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リリィ・オブ・スティール  作者: 悦田半次


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逮捕します

「無駄な抵抗はしない方が賢明です。余罪が増えますので」

「……ちょっと。ちょっと待ってよ。確かに私達は魔族のボディを奪った。でもそれは不法侵入と窃盗くらいなものでしょ? 国家反逆なんていくらなんでも滅茶苦茶じゃない!」


 それでしょっぴかれるのはまだいい。

 だがありもしない罪を押し付けられ罰を受けるのは納得がいかなかった。


「魔族を操るなんて荒唐無稽だと自分は思います。ですが、そうとしか言えない状況なのも確かなのです」

「どういうこと?」

「スレン先生があなたに渡した発信器ですが……その反応がジャンク・ザ・リリィから検出されました」


 その言葉を聞いた瞬間、明らかにジャンクは「ヤバっ」と言ったような表情を作った。


「ジャンク……?」

「……どうやら心当たりがあるようですね」


 ディリットはすっと目を細めた。まずい。この状況は非常にまずい。

 このままだとジャンクとアイリは騎士団に捕縛される。

 しかも完全な冤罪、とはジャンクの反応からしてないらしい。


「そうだ。スレン先生に話を……!」

「捕縛はスレン先生の命令です」

「なっ……!?」


 スレンの命令?

 本来の魔道具の持ち主であるならば発信器の場所を特定することも容易い筈だ。決しておかしい話ではない。

 だが……


「やれやれ。どうやらまんまとはめられたらしい……アイリ」


 そう言ってジャンクは踵を返し、


「逃げるよ!」


 アイリの手を引いて脱兎の如く駆けだした。





「いやー参った参った。まさか騎士団まで動かしてくるなんてね。隠す気ゼロじゃん……ああいや、隠さなくても問題無いのかこの場合」


 裏路地に逃げ込んだジャンクは何やら呟いていたが、アイリの頭はパンクしかけていた。

 纏鎧ができずに落ち込んでいたと思ったら今度はジャンクに国家反逆の容疑がかけられ、それがスレンの命令で、しかもジャンクから発信器の反応が確認された……

 次々とひっくり返る事態に、付いていけない。


「何が、一体どうなってるの? それに魔族に付けた発信器があんたから反応があるってどういうこと?」

「あー……なんて言うか、殺人現場の近くで血塗れの包丁持ったヤツがウロウロしてるけど、自分が犯人じゃないって言い張ってる感じかな? とは言え、こうなっちゃ隠せないか」


 ジャンクがキューブを取り出し操作をすると、キューブから魔方陣が出現し、その中から蜘蛛型の魔族が出現した。

 間違いない。

 二度にわたってアイリの前に現れたあの魔族だ。

 一瞬身体が強ばるが、魔族からは敵意を感じられない。


「まったく君も迂闊だよ。発信器つけられてるのに気付かないってのはちょいと鈍感すぎるぜ……え? 僕もお互い様だって? おいおいそりゃ責任転嫁ってヤツだろう」


 まるで気の置けない友人を相手にするかのような口ぶりで話しながら、ジャンクは魔族の身体を確認している。


「あ、これだね。まんまとしてやられちゃったか」


 ジャンクは発信器を引き抜き、再び魔族をキューブの中へと格納する。

 そしてアイリの方へと向き直った。


「さて、どこから説明したもんかな……まあアレだね。詳しくは言えないんだけどさ、キューブはこんな使い方もできるって言うか、これが本当の使い方なんだよね」

「魔族を召喚して操る……ってこと?」

「まあ、そうだね。そう言う認識で構わないよ」


 ジャンクの様子はいつもと違って見えた。

 どこかビクついているような……怒られるのを恐れる子どもみたいだ。

 分からない。アイリはどのような声をかければいい?

 しかし時間は悠長に待ってはくれなかった。


「もう逃げられませんよジャンク・ザ・リリィ。ついでにアイリーン先輩もね」


 ――私はついでか。まあディリットからすれば、今のアイリはジャンクの腰巾着程度にしか見えないのだろう。そしてそれは間違ってはいない。

 だがまだ逃げ道は――


「――ありませんよ。既に騎士団はあなた方を捉えるべく街中に散らばっています。ここに集まるのも時間の問題です」


 チェックメイト、とでも言うつもりか。多分裏路地から抜けてもすぐに捕まるのがオチだろう。その表現はあながち間違いないのかもしれない。

「仕方ないか……」

 アイリは手を挙げた。所謂ホールドアップの姿勢である。


「……まあ、そうだよね。君がこれ以上関わり続けるのは危険だし」 


 納得していると言わんばかりだが、少し落胆しているような声音だった。普段からそれくらいなら分かりやすいのにと思いながら、ディリットの方へ近づいていく。


「賢明な判断です。もう少し早く決断をして欲しいものですが」


 ディリットの言葉には反応せずに、彼女の正面に立つ。

 やるべきことはたった一つだ。

 ホールドアップしていた手を握り締め――アイリはディリットの顔面を思いっ切りぶん殴った。


「ぐぅっ!?」

「アイリ!?」


 騎士団の面々とジャンクが揃って目を剥く。

 ジャンクがあそこまで驚くとは、やった甲斐があるというものだ。


「何のつもりですか……アイリーン先輩!」

「敵がご丁寧に説明してくれると思ってんの?」


 今度は肩を狙った回し蹴りだ。クリーンヒット。

 丁度良い。今までの恨みも込めて徹底的にやってやる。


「発作持ちの分際で――!」


 突き出された拳を、アイリは手で受け止めた。


「なっ――」


 そのまま背負いこむようにして投げ、地面に叩き付けた。

 とどめに手刀で鳩尾を突き意識を刈り取る。

 顔を上げ、周囲を見渡す。


「次」


 地面を蹴って、騎士団目掛けてつっこんだ。


「お、おいなんだよこいつ!? 気でも狂ったのか!」

「いいから早く取り押さえろ!」

「無理です! 抑えられまぶおっ!」


 路地裏は一気に混乱の坩堝と化した。

 アイリは定位置に立たず、こまめに動いて拘束されるのを防ぐ。

 特に腕を掴まれるのが危険だが、生憎アイリの腕は一本少ないので、その分拘束のリスクも低い。

 騎士団の連中に恨みはない。


 中にはそこそこ仲のいい奴もいたが、今回は区別せずに諸共にぶん殴った。

 彼らお得意の魔導鎧装だって、アイリが纏鎧してない以上使うことは不可能だ。

 もし纏鎧されたら勝ち目は無かったろうが、生身の状態なら話は別。

 ジャンクは棒然との側に突っ立っている。まったく何をやっているのか。

 私が何のためにこんなバカやってるのか察しろバカ。

 ジロリと睨むと、ジャンクはびくりと身体を震わせた。

 僅かに迷うような素振りを見せていたが、やがアイリに向かって力強く頷くと、踵を返して逃げ出した。


「逃がすな!」


 駆けだした騎士団員の足を払い転倒させる。

 しかし結局多勢に無勢。ジャンクが逃げ出してから一分くらいで、アイリは拘束された。


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