化されるように和らぎ、清涼で神聖な桜の香りが辺り一面に満ちていく。精霊サクラの清らかな力が、悪しき気配を祓っているかのようだ)」

リュウカ「サキさん。ようこそ、『太夫』の本当の世界へ。ここは……あなたの内に秘めた“フェチ”を、そして抗いがたい“運命”を、最も美しく開花させる場所。時には試練もあるけれど、それを乗り越えた先には、きっと素晴らしい景色が待っているわ」

リュウカ「さあ、あなたはどの扉を開きましょうか? それとも……誰かの心の“扉”を、その純粋な手で、優しく開けてみる?」


サキ「(ごくり……唾を飲む音さえ大きく聞こえる。まだ心臓はバクバクしているけれど、リュウカ様の言葉と桜の香りに、少しだけ落ち着きを取り戻した)」

サキ「(私、とんでもないところにバイトに来ちゃったかもしれないです! でも……でも……なんだか、すごく……ドキドキが止まらないっ!! この先にあるものが、怖いけど、見てみたい……! 私も、ここで何かを見つけられるかもしれない!)」


ミャウ「(リュウカの足元に、いつの間にか音もなく現れる。美しい白い毛並みの猫。その青い瞳はどこかしたり顔で、満足そうに尻尾を振っている)ミャ~オ。なんだか今日は、いつもよりオイシそうな匂いがいっぱいだったし、吾輩の占いの腕も、ますます冴え渡っていたようだニャ~♡ カスミのあの嫌な匂いはやっぱりちょっと苦手だけどニャ。ま、黒猫さんが頑張ったし、新人ちゃんも吾輩のバフのおかげで無事だったから、良しとしようニャン!」

ミャウ「さて、リュウカ様、約束の最高級マグロのトロづくし丼はまだかニャ~? あと、今日のわらわの獅子奮迅の働きっぷり(特に的確な占いと新人ちゃんへのバフ付与、そして何よりこの可愛さ!)を考慮して、デザートに特製猫用濃厚抹茶プリンアラモードも所望するニャ! これで明日の占いもバッチリだニャン! 期待してていいニャよ♡」


全員「「「…………」」」


サキ「(う、うん、やっぱり、このお店、普通じゃないです! でも、ミャウリ様の占いは本当に当たってたし、スイ先輩はかっこよく守ってくれたし……なんだかんだで、カオスだけど、すごく面白いかも! 私、ここで頑張ってみたいです!)」


よろしくお願いします。こちらも3日坊主にならないようにします。

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